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南の国の戦
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「私は、出来る限りの事をしただけです。でも、騎士の方たちが無事で安心しました。レーヴェニヒ王国の左と右の大臣様は、とてもお強い方でしたね」
「あの方たちも戦われたのですか?」
確か腰に刀は下げていたと、ギルベルトはバルシュミーデ皇国に来た顔のよく似た二人を思い出した。
「ああ、強かった。何とか耐えるとレーヴェニヒ王国の援軍が来て、同時くらいにカールとイザークがアンゲラー王国に到着して攻め込んでくれたんだな?」
「龍の遠隔通信を使って確認した時はそうだったね。アンゲラー王国は、兵が残り少なかったけどすごく抵抗したよ。こちらも死亡者は出ずに怪我人で済んだ」
イザークの言葉に、ランドルフとギルベルトは安心した様に頷いた。
「アンゲラー王国の第二王女がいない事を知ってバーチュ王国に、ヴェンデルガルト嬢と水龍に乗って戻ったんだ。第二王子はハーレムを持っていたから、そこに紛れていないか。確かに紛れていた。偽名を使い、ヴェンデルガルトの使用人として」
「何!? ヴェンデルは何もされなかったのか!?」
「一時人質になったが、賢いツェーザル王子のお陰でアンゲラー王国の王女とバーチュ王国の第二王子は処分された。しかし、アロイス王子は『龍殺しの実』を塗った短剣で刺されて意識がない」
「龍殺しの実?」
ジークハルトとカール、イザーク以外は、聞いた事が無いという顔をした。イザークは、うっすらと何かを知っているようだ。
「昔――古代と言っていい時代、龍と人間は戦っていました。その時、龍殺しの実と言うものがあったんです。その実を龍に与えれば、一日悶えて苦しんで龍は死にます――アロイス王子は、先祖返りが強くてその実が効いたようです。回復魔法をかけましたが効かず、水龍が作った魔法で、眠り続けています。アンゲラー王国が、龍族が絶滅させたはずの種を持っていて、ハーレムで育てていたのです」
「それは――なんという事だ」
「彼が目覚めるのか分からないから、レーヴェニヒ王国が彼を預かる事にした。だから、ヴェンデルガルト嬢に求婚した件は白紙になった」
ヴェンデルガルトが説明をすると、ランドルフもギルベルトも気の毒そうな顔をした。ジークハルトは、二人が気にしているだろうヴェンデルガルトへの求婚の事も話した。
「求婚話が無くなったのは確かに嬉しいですが――あまりにも、アロイス王子が不憫ですね……愛する人を残して、何時目覚めるか分からない状態になるなど……」
ギルベルトは、あんな乱暴なやり方でヴェンデルガルトが奪われた事には怒っていた。だが、アロイス王子が賢い事も知っていたので、彼が国を護るため必死だったと理解していた。それに、ヴェンデルガルトを大事にしてくれていた事に、感謝をしている。
「アンゲラー王国の王族の処刑とかつての土地は、バーチュ王国とヘンライン王国と、それを見届けるレーヴェニヒ王国に任せた。後に、報告が来ると思う。地図の書き替えもしなければならないからな」
ジークハルトはそう言ってから、ヴェンデルガルトに視線を向けた。
「レーヴェニヒ王国は、何故君の存在を知っているんだ? それに、国に来て欲しい様な事を言っていた。どういうことだ?」
それは、他の薔薇騎士団にとっても気になる事だ。ヴェンデルガルトの事は、長く城以外でも口外禁止にしていた。レーヴェニヒ王国が知っているはずがなかった。
「私が、龍の元に行って二年間過ごしていたのはご存知ですね? 実は、その古龍――コンスタンティンは、元は龍の長だったのです。その地位を捨て、私を探していました。そうして私と出逢って、二年で自分の寿命を悟りました。だから私とビルギットを封印して隠していました。ですが、コンスタンティンは遺言をレーヴェニヒ王国に残していたんです。『時が来れば、ヴェンデルガルトとビルギットの封印が現れる。それを、自分が現れるまで預かっていて欲しい』と。レーヴェニヒ王国は、コンスタンティンを特別な龍として扱っていたのでしょう、それをちゃんと覚えているのです」
ヴェンデルガルトも、コンラート大将軍が教えてくれなければ知らない事だった。
「それは――なんという執着……」
イザークが、驚いた顔をした。そこまで龍がヴェンデルガルトに囚われている事に、驚いたようだ。
「もしかしたら、コンスタンティンが生まれ変わっているかもしれません――これからすぐに生まれ変わるのかも……私には、分からないのです。ですが、レーヴェニヒ王国はコンスタンティンの遺言を護りたいのだと思います」
「生まれ変わりだと言っても、同じじゃない。ヴェンデルを自分のものだと主張するのは――縛り付けるのはおかしい。そんなものに囚われないで、ヴェンデルは自分の伴侶を見つけるべきだよ!」
