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第一章
op.7『神様がくれた目』
しおりを挟む光の目は、先に左目が全部見えなくなった。片方ではあるが、右目は四歳までは見えていた。
右目しか見えない状態の光のために、和沙はもちろん同じ四歳の委員長も達哉も、教えられることなく光の右側に立つようになった。
光の目がもうすぐ完全に見えなくなる、という話を共有する時間は、幼稚舎ではなく、教会で行われた。
ミサの終わりに、みんなに向かってそういう話がなされたとき、一番泣いたのは達哉だった。
当の光本人は、今のうちに楽しいこと全部しておくよと笑っていた。
光が泣いたのは、二度だけだ。
もうすぐ全部見えなくなるよという話があったときに、
「このまま少しずつ見えなくなって、和沙が笑うところも達哉が手をのばしてくれるのも康之くん(委員長)が心配して怒る顔も……あれが見れなくなるのは、嫌だなぁ……」
そう言って、静かに涙を落としたのが一度目。
二度目は完全に見えなくなった日。
それまで、周囲が心配するほど飄々としていた光は、完全に見えなくなった途端、号泣した。それでもその理由は自分のことではなかった。
「元々壊れた目で、それで捨てられたのに、もう和沙だって自分を要らなくなったのではないか」
そう言って泣く光に、ただただ周囲は「大丈夫だよ」と繰り返したが、一体全体なにが大丈夫なのか、言いながら誰にも分かっていなかった。
これから先、光が心配する通り、光が和沙の負担になるのは間違いなかったからだ。
光は昔から、自分がいろいろなものを見れなくなる、そういったことを嘆いたことは一度もなかった。
その点では光は、怖いほど物分かりのいい子だった。
物分かりのいいその様子は、子どもながらに達哉たちにも不憫でならなかった。
『神様がくれた目』そう受け入れて、すべてを諦めている光の代わりに、神様に文句を言うのはいつも達哉の役目だった。
事件が起きたのは、十六歳の初夏だった。
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