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一章、人喰い狼
五、追跡
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突然現れた何かの姿は、半分は熊、半分は人間のような体である。これは……仕方がない。
腰に携えた刀に手を添える。後のことはどうでもいい。とりあえずあいつを殺さねば。
『まだ見つからないのか』
がらがらっと引き戸を引く音と共に彼女が家から出てきた。
「え?」
『ん?』
「あっ……」
その異形は山の方へと走って逃げていく。
『やっぱり出てきたか……追うぞ』
「え、や、でも……」
『なんだ、恐いのか?』
「い、いえ、あの、危なくないですか?」
『気にするな、お前が対峙するより安全だ』
「え、ええぇ……」
『ほら、走るぞ』
「は、はい!」
すたすたと、田を抜けて、いよいよ森の深いところまで来てしまった。
二人とも息が切れ、膝に手をついた。
『はぁっ、はぁっ、完全に見失ったな……』
「そ、そうですね……」
『引き返そう、また村に向かわれては困る』
「りょ、了解です」
『そういえば、私達には隠す必要はないぞ』
「な、なにをですか?」
答えは分かっていた。でも、否定しなければならないんだ。
『お前、鬼の子だろ?』
この言葉は、心に響く。受け入れてくれるならすがりたい。でも、それは出来ない。何ですかそれ、と言うしかない。二年前の大処刑から、おれは存在してはいけないのだから。
森の出口まで二人で歩く。彼女の表情は恐らく淡々としているのだろう。気になっても見ることはできない。こちらが表情を窺っていることを悟られてはならないのだ。
ある程度、先程の田んぼが見えてきた。これからどうするのかなぁ。狼はこの山にいることは分かったが、もう真夜中なので、視界も悪く、一睡もしていないおれはかなり疲れている。
その時だった。
「ねぇおにいちゃん!」
「え、ええっ!?」
『どうしたんだ?』
「い、いや、男の子が……あれ?きみ……」
「そう!おぼえててくれた?こわいのさがしてるんでしょ?こっちだよ!!」
「あ、ちょっ、まっ、待って!」
『お、おい!』
腰に携えた刀に手を添える。後のことはどうでもいい。とりあえずあいつを殺さねば。
『まだ見つからないのか』
がらがらっと引き戸を引く音と共に彼女が家から出てきた。
「え?」
『ん?』
「あっ……」
その異形は山の方へと走って逃げていく。
『やっぱり出てきたか……追うぞ』
「え、や、でも……」
『なんだ、恐いのか?』
「い、いえ、あの、危なくないですか?」
『気にするな、お前が対峙するより安全だ』
「え、ええぇ……」
『ほら、走るぞ』
「は、はい!」
すたすたと、田を抜けて、いよいよ森の深いところまで来てしまった。
二人とも息が切れ、膝に手をついた。
『はぁっ、はぁっ、完全に見失ったな……』
「そ、そうですね……」
『引き返そう、また村に向かわれては困る』
「りょ、了解です」
『そういえば、私達には隠す必要はないぞ』
「な、なにをですか?」
答えは分かっていた。でも、否定しなければならないんだ。
『お前、鬼の子だろ?』
この言葉は、心に響く。受け入れてくれるならすがりたい。でも、それは出来ない。何ですかそれ、と言うしかない。二年前の大処刑から、おれは存在してはいけないのだから。
森の出口まで二人で歩く。彼女の表情は恐らく淡々としているのだろう。気になっても見ることはできない。こちらが表情を窺っていることを悟られてはならないのだ。
ある程度、先程の田んぼが見えてきた。これからどうするのかなぁ。狼はこの山にいることは分かったが、もう真夜中なので、視界も悪く、一睡もしていないおれはかなり疲れている。
その時だった。
「ねぇおにいちゃん!」
「え、ええっ!?」
『どうしたんだ?』
「い、いや、男の子が……あれ?きみ……」
「そう!おぼえててくれた?こわいのさがしてるんでしょ?こっちだよ!!」
「あ、ちょっ、まっ、待って!」
『お、おい!』
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