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陰謀
フロレンツィアと執事
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「私の庭にそんなものがあったとは……申し訳ないが、記憶にない。そもそも本宅の方に居るので、別宅はあの毒事件がある迄使う事が無かった。誰かが不在の時に忍び込んで、作ったのではないですか?」
別室に三人を連れて行くと、ラムブレヒト公爵はソファに深く座り込んで手にしていたワインを飲んだ。ヒューン伯爵とヘンチュケ侯爵は、何も言わなかったが心なしか表情が強張っていた。咳払いを何度もして、ワインをずっと飲んでいる。
部屋には彼ら三人以外、ジークハルト、ギルベルト、カールがいた。警備をしているのは、赤薔薇騎士たちだ。
「おかしいですね、あなた達は子爵や男爵家の令嬢に行儀作法を教えると誘拐して、子息たちを薔薇騎士団以外の騎士団へと勧誘している。これは、バルシュミーデ皇国への反逆行為の下準備なのでは? 皇国では現在、そのような騎士団を作る予定はない筈だ」
ジークハルトは静かに尋ねる。しかし、ラムブレヒト公爵は余裕のある顔でジークハルトを見返した。
「はて。ご令嬢を私達の娘が連れ去った証拠はあるのですか? それに、そのような騎士団を作った証拠は? 誰が騎士団員であるか名簿なり誓約書でもあるのでしょうか?」
これが、痛い所だ。令嬢を連れ去った時は、彼女達や両親の証言しかない。騎士団については、メンバーが全く分からない。名簿も手に入っていない。
クラーラ以外まだ意識が戻らず、攫われた少女たちの意識はまだ戻っていない。少女たち全ての名も分かっていないので、家族に証言も今はして貰えなかった。
花屋の親子は、イザークが聞き取りをしていた。ラムブレヒト公爵たちの娘たちには、ランドルフが相手をしている。隣の部屋から、ヒステリックな金切り声が聞こえて来た。ランドルフの心中を想い、ジークハルトは申し訳なく思った。
「だから! それはヴェンデルガルトっていう女が仕組んだのよ! 私がそんな事する訳ないでしょう!? エリーザとマルガレーテにも謝ってよ!」
フロレンツィアがそう怒鳴ると、二人は僅かに視線を下げた。微かに震えているようだ。
「うるせぇってんだろ。静かに話をする事は出来ないのか? お前だからやるだろうなって事だ、この毒婦が。一人意識が戻って、話は聞いている。お前達三人が彼女達を荷馬車に乗せて、眠くなる薬を入れたお茶を飲ませて地下室に閉じ込めたってな!」
ランドルフは怒鳴りそうになるのを耐えて、フロレンツィアをきつく睨んでそう言った。しかし、フロレンツィアも負けていない。
「それは、何処の令嬢かしら? 薬を打たれて娼婦の真似事をしていたなんて、そんな話が出回ったら社交界で生きていけないわ。そんな話をする人なんて、いるのかしら?」
「俺は、彼女たちが薬を打たれて娼婦のような事をしていたなんて、言っていないが?」
ランドルフは、呆れたようにそう言って鼻先で笑った。フロレンツィアが、ぐっと黙り込む。
「確かに勇気がいる証言だ。だが、俺は彼女たちが証言してくれると信じている。お前らの様な薄汚い奴らに負けないプライドを、彼女たちは持っているはずだからな」
赤い顔をして、フロレンツィアはランドルフを睨む。余計な事を言って不利な立場にならないように、黙るしかなかった。
エリーザとマルガレーテは、ランドルフが怖くて何も言えない。小さくなって、ずっと下を見ていた。
「――喉が渇いたわ、私達にワインかお茶を頂戴」
フロレンツィアはそう言うと、ソファに身体を預ける様に凭れた。怒鳴り合って疲れたのは、ランドルフも同じだ。紫薔薇騎士にワインを頼む。
「ワインをお持ちしました」
メイドが慌てて赤ワインが入ったグラスを四つ運んできた。それを騎士が受け取り、ランドルフにグラスを渡す。トレイを返す為ドアを開けたまま、三人の令嬢にもワイングラスを渡された。そうして、騎士がメイドにトレイを返そうとしたとき――花屋の息子で、フロレンツィアの執事でもある男がこちらを見ているのに気が付いた。
「おい! 何故あいつを拘束していないんだ!?」
ランドルフが声を上げる前に、三人の令嬢はワインを口にしていた。緊張して、喉が渇いていたのだろう。半分ほどを一気に飲んだ。
「ぁあ!」
「がっ……!」
一瞬の間を置いて、エリーザとマルガレーテが、ワイングラスを落として床に倒れ込んだ。突然の事にランドルフと騎士とメイドの視線が、そちらに向けられた。
「毒だ!」
ランドルフはそう叫んで、倒れて悶え苦しんでいる二人に駆け寄る。その横を、フロレンツィアが走り抜けた。
「な!?」
ランドルフが気付いた時には、フロレンツィアの執事がこちらに来ていて彼女の手を取りドアを閉めていた。
