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南の国の戦
お互いの頼み
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爆発音が聞こえて、ヴェンデルガルトとベルトは大きく体を震わせた。途端、宮殿の中の人達が慌ただしく走り回っていた。
「門が破壊されるぞ!」
「ヴェンデルガルト様、部屋から出ないでください!」
門から宮殿は、少し離れている。門が破壊されても、その門を取り囲む兵があるので、同時に入って来られる人数は限りがある。門前で中の兵士が待ち構えていれば、立ち向かえるはずだ。
ベルトは、持って来た籠の中から短刀を取り出した。鞘から出していないが、それを手にドアの前で緊張したように構える。
「本当に宮殿まで敵兵が来るような事があれば、必ずアロイス王子が助けに来てくれる筈です。それまでは、私がお守り致します!」
そう声を高くして言うベルトだったが、声は震えていて緊張した顔をしている。剣術を教えて貰った事はない筈だ。
「危ないわ、ベルト。こっちへいらっしゃい!」
ヴェンデルガルトがそう声をかけると、ベルトは泣きそうな顔になりヴェンデルガルトに抱き着いた。
「私は、あなたを護るわ。無理をしないで、お願いよ」
二人は抱き合って暫く様子を見ていたが、一時間ほどで静かになった。
そこにドアがノックされたので、二人は抱き合って震えた。
「ヴェンデル、大丈夫だ。兵は何人かやられたが、向こうの方が被害が大きい――多分、様子見で攻めてきたんだろう」
ドアが開いて顔を見せたのは、アロイスだった。二人は安堵して強張った身体から力を抜いた。
「なんだ? お前たち、仲良くなったんだな」
アロイスは小さく笑うと、二人の頭をポンと撫でる。それでベルトは慌ててヴェンデルガルトから離れると、頭を下げて部屋を出て行こうとする。
「ベルト、待って!」
ヴェンデルガルトが声をかけると、ドアを開けようとしたベルトの手が止まった。
「ベルトというのか。もしかして、気を遣っているつもりか? ヴェンデルはお前を気に入ってるようだ、不安にならないように俺が来ても気にせず傍にいてやってくれ」
アロイスは歩み寄り、小さなベルトの身体を抱えた。
「きゃあ!」
思わず声を上げてしまったベルトだったが、急いでその口を自分の手で塞いだ。アロイスは気にした風ではなく、そのベルトの身体をヴェンデルガルトの横に座らせた。
「……毛糸?」
その時、籠の中の様々な色の毛糸を見つけたアロイスが不思議そうに呟いた。
「あの……ヴェンデルガルト様に、アヤーをお教えさせて頂きました」
ベルトが申し訳なさそうに、アロイスにそう報告した。
「そうか。アヤーは、伝統文化だ。沢山教えてやってくれ」
アロイスの言葉に、ベルトはホッとした顔になった。それから、不安そうにヴェンデルガルトに視線を向ける。
「あの、アロイス様。お願いがあります」
「お願い? ヴェンデルがそんな事を言い出すのは、意外だな。何だ?」
「この子――ベルトを、私の傍でいさせてもよろしいですか? こんな小さい子が、鞭で打たれるのは、可哀想すぎます」
ベルトは、ヴェンデルガルトの服の裾を握って、下を向いている。アロイスの返答が、怖いのだ。ヴェンデルガルトのお世話から外されれば、またハーレムの怖い女たちに使えなければならない。
「なんだ、そんな事か。構わないが、ベルト……だな? お前は、ヴェンデルを好きか?」
「私は、ヴェンデルガルト様が大好きです!」
アロイスの問いに、ベルトは顔を上げて大きな声で返事をした。ヴェンデルガルトは微笑んで、アロイスは優しい瞳でベルトの頭を撫でた。
「彼女を好きな者が傍にいてくれると、俺も安心だ。ヴェンデルの世話、頼んだぞ」
「はい!」
二人のやり取りを微笑ましく見ていたヴェンデルガルトだったが、アロイスはそんな彼女に向き直った。
「すまない……兵士の治療を手伝ってくれないか?」
「分かりました、お手伝いいたします」
立ち上がったヴェンデルガルトは、ベルトに話しかけた。
「少し、アロイス様のお手伝いをしてくるわ。その間に、お茶の片付けをしていてくれるかしら? またあとで、アヤーを教えてね」
「はい、ヴェンデルガルト様」
アロイスは、ヴェンデルガルトの手を引いて部屋を出た。
「蘇生は……無理だよな?」
「蘇生は、魂を削る魔法です。治癒魔法を使える者が修行の先に、神から与えられるごく稀な魔法です。残念ながら、私は使えません」
「命を削ると知っていたら、絶対に頼まない。分かった、ヴェンデルが疲れない限り、治癒してくれると助かる」
ヴェンデルガルトはその言葉に頷いた。そうして、怪我人があふれる部屋のドアを開けた。
「まあ、これは……大変!」
部屋の中には、剣で傷付いた者より火傷で苦しんでいる兵士が多かった。
