122 / 125
陰謀
証拠
しおりを挟む
「ギルベルト様!」
全員がフロレンツィアに気を取られていたので、執事が部屋に入って来るのに気が付かなかった。ロルフが剣を構える執事のその腕を蹴ると、執事は呆気なく飛ばされて床に倒れた。絵を描くことが好きで、武術をした事が無かったのだろう。素早くロルフに取り押さえられた。
「おい、魔女! フロレンツィア様を治せ! 毒の耐性が弱くなったから、意識を取り戻さない!」
ロルフに腕を押さえられても、執事はフロレンツィアの事を心配していた。ロルフは一度執事の顔を殴った。しかし、執事は言葉とは裏腹に願う様にヴェンデルガルトを見つめていた。
「治します。落ち着いて下さい」
ヴェンデルガルトはそう言うと、部屋の中に入った。壁には、色んな紙が貼られていた。名簿の様な紙の束も見えた。
「治療」
優しくヴェンデルガルトが治癒魔法を唱えると、苦しそうだった息が収まり疲れのせいか眠ったようだ。
「フロレンツィアは――娘は、夫と何をしたのでしょう?」
一連の出来事を見ていたレナータは、動揺したようにヴェンデルガルトに訊ねた。ヴェンデルガルトは少し躊躇ったが、静かに口を開いた。
「ラムブレヒト公爵は、国家反逆罪の容疑。フロレンツィア様は、貴族令嬢の誘拐と……虐待の容疑です」
「まさか! ……まさか、そんな恐ろしい事を! ああ、神よ……」
レナータは、フロレンツィアに駆け寄らなかった。それが、もう決別している証だろうか。室内をざっと見渡したギルベルトが「証拠は、全てここにあるようですね」と言うと、レナータは更に涙を零した。
「私は……私は、何も知りませんでした。知っていれば、止めました! そんな私の所に、こんな恐ろしいものを置いておくなんて!」
「嘘はよくありません、レナータ様」
ヴェンデルガルトは、悲しそうにレナータを見つめた。彼女は金の瞳を見つめて、動揺したように瞳を泳がせた。
「別宅にあんな地下室が最近出来た訳がないですよね。あなたが教会に住むまで、別宅に住んで地下牢を作るのを世間から隠しながら用意していたのではないでしょうか? 夫婦不仲も、嘘。昨夜この執事が来た時、フロレンツィア様をここに匿ったのでしょう? 昨夜から今朝に掛けての短い時間で、あなたがいない時間にフロレンツィア様を隠すなんて無理なんです」
「そんな、私は何も知らない!」
「教会に来る令嬢たちを、あなたが選別していたのではないですか? 令嬢誘拐は、きっと何年も前から行っていたんですね。バレないと分かって、今回人数を増やした。それにさっき、この執事が襲い掛かってきた時一番後ろにいたのはあなた。なのに、何の声も上げませんでした」
「違う、驚いて声が出なかっただけです!」
「残念ながら、この書面にあなたのサインがありますよ。令嬢を売ったお金の取り分に関する書面の様ですが二年前の日付です」
ギルベルトは、一枚の紙を取り出して彼女に見せた。それを見て、レナータの涙は止まって青い顔になった。レナータはそこで慌てて逃げようとするが、ヴェンデルガルトがその腕を掴んだ。
「離して! 離せ! 離せ!! この、無能野郎! こいつ等さえ始末すれば!!」
暴れるレナータは、ヴェンデルガルトの腕を振り払う様に暴れた。執事を押さえているロルフは、手が離せない。
「私のヴェンデルに乱暴しないで貰おう――あなたこそ、諦めて落ち着きなさい」
「きゃあ!」
ギルベルトが歩み寄りヴェンデルガルトからレナータの腕を受け取ると、強くひねり上げた。
「ヴェンデル、すみませんが神父に縄を用意して貰える様に話して貰えませんか? それと、城に応援を呼んで欲しいと」
「分かりました!」
ギルベルトにそう言われて、ヴェンデルガルトは神父の元に向かった。縄を用意して貰い、ギルベルトとロルフはレナータと執事、眠っているフロレンツィアを縄で縛った。そうして、赤薔薇騎士と白薔薇騎士を引き連れたジークハルトがやって来た。入れ替わりに、ロルフとヴェンデルガルトはカールの別荘に向かった。
「ラムブレヒト公爵に強いコネと財力があったのは、これだったんですね」
「薬の販売と、令嬢娼婦……それらを使った貴族の弱みを握る。汚いわ……可哀想な彼女達……」
自分が起きた時、すでに囚われていた少女たちがいた。亡くなった少女もいたのかもしれない。短期間にあんな地下牢が作れるはずなかったのだ。ヴェンデルガルトはその地下牢を見なかったが、話しを聞いていて違和感を抱いていたのに今になって気が付くなんて。
「でも、助けられた少女たちがいます。ヴェンデルガルト様が、これから支えてあげてください。俺も手伝いますから」
馬に乗るロルフの言葉に、ヴェンデルガルトは彼の前に乗りながら小さく頷いた。
これから、見つかった証拠でラムブレヒト公爵と彼らと共に国家転覆を狙う人たちが裁かれるだろう。国が大きく変わる時だ。
全員がフロレンツィアに気を取られていたので、執事が部屋に入って来るのに気が付かなかった。ロルフが剣を構える執事のその腕を蹴ると、執事は呆気なく飛ばされて床に倒れた。絵を描くことが好きで、武術をした事が無かったのだろう。素早くロルフに取り押さえられた。
「おい、魔女! フロレンツィア様を治せ! 毒の耐性が弱くなったから、意識を取り戻さない!」
ロルフに腕を押さえられても、執事はフロレンツィアの事を心配していた。ロルフは一度執事の顔を殴った。しかし、執事は言葉とは裏腹に願う様にヴェンデルガルトを見つめていた。
「治します。落ち着いて下さい」
ヴェンデルガルトはそう言うと、部屋の中に入った。壁には、色んな紙が貼られていた。名簿の様な紙の束も見えた。
「治療」
優しくヴェンデルガルトが治癒魔法を唱えると、苦しそうだった息が収まり疲れのせいか眠ったようだ。
「フロレンツィアは――娘は、夫と何をしたのでしょう?」
一連の出来事を見ていたレナータは、動揺したようにヴェンデルガルトに訊ねた。ヴェンデルガルトは少し躊躇ったが、静かに口を開いた。
「ラムブレヒト公爵は、国家反逆罪の容疑。フロレンツィア様は、貴族令嬢の誘拐と……虐待の容疑です」
「まさか! ……まさか、そんな恐ろしい事を! ああ、神よ……」
レナータは、フロレンツィアに駆け寄らなかった。それが、もう決別している証だろうか。室内をざっと見渡したギルベルトが「証拠は、全てここにあるようですね」と言うと、レナータは更に涙を零した。
「私は……私は、何も知りませんでした。知っていれば、止めました! そんな私の所に、こんな恐ろしいものを置いておくなんて!」
「嘘はよくありません、レナータ様」
ヴェンデルガルトは、悲しそうにレナータを見つめた。彼女は金の瞳を見つめて、動揺したように瞳を泳がせた。
「別宅にあんな地下室が最近出来た訳がないですよね。あなたが教会に住むまで、別宅に住んで地下牢を作るのを世間から隠しながら用意していたのではないでしょうか? 夫婦不仲も、嘘。昨夜この執事が来た時、フロレンツィア様をここに匿ったのでしょう? 昨夜から今朝に掛けての短い時間で、あなたがいない時間にフロレンツィア様を隠すなんて無理なんです」
「そんな、私は何も知らない!」
「教会に来る令嬢たちを、あなたが選別していたのではないですか? 令嬢誘拐は、きっと何年も前から行っていたんですね。バレないと分かって、今回人数を増やした。それにさっき、この執事が襲い掛かってきた時一番後ろにいたのはあなた。なのに、何の声も上げませんでした」
「違う、驚いて声が出なかっただけです!」
「残念ながら、この書面にあなたのサインがありますよ。令嬢を売ったお金の取り分に関する書面の様ですが二年前の日付です」
ギルベルトは、一枚の紙を取り出して彼女に見せた。それを見て、レナータの涙は止まって青い顔になった。レナータはそこで慌てて逃げようとするが、ヴェンデルガルトがその腕を掴んだ。
「離して! 離せ! 離せ!! この、無能野郎! こいつ等さえ始末すれば!!」
暴れるレナータは、ヴェンデルガルトの腕を振り払う様に暴れた。執事を押さえているロルフは、手が離せない。
「私のヴェンデルに乱暴しないで貰おう――あなたこそ、諦めて落ち着きなさい」
「きゃあ!」
ギルベルトが歩み寄りヴェンデルガルトからレナータの腕を受け取ると、強くひねり上げた。
「ヴェンデル、すみませんが神父に縄を用意して貰える様に話して貰えませんか? それと、城に応援を呼んで欲しいと」
「分かりました!」
ギルベルトにそう言われて、ヴェンデルガルトは神父の元に向かった。縄を用意して貰い、ギルベルトとロルフはレナータと執事、眠っているフロレンツィアを縄で縛った。そうして、赤薔薇騎士と白薔薇騎士を引き連れたジークハルトがやって来た。入れ替わりに、ロルフとヴェンデルガルトはカールの別荘に向かった。
「ラムブレヒト公爵に強いコネと財力があったのは、これだったんですね」
「薬の販売と、令嬢娼婦……それらを使った貴族の弱みを握る。汚いわ……可哀想な彼女達……」
自分が起きた時、すでに囚われていた少女たちがいた。亡くなった少女もいたのかもしれない。短期間にあんな地下牢が作れるはずなかったのだ。ヴェンデルガルトはその地下牢を見なかったが、話しを聞いていて違和感を抱いていたのに今になって気が付くなんて。
「でも、助けられた少女たちがいます。ヴェンデルガルト様が、これから支えてあげてください。俺も手伝いますから」
馬に乗るロルフの言葉に、ヴェンデルガルトは彼の前に乗りながら小さく頷いた。
これから、見つかった証拠でラムブレヒト公爵と彼らと共に国家転覆を狙う人たちが裁かれるだろう。国が大きく変わる時だ。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
まさか私が王族の一員であることを知らずに、侮辱していた訳ではありませんよね?
木山楽斗
恋愛
王城の使用人であるメルフィナには、ある秘密があった。
彼女は国王の隠し子なのである。
その事実は、半ば公然の秘密となっていた。公にされたことは一度もないが、嗅覚に優れた者達はそれを察知していたのだ。
しかし中には、そうではない者達もいた。
その者達は、メルフィナを一介の使用人として考えて、彼らなりの扱い方をした。
それは許されるものではなかった。知らぬうちに王家に牙を向けた者達は、その行為の報いを受けることになったのだ。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる