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紫薔薇騎士 ランドルフ
ランドルフからの依頼
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「実は、お前……ん、ヴェンデルガルト王女に頼みがある」
ランドルフはちらりとカールに視線を向けてから、ヴェンデルガルトに向き直った。声音は、揶揄うものから真面目なものに変わった。それで安心した様に、カールの後ろに隠れていたヴェンデルガルトは前に歩み出た。
「どのような事でしょう? 私の力が役に立つなら、是非お手伝いさせて頂きます」
ランドルフの様子に気が付いたのだろう、ヴェンデルガルトは真剣な面持ちになる。
「まあ、みんな座ろうよ」
カールが気を利かせて、先程まで座っていた椅子を勧めた。四人分ある椅子に、それぞれ腰を落とした。
「ギルベルトは知ってるか?」
「お会いしたことはありませんが、白薔薇騎士団の団長ですね? 確か、目が御不自由な」
ランドルフは頷く。
「話が早くて助かる。あいつは子どもの頃、目が見えなくなった。高熱のせいらしい……どの医者に見せても、治らないと言われた」
何故か、ランドルフは悔しそうな、悲しそうな表情になる。隣に座るカールは、黙ったままだ。
「ヴェンデルガルト王女、治すことは出来るか?」
「――ええと、……そうですね、一度治癒魔法をかけてみないと私も『治ります』と簡単に言えません。ギルベルト様にお会いできるでしょうか?」
ヴェンデルガルトは少し悩んでから、ランドルフにそう返した。
「何故だ? 治癒魔法は、万能じゃないのか?」
カールもランドルフも、魔法を使う人物は初めてだ。魔法と言うものを、漠然としか理解出来ていない。
「私の使う治癒魔法は、『女神アレクシア』様のお力です。女神様が治しても良いと判断した相手でないと、魔法は発動しません」
女神アレクシアは、豊穣と処女と癒しの女神だ。治癒魔法を使うものは、皆アレクシアを信仰している。
「――魔法ってのも、意外と気難しいもんだな」
拗ねた子供の様なランドルフの言葉に、ヴェンデルガルトは小さく笑った。
「でも、私が治療した人は今まで全て回復しました。多分ギルベルト様も治ると思いますが、万が一を考えて『絶対』とは口に出来ないのです」
「確かに治らなかったら――ショックだよね」
ヴェンデルガルトの言葉の意味を理解して、カールは頷いた。
「でもランドルフ。ギルベルトが承知するのかい?」
「俺が絶対にうんと言わせる。絶対に、あいつの目を治す」
二人の会話の意味が、ヴェンデルガルトにはよく分からなかった。ギルベルトは、目を治したくないのだろうか?
「ギルベルト様は、魔法を拒否されるのでしょうか? それに……ランドルフ様は、どうしてそんなに必死なのでしょう?」
ヴェンデルガルトはランドルフの事を良く知らないが、こんなにもギルベルトの目を心配する理由が分からなかった。カールとは従兄弟だが、ギルベルトは宰相の息子だ。
「ヴェンデルガルト様、ギルベルトは――」
「カール、黙れ」
何かを説明しようとしたカールの声を、少し苛ついたようなランドルフの声が遮った。そうして立ち上がると、ヴェンデルガルトを見下ろして続けた。
「明日、朝食の後に迎えに行く。ギルベルトには、その時に説明するから用意をしておけ」
ランドルフはヴェンデルガルトの返事も聞かずに、そのまま城の中に向かって歩いて行った。
「ごめんね、ヴェンデルガルト様。ランドルフは悪い奴じゃないんだ、ギルベルトの目を純粋に治して欲しいだけなんだ――不器用な奴でごめん」
「いいえ、カール様。大丈夫です、私もそう思います。明日、ギルベルト様に会ってみます」
ヴェンデルガルトは申し訳なさそうなカールに笑いかけて、彼女も立ち上がった。
「そろそろ、陽が傾いてきましたね。お城に戻りませんか? ビルギットが心配で……」
「そうですね、夕食もありますし戻りましょう」
ヴェンデルガルトの手を引いて、カールは城へと向かった。
「綺麗なお方だなぁ……」
「ああ、カール様には頑張って姫の心を手に入れて貰いたいな」
覗き見をしていた二人はその姿を静かに見送ったが、持ち場を離れていた事を思い出して慌ててその背を追いかける様に城の中に入って行った。
「もし心配なら、明日俺も付き添います」
「有難う、カール様」
ヴェンデルガルトは、嬉しそうに笑顔を見せた。それに癒される様に、カールも笑顔を浮かべた。花輪を頭に乗せたまま部屋に帰って来たカールを見たカリーナが「よくお似合いです」と笑いを耐えながら言い、二人をゲスト用の部屋に案内して夕食を運んだ。ビルギットも慣れたように、ヴェンデルガルトの食事を運んだ。