「アンゲラー王国は、火の馬車で門を破り火の矢を放って来た。今回、門を壊すことが目的だったんだろう。矢なら、門で阻まれても攻撃できる」
兵の呻き声に、ヴェンデルガルトは眉を顰めた。
「門が破壊されるぞ!」
「ヴェンデルガルト様、部屋から出ないでください!」
門から宮殿は、少し離れている。門が破壊されても、その門を取り囲む兵があるので、同時に入って来られる人数は限りがある。門前で中の兵士が待ち構えていれば、立ち向かえるはずだ。
ベルトは、持って来た籠の中から短刀を取り出した。鞘から出していないが、それを手にドアの前で緊張したように構える。
「本当に宮殿まで敵兵が来るような事があれば、必ずアロイス王子が助けに来てくれる筈です。それまでは、私がお守り致します!」
そう声を高くして言うベルトだったが、声は震えていて緊張した顔をしている。剣術を教えて貰った事はない筈だ。
「危ないわ、ベルト。こっちへいらっしゃい!」
ヴェンデルガルトがそう声をかけると、ベルトは泣きそうな顔になりヴェンデルガルトに抱き着いた。
「私は、あなたを護るわ。無理をしないで、お願いよ」
二人は抱き合って暫く様子を見ていたが、一時間ほどで静かになった。
そこにドアがノックされたので、二人は抱き合って震えた。
「ヴェンデル、大丈夫だ。兵は何人かやられたが、向こうの方が被害が大きい――多分、様子見で攻めてきたんだろう」
ドアが開いて顔を見せたのは、アロイスだった。二人は安堵して強張った身体から力を抜いた。
「なんだ? お前たち、仲良くなったんだな」
アロイスは小さく笑うと、二人の頭をポンと撫でる。それでベルトは慌ててヴェンデルガルトから離れると、頭を下げて部屋を出て行こうとする。
「ベルト、待って!」
ヴェンデルガルトが声をかけると、ドアを開けようとしたベルトの手が止まった。
「ベルトというのか。もしかして、気を遣っているつもりか? ヴェンデルはお前を気に入ってるようだ、不安にならないように俺が来ても気にせず傍にいてやってくれ」
アロイスは歩み寄り、小さなベルトの身体を抱えた。
「きゃあ!」
思わず声を上げてしまったベルトだったが、急いでその口を自分の手で塞いだ。アロイスは気にした風ではなく、そのベルトの身体をヴェンデルガルトの横に座らせた。
「……毛糸?」
その時、籠の中の様々な色の毛糸を見つけたアロイスが不思議そうに呟いた。
「あの……ヴェンデルガルト様に、アヤーをお教えさせて頂きました」
ベルトが申し訳なさそうに、アロイスにそう報告した。
「そうか。アヤーは、伝統文化だ。沢山教えてやってくれ」
アロイスの言葉に、ベルトはホッとした顔になった。それから、不安そうにヴェンデルガルトに視線を向ける。
「あの、アロイス様。お願いがあります」
「お願い? ヴェンデルがそんな事を言い出すのは、意外だな。何だ?」
「この子――ベルトを、私の傍でいさせてもよろしいですか? こんな小さい子が、鞭で打たれるのは、可哀想すぎます」
ベルトは、ヴェンデルガルトの服の裾を握って、下を向いている。アロイスの返答が、怖いのだ。ヴェンデルガルトのお世話から外されれば、またハーレムの怖い女たちに使えなければならない。
「なんだ、そんな事か。構わないが、ベルト……だな? お前は、ヴェンデルを好きか?」
「私は、ヴェンデルガルト様が大好きです!」
アロイスの問いに、ベルトは顔を上げて大きな声で返事をした。ヴェンデルガルトは微笑んで、アロイスは優しい瞳でベルトの頭を撫でた。
「彼女を好きな者が傍にいてくれると、俺も安心だ。ヴェンデルの世話、頼んだぞ」
「はい!」
二人のやり取りを微笑ましく見ていたヴェンデルガルトだったが、アロイスはそんな彼女に向き直った。
「すまない……兵士の治療を手伝ってくれないか?」
「分かりました、お手伝いいたします」
立ち上がったヴェンデルガルトは、ベルトに話しかけた。
「少し、アロイス様のお手伝いをしてくるわ。その間に、お茶の片付けをしていてくれるかしら? またあとで、アヤーを教えてね」
「はい、ヴェンデルガルト様」
アロイスは、ヴェンデルガルトの手を引いて部屋を出た。
「蘇生は……無理だよな?」
「蘇生は、魂を削る魔法です。治癒魔法を使える者が修行の先に、神から与えられるごく稀な魔法です。残念ながら、私は使えません」
「命を削ると知っていたら、絶対に頼まない。分かった、ヴェンデルが疲れない限り、治癒してくれると助かる」
ヴェンデルガルトはその言葉に頷いた。そうして、怪我人があふれる部屋のドアを開けた。
「まあ、これは……大変!」
部屋の中には、剣で傷付いた者より火傷で苦しんでいる兵士が多かった。
「アンゲラー王国は、火の馬車で門を破り火の矢を放って来た。今回、門を壊すことが目的だったんだろう。矢なら、門で阻まれても攻撃できる」
兵の呻き声に、ヴェンデルガルトは眉を顰めた。
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