「誰か! フロレンツィアを捕らえろ!」
ランドルフの声を背に、フロレンツィアを抱え上げた執事は出口に向かって走って行った。ラムブレヒト公爵親子の尋問が行われていると知らないものが多く、ランドルフの声が間に合わなかった。彼は帰ろうとした貴族の馬車を奪い、そのまま逃亡した。
別室に三人を連れて行くと、ラムブレヒト公爵はソファに深く座り込んで手にしていたワインを飲んだ。ヒューン伯爵とヘンチュケ侯爵は、何も言わなかったが心なしか表情が強張っていた。咳払いを何度もして、ワインをずっと飲んでいる。
部屋には彼ら三人以外、ジークハルト、ギルベルト、カールがいた。警備をしているのは、赤薔薇騎士たちだ。
「おかしいですね、あなた達は子爵や男爵家の令嬢に行儀作法を教えると誘拐して、子息たちを薔薇騎士団以外の騎士団へと勧誘している。これは、バルシュミーデ皇国への反逆行為の下準備なのでは? 皇国では現在、そのような騎士団を作る予定はない筈だ」
ジークハルトは静かに尋ねる。しかし、ラムブレヒト公爵は余裕のある顔でジークハルトを見返した。
「はて。ご令嬢を私達の娘が連れ去った証拠はあるのですか? それに、そのような騎士団を作った証拠は? 誰が騎士団員であるか名簿なり誓約書でもあるのでしょうか?」
これが、痛い所だ。令嬢を連れ去った時は、彼女達や両親の証言しかない。騎士団については、メンバーが全く分からない。名簿も手に入っていない。
クラーラ以外まだ意識が戻らず、攫われた少女たちの意識はまだ戻っていない。少女たち全ての名も分かっていないので、家族に証言も今はして貰えなかった。
花屋の親子は、イザークが聞き取りをしていた。ラムブレヒト公爵たちの娘たちには、ランドルフが相手をしている。隣の部屋から、ヒステリックな金切り声が聞こえて来た。ランドルフの心中を想い、ジークハルトは申し訳なく思った。
「だから! それはヴェンデルガルトっていう女が仕組んだのよ! 私がそんな事する訳ないでしょう!? エリーザとマルガレーテにも謝ってよ!」
フロレンツィアがそう怒鳴ると、二人は僅かに視線を下げた。微かに震えているようだ。
「うるせぇってんだろ。静かに話をする事は出来ないのか? お前だからやるだろうなって事だ、この毒婦が。一人意識が戻って、話は聞いている。お前達三人が彼女達を荷馬車に乗せて、眠くなる薬を入れたお茶を飲ませて地下室に閉じ込めたってな!」
ランドルフは怒鳴りそうになるのを耐えて、フロレンツィアをきつく睨んでそう言った。しかし、フロレンツィアも負けていない。
「それは、何処の令嬢かしら? 薬を打たれて娼婦の真似事をしていたなんて、そんな話が出回ったら社交界で生きていけないわ。そんな話をする人なんて、いるのかしら?」
「俺は、彼女たちが薬を打たれて娼婦のような事をしていたなんて、言っていないが?」
ランドルフは、呆れたようにそう言って鼻先で笑った。フロレンツィアが、ぐっと黙り込む。
「確かに勇気がいる証言だ。だが、俺は彼女たちが証言してくれると信じている。お前らの様な薄汚い奴らに負けないプライドを、彼女たちは持っているはずだからな」
赤い顔をして、フロレンツィアはランドルフを睨む。余計な事を言って不利な立場にならないように、黙るしかなかった。
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「――喉が渇いたわ、私達にワインかお茶を頂戴」
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「ワインをお持ちしました」
メイドが慌てて赤ワインが入ったグラスを四つ運んできた。それを騎士が受け取り、ランドルフにグラスを渡す。トレイを返す為ドアを開けたまま、三人の令嬢にもワイングラスを渡された。そうして、騎士がメイドにトレイを返そうとしたとき――花屋の息子で、フロレンツィアの執事でもある男がこちらを見ているのに気が付いた。
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ランドルフが声を上げる前に、三人の令嬢はワインを口にしていた。緊張して、喉が渇いていたのだろう。半分ほどを一気に飲んだ。
「ぁあ!」
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「毒だ!」
ランドルフはそう叫んで、倒れて悶え苦しんでいる二人に駆け寄る。その横を、フロレンツィアが走り抜けた。
「な!?」
ランドルフが気付いた時には、フロレンツィアの執事がこちらに来ていて彼女の手を取りドアを閉めていた。
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