カールの言葉は、薔薇騎士団長全ての想いだった。
「あの方たちも戦われたのですか?」
確か腰に刀は下げていたと、ギルベルトはバルシュミーデ皇国に来た顔のよく似た二人を思い出した。
「ああ、強かった。何とか耐えるとレーヴェニヒ王国の援軍が来て、同時くらいにカールとイザークがアンゲラー王国に到着して攻め込んでくれたんだな?」
「龍の遠隔通信を使って確認した時はそうだったね。アンゲラー王国は、兵が残り少なかったけどすごく抵抗したよ。こちらも死亡者は出ずに怪我人で済んだ」
イザークの言葉に、ランドルフとギルベルトは安心した様に頷いた。
「アンゲラー王国の第二王女がいない事を知ってバーチュ王国に、ヴェンデルガルト嬢と水龍に乗って戻ったんだ。第二王子はハーレムを持っていたから、そこに紛れていないか。確かに紛れていた。偽名を使い、ヴェンデルガルトの使用人として」
「何!? ヴェンデルは何もされなかったのか!?」
「一時人質になったが、賢いツェーザル王子のお陰でアンゲラー王国の王女とバーチュ王国の第二王子は処分された。しかし、アロイス王子は『龍殺しの実』を塗った短剣で刺されて意識がない」
「龍殺しの実?」
ジークハルトとカール、イザーク以外は、聞いた事が無いという顔をした。イザークは、うっすらと何かを知っているようだ。
「昔――古代と言っていい時代、龍と人間は戦っていました。その時、龍殺しの実と言うものがあったんです。その実を龍に与えれば、一日悶えて苦しんで龍は死にます――アロイス王子は、先祖返りが強くてその実が効いたようです。回復魔法をかけましたが効かず、水龍が作った魔法で、眠り続けています。アンゲラー王国が、龍族が絶滅させたはずの種を持っていて、ハーレムで育てていたのです」
「それは――なんという事だ」
「彼が目覚めるのか分からないから、レーヴェニヒ王国が彼を預かる事にした。だから、ヴェンデルガルト嬢に求婚した件は白紙になった」
ヴェンデルガルトが説明をすると、ランドルフもギルベルトも気の毒そうな顔をした。ジークハルトは、二人が気にしているだろうヴェンデルガルトへの求婚の事も話した。
「求婚話が無くなったのは確かに嬉しいですが――あまりにも、アロイス王子が不憫ですね……愛する人を残して、何時目覚めるか分からない状態になるなど……」
ギルベルトは、あんな乱暴なやり方でヴェンデルガルトが奪われた事には怒っていた。だが、アロイス王子が賢い事も知っていたので、彼が国を護るため必死だったと理解していた。それに、ヴェンデルガルトを大事にしてくれていた事に、感謝をしている。
「アンゲラー王国の王族の処刑とかつての土地は、バーチュ王国とヘンライン王国と、それを見届けるレーヴェニヒ王国に任せた。後に、報告が来ると思う。地図の書き替えもしなければならないからな」
ジークハルトはそう言ってから、ヴェンデルガルトに視線を向けた。
「レーヴェニヒ王国は、何故君の存在を知っているんだ? それに、国に来て欲しい様な事を言っていた。どういうことだ?」
それは、他の薔薇騎士団にとっても気になる事だ。ヴェンデルガルトの事は、長く城以外でも口外禁止にしていた。レーヴェニヒ王国が知っているはずがなかった。
「私が、龍の元に行って二年間過ごしていたのはご存知ですね? 実は、その古龍――コンスタンティンは、元は龍の長だったのです。その地位を捨て、私を探していました。そうして私と出逢って、二年で自分の寿命を悟りました。だから私とビルギットを封印して隠していました。ですが、コンスタンティンは遺言をレーヴェニヒ王国に残していたんです。『時が来れば、ヴェンデルガルトとビルギットの封印が現れる。それを、自分が現れるまで預かっていて欲しい』と。レーヴェニヒ王国は、コンスタンティンを特別な龍として扱っていたのでしょう、それをちゃんと覚えているのです」
ヴェンデルガルトも、コンラート大将軍が教えてくれなければ知らない事だった。
「それは――なんという執着……」
イザークが、驚いた顔をした。そこまで龍がヴェンデルガルトに囚われている事に、驚いたようだ。
「もしかしたら、コンスタンティンが生まれ変わっているかもしれません――これからすぐに生まれ変わるのかも……私には、分からないのです。ですが、レーヴェニヒ王国はコンスタンティンの遺言を護りたいのだと思います」
「生まれ変わりだと言っても、同じじゃない。ヴェンデルを自分のものだと主張するのは――縛り付けるのはおかしい。そんなものに囚われないで、ヴェンデルは自分の伴侶を見つけるべきだよ!」
カールの言葉は、薔薇騎士団長全ての想いだった。
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