ランドルフと行動する事に不安を抱きながらも、ヴェンデルガルトは早めに寝る事にした。二百年と少し寝ていて、起きると色々な事があった。その疲れのせいもあったのか、ヴェンデルガルトはすぐに眠りについた。
ランドルフはちらりとカールに視線を向けてから、ヴェンデルガルトに向き直った。声音は、揶揄うものから真面目なものに変わった。それで安心した様に、カールの後ろに隠れていたヴェンデルガルトは前に歩み出た。
「どのような事でしょう? 私の力が役に立つなら、是非お手伝いさせて頂きます」
ランドルフの様子に気が付いたのだろう、ヴェンデルガルトは真剣な面持ちになる。
「まあ、みんな座ろうよ」
カールが気を利かせて、先程まで座っていた椅子を勧めた。四人分ある椅子に、それぞれ腰を落とした。
「ギルベルトは知ってるか?」
「お会いしたことはありませんが、白薔薇騎士団の団長ですね? 確か、目が御不自由な」
ランドルフは頷く。
「話が早くて助かる。あいつは子どもの頃、目が見えなくなった。高熱のせいらしい……どの医者に見せても、治らないと言われた」
何故か、ランドルフは悔しそうな、悲しそうな表情になる。隣に座るカールは、黙ったままだ。
「ヴェンデルガルト王女、治すことは出来るか?」
「――ええと、……そうですね、一度治癒魔法をかけてみないと私も『治ります』と簡単に言えません。ギルベルト様にお会いできるでしょうか?」
ヴェンデルガルトは少し悩んでから、ランドルフにそう返した。
「何故だ? 治癒魔法は、万能じゃないのか?」
カールもランドルフも、魔法を使う人物は初めてだ。魔法と言うものを、漠然としか理解出来ていない。
「私の使う治癒魔法は、『女神アレクシア』様のお力です。女神様が治しても良いと判断した相手でないと、魔法は発動しません」
女神アレクシアは、豊穣と処女と癒しの女神だ。治癒魔法を使うものは、皆アレクシアを信仰している。
「――魔法ってのも、意外と気難しいもんだな」
拗ねた子供の様なランドルフの言葉に、ヴェンデルガルトは小さく笑った。
「でも、私が治療した人は今まで全て回復しました。多分ギルベルト様も治ると思いますが、万が一を考えて『絶対』とは口に出来ないのです」
「確かに治らなかったら――ショックだよね」
ヴェンデルガルトの言葉の意味を理解して、カールは頷いた。
「でもランドルフ。ギルベルトが承知するのかい?」
「俺が絶対にうんと言わせる。絶対に、あいつの目を治す」
二人の会話の意味が、ヴェンデルガルトにはよく分からなかった。ギルベルトは、目を治したくないのだろうか?
「ギルベルト様は、魔法を拒否されるのでしょうか? それに……ランドルフ様は、どうしてそんなに必死なのでしょう?」
ヴェンデルガルトはランドルフの事を良く知らないが、こんなにもギルベルトの目を心配する理由が分からなかった。カールとは従兄弟だが、ギルベルトは宰相の息子だ。
「ヴェンデルガルト様、ギルベルトは――」
「カール、黙れ」
何かを説明しようとしたカールの声を、少し苛ついたようなランドルフの声が遮った。そうして立ち上がると、ヴェンデルガルトを見下ろして続けた。
「明日、朝食の後に迎えに行く。ギルベルトには、その時に説明するから用意をしておけ」
ランドルフはヴェンデルガルトの返事も聞かずに、そのまま城の中に向かって歩いて行った。
「ごめんね、ヴェンデルガルト様。ランドルフは悪い奴じゃないんだ、ギルベルトの目を純粋に治して欲しいだけなんだ――不器用な奴でごめん」
「いいえ、カール様。大丈夫です、私もそう思います。明日、ギルベルト様に会ってみます」
ヴェンデルガルトは申し訳なさそうなカールに笑いかけて、彼女も立ち上がった。
「そろそろ、陽が傾いてきましたね。お城に戻りませんか? ビルギットが心配で……」
「そうですね、夕食もありますし戻りましょう」
ヴェンデルガルトの手を引いて、カールは城へと向かった。
「綺麗なお方だなぁ……」
「ああ、カール様には頑張って姫の心を手に入れて貰いたいな」
覗き見をしていた二人はその姿を静かに見送ったが、持ち場を離れていた事を思い出して慌ててその背を追いかける様に城の中に入って行った。
「もし心配なら、明日俺も付き添います」
「有難う、カール様」
ヴェンデルガルトは、嬉しそうに笑顔を見せた。それに癒される様に、カールも笑顔を浮かべた。花輪を頭に乗せたまま部屋に帰って来たカールを見たカリーナが「よくお似合いです」と笑いを耐えながら言い、二人をゲスト用の部屋に案内して夕食を運んだ。ビルギットも慣れたように、ヴェンデルガルトの食事を運んだ。
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