4 / 13
一章、人喰い狼
四、調査
しおりを挟む
「すみませーーーん!!」
がらがらと引き戸が左にずれていく、そして中年らしき男性が気だるそうに応答する。
『何の用だ』
「この村で狼が出ましたよね?」
『あぁあぁ、つけさんの旦那と、とくさんの娘さんがやられたって話な』
「え、二人ですか?」
『おう、気の毒にな』
「とくさんの娘さんはいつ頃やられたんですか?」
『一緒だよ、つけさんとこと』
「えっとじゃあ、その娘さんの死体は……」
『無かったよ』
「……無かった?」
『あぁそうさ、布団に血だけ大量に残して消えたのさ。ありゃあ狼が子供に持ってったんじゃねぇかな』
「そうですか……」
『奥さんかなり辛そうだったな……』
「ん?とくさんにご家族は?」
『ちょうど出稼ぎ行っててさ、あのでけぇ家に一人で暮らしてたぜ』
帰って来たらきっと悲しむだろうな……
「あなたは恐くないのですか?」
『そりゃおめぇ!こんなむさ苦しい男喰いてぇか!?』
がはははと大声で笑っているが、爺さんやられてんだぞ……
『でもな、ここらみんな貧しくて、ここ以外住めねぇんだわ。狼に喰われた方が幸せなのかもしんねぇな……』
「そんなに貧しいのですか?」
『あぁ、でもわしは、つけさんとこの大根が楽しみで生きてたようなもんだ。』
「へぇ!美味しいんですね!」
『あぁ!絶品さ!おめぇも一度は食ってみるといいさ』
「狼を退治できれば貰うことになってはいますよ?」
『かぁぁ!いいねぇ!わしなんて年に一度食えたらいいほうだべ!』
「簡単には貰えないんですか?」
『いいや、そうじゃなくてなぁ……』
どうやら、作物と交換するらしいのだが、いつ漬け物が出来上がるのかが分からないため、収穫時期とずれていると、もう他の農家と交換してしまっているらしい。そんな稀なご馳走をいただけるのは、かなり楽しみだ。
話は逸れてしまったが、もう一人の犠牲者について知ることができたし、これ以上、狼についての情報は無さそうだったので、中年男の家を後にした。
それ以降、刃物女に言われた通り、左にずらっと並んだ家に、一軒ずつ狼について聞き回ったが、結局目新しい情報はなかった。
最後の一軒も特に情報は無く、その家から立ち去ると、目の前に彼女がいた。
『どうだ』
「どうやらとくさんのむす
『聞いた』
「その死体は消えてい
『聞いた』
「つけさんの漬け物はかなりおいし
『聞いた』
「……以上です」
『そうか、ご苦労』
……あんたのせいだ。
「山に向かいますか?」
『いや、とくさんの家に泊まる』
「え、あ、はい」
『いや、私だけだ』
「え?」
『おま……嘔吐物は隣の家を見張っていろ』
お前でいいじゃん……
「はい、わかりました」
逆らうことはできないので、そうすることにしよう。
「あ、血」
『どうした』
「どこかに水があったのですか?」
『ん?どうしてだ』
「いや、死体触ったときに血付いちゃって、あなたの手には無いのでどこかで洗ったのかなと」
『あぁ、どこだっけな、家の人に水を借りたぞ』
「どこのですか?」
『覚えてない。また一軒ずつ訪ねてみるといい』
「……はい」
面倒なので、それはしなかった。
そして、狼を見たらすぐに呼べと言い残し、彼女はその家に入っていった。
もう辺りは真っ暗だ……もうおれも寝てよくないか?
そう思ったときだった
向こう側からゆっくりと近づいてくる何かに気がついた。
がらがらと引き戸が左にずれていく、そして中年らしき男性が気だるそうに応答する。
『何の用だ』
「この村で狼が出ましたよね?」
『あぁあぁ、つけさんの旦那と、とくさんの娘さんがやられたって話な』
「え、二人ですか?」
『おう、気の毒にな』
「とくさんの娘さんはいつ頃やられたんですか?」
『一緒だよ、つけさんとこと』
「えっとじゃあ、その娘さんの死体は……」
『無かったよ』
「……無かった?」
『あぁそうさ、布団に血だけ大量に残して消えたのさ。ありゃあ狼が子供に持ってったんじゃねぇかな』
「そうですか……」
『奥さんかなり辛そうだったな……』
「ん?とくさんにご家族は?」
『ちょうど出稼ぎ行っててさ、あのでけぇ家に一人で暮らしてたぜ』
帰って来たらきっと悲しむだろうな……
「あなたは恐くないのですか?」
『そりゃおめぇ!こんなむさ苦しい男喰いてぇか!?』
がはははと大声で笑っているが、爺さんやられてんだぞ……
『でもな、ここらみんな貧しくて、ここ以外住めねぇんだわ。狼に喰われた方が幸せなのかもしんねぇな……』
「そんなに貧しいのですか?」
『あぁ、でもわしは、つけさんとこの大根が楽しみで生きてたようなもんだ。』
「へぇ!美味しいんですね!」
『あぁ!絶品さ!おめぇも一度は食ってみるといいさ』
「狼を退治できれば貰うことになってはいますよ?」
『かぁぁ!いいねぇ!わしなんて年に一度食えたらいいほうだべ!』
「簡単には貰えないんですか?」
『いいや、そうじゃなくてなぁ……』
どうやら、作物と交換するらしいのだが、いつ漬け物が出来上がるのかが分からないため、収穫時期とずれていると、もう他の農家と交換してしまっているらしい。そんな稀なご馳走をいただけるのは、かなり楽しみだ。
話は逸れてしまったが、もう一人の犠牲者について知ることができたし、これ以上、狼についての情報は無さそうだったので、中年男の家を後にした。
それ以降、刃物女に言われた通り、左にずらっと並んだ家に、一軒ずつ狼について聞き回ったが、結局目新しい情報はなかった。
最後の一軒も特に情報は無く、その家から立ち去ると、目の前に彼女がいた。
『どうだ』
「どうやらとくさんのむす
『聞いた』
「その死体は消えてい
『聞いた』
「つけさんの漬け物はかなりおいし
『聞いた』
「……以上です」
『そうか、ご苦労』
……あんたのせいだ。
「山に向かいますか?」
『いや、とくさんの家に泊まる』
「え、あ、はい」
『いや、私だけだ』
「え?」
『おま……嘔吐物は隣の家を見張っていろ』
お前でいいじゃん……
「はい、わかりました」
逆らうことはできないので、そうすることにしよう。
「あ、血」
『どうした』
「どこかに水があったのですか?」
『ん?どうしてだ』
「いや、死体触ったときに血付いちゃって、あなたの手には無いのでどこかで洗ったのかなと」
『あぁ、どこだっけな、家の人に水を借りたぞ』
「どこのですか?」
『覚えてない。また一軒ずつ訪ねてみるといい』
「……はい」
面倒なので、それはしなかった。
そして、狼を見たらすぐに呼べと言い残し、彼女はその家に入っていった。
もう辺りは真っ暗だ……もうおれも寝てよくないか?
そう思ったときだった
向こう側からゆっくりと近づいてくる何かに気がついた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる