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第二章・恋の懸け橋
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昨晩の豪雨が嘘のように今朝は晴れ渡った。
日曜だというのに、私は早起きして身支度を整えると、彼女との待ち合わせ場所へ急いだ。
十五分ほど歩いて、横断歩道を渡り、左に折れると、右手にスーパーの緑色の建物がある。駐車場を突っ切り、建物沿いを左に行く。ふと、ガラス越しにイートインコーナーに座って紙コップを口に吸いつけながら外をうかがう彼女の姿があった。私を認めると、すかさず手招きをする。
玄関の自動ドアをくぐり、ペットボトルのアイスコーヒーを購入して彼女の元へ行き、正面に腰かけた。
喉を潤したあと、目を覗き、視線が合うと同時に瞬きで挨拶を交わす。相手も同じく瞬きの回数を増やしてきた。
しばらくして紙コップの中身を干上がらせた彼女は立ち上がった。
「そんじゃ、行こうか?」
「どこへ?」
彼女を追いかけながら聞いた。
「ついて来ればわかる」
彼女の顔はこの上なく綻んだ。
「とても楽しそうね?」
彼女は黙って思い出し笑いに耽る一方で自分だけの世界に閉じ籠り、私が何を言っても最早聞く耳を持たず、返答もあやふやにしかしなくなった。
結局、私たちはひと言も口をきかず、あるアパートの前で立ち止まった。
彼女は玄関前で深呼吸してからすかさず呼び鈴を押した。こちらを向いて両手で口を覆い、声を上げて笑い出す。何とも気色の悪い、妖怪みたいな風貌だ、とつくづく感心する。
──何がそんなに嬉しいのさ?
日曜だというのに、私は早起きして身支度を整えると、彼女との待ち合わせ場所へ急いだ。
十五分ほど歩いて、横断歩道を渡り、左に折れると、右手にスーパーの緑色の建物がある。駐車場を突っ切り、建物沿いを左に行く。ふと、ガラス越しにイートインコーナーに座って紙コップを口に吸いつけながら外をうかがう彼女の姿があった。私を認めると、すかさず手招きをする。
玄関の自動ドアをくぐり、ペットボトルのアイスコーヒーを購入して彼女の元へ行き、正面に腰かけた。
喉を潤したあと、目を覗き、視線が合うと同時に瞬きで挨拶を交わす。相手も同じく瞬きの回数を増やしてきた。
しばらくして紙コップの中身を干上がらせた彼女は立ち上がった。
「そんじゃ、行こうか?」
「どこへ?」
彼女を追いかけながら聞いた。
「ついて来ればわかる」
彼女の顔はこの上なく綻んだ。
「とても楽しそうね?」
彼女は黙って思い出し笑いに耽る一方で自分だけの世界に閉じ籠り、私が何を言っても最早聞く耳を持たず、返答もあやふやにしかしなくなった。
結局、私たちはひと言も口をきかず、あるアパートの前で立ち止まった。
彼女は玄関前で深呼吸してからすかさず呼び鈴を押した。こちらを向いて両手で口を覆い、声を上げて笑い出す。何とも気色の悪い、妖怪みたいな風貌だ、とつくづく感心する。
──何がそんなに嬉しいのさ?
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