上 下
90 / 111
第15章 デート編

第90話 本当は凄い人?

しおりを挟む
 魔冬のボーリングの実力は、さすがマイボールを持っているだけにストライクやスペアを連発して女子にしてはかなりのスコアだ。

 でも……

「なっ、何、颯君!? さっきからずっとストライクばかりなんだけど!? っていうか、めちゃくちゃボーリング上手じゃない!?」

「い、いや……たまたまだよ……」

「たまたまでこれだけストライクが続くはずが無いわ!! もしかして颯君も小さい頃からボーリングをやっていたんじゃないの?」

「しょ、小学四年生頃まではよく両親と来ていたけど……今日は五年振りくらいにボーリングをやったんだよ。だから自分でもこの結果は凄く驚いているというか……」

 いや、マジで俺ってこんなにもボーリングが上手かったのか?

 小学生の頃にやっていたとはいえ、あの時のスコアって多分、百八十点くらいだったような……ん? 何かどこからか『ふざけるな、それが小学生の出す点数かよ!?』っていう声が聞こえたような……

「うわぁああ、悔しいなぁ……それにマイボール、マイシューズの私が負けるなんて、とても恥ずかしいわぁ……」

「ゴ、ゴメンよ、魔冬……」

「あっ、でも、だからといって手を抜くのは絶対にダメよ!? 颯君、優しいから直ぐにそうしちゃいそうだし……」

 うっ、バレてる……

「わ、分かったよ。俺も手を抜くのは嫌いだし……でも、めちゃくちゃ本気を出しているって訳でもないんだけどなぁ……」

「だから余計に凄いのよ。でも良かったわ。私の思っていた通りの颯君で……」

「えっ、どういう事?」

「私ね、中等部の頃から特に体育の授業の時に思っていたのよ。颯君は何か訳があって本当の自分を出していないんじゃないかって……でも今日のボーリングの実力を見て私が思っていた事が間違いでは無い事が分かってとても嬉しいわ」

 本当の自分か……

 俺は小四のあの時から本当の自分、本来の自分を殺して『陰キャオタク』になったからなぁ……

 自分では今の『陰キャオタク』が定着していると思っていたけど、魔冬の指摘通り、所々で本来の『陽キャ』な部分が出ていたかもしれないよなぁ……

 でも、それを見抜いていた魔冬って子は本当に凄いよな。

「颯君、どうしたの?」

「えっ? い、いや、別に何でも無いよ……ただ、魔冬って凄い子だなぁっ思ってさ……」

「凄くなんかないわよ。凄いのは颯君だから。その証拠にアレを見て? あれだけ颯君をバカにしていた他のレーンの人達やギャラリー達の顔……驚きの余り開いた口が閉じないでいるわよ。ウフフフ……私はあの光景が見る事ができただけで凄く嬉しいな」

「そ、そうなのかい?」

「うん、そうよ。どうだ、私の彼氏凄いだろ!? って言ってやりたいわ。あっ、でもまだ彼氏じゃなかったわね? ゴメンね。私、先走っちゃったみたい♡」

 な、な、何なんだ? この子、可愛すぎるだろ!?

 ヤバいヤバイ……俺の心に響きかけてしまったぞ。

 お、落ち着くんだ、俺……

 それに魔冬にもあの事を伝えなくちゃいけないしな。

「ま、魔冬……?」

「なぁに、颯君?」

「い、いや……あのさ……ボーリングが終わったらでいいからさ、一つだけ魔冬に伝えたい事があるんだけど……」

「うん、分かった……それじゃぁ、引き続きボーリングをしましょう!! 私、頑張って少しでも颯君に追いつくんだから!!」

「ハハハ、頑張りたまえ……」

「もう、なに~その上から目線はぁ? ウフフフフ……」



 【片倉小町サイド】

「な、なんかあの二人、とっても良い雰囲気なんだけど!? あの陰キャ君が魔冬にイヤラシイことでもしたらぶっ飛ばしてやろうと思っていたのにさ……」

「そ、そうね、忍ちゃん? あんな満面の笑顔をした魔冬なんて久しぶりに見たわ!!」

「小町さんのおっしゃる通りですねぇ……魔冬ちゃん、とても幸せそうだなぁ……羨ましいなぁ……」

「あら? 蕾ちゃんも恋愛に興味あるのかなぁ?」

「え? ま、まぁ……私も一応女の子ですし……それにアメリカに住んで居た頃はボーイフレンドは何人かいたんですよ……」

「 「えーっ、マジかっ!?」 」


 【二十番レーンの直人&太鳳サイド】

「お、おい見たか太鳳……?」

「う、うん……見たわ、直人……」

「は、颯さん……」

「 「凄すぎるだろーっ!?」 」

ツッ……「こちら伊緒奈、どうしたの? 何かあったの? どうぞ~」


 【一番レーンの知由&八雲サイド】

「や、八雲? は、颯君って本当は凄い人じゃないの?」

「うん、私は前からそんな気はしていたよ。それにしても颯君、カッコイイなぁ……それも前から思っていた事だけどね……」

「八雲……あ、あなた……」

ツッ……「こちら伊緒奈です。直人君や太鳳ちゃんから全然、応答が無いのだけど、何かあったの? どうぞ~」



 【颯&魔冬サイド】


 三ゲームの予定にしていたボーリングが終わり俺達はジュースを飲みながら椅子に腰かけているのだが、俺は今がチャンスと思い『付き合う為の条件』を魔冬に言ってみた。

 すると魔冬は……

「なるほどね。優しい颯君らしい条件ね。これなら颯君と付き合う事ができなくてもショックは少ないかもしれないわね?」

「ってことは……」

「うん、分かったわ。私だけその条件に反対する訳にもいかないし……それに元々、私は今年の生徒会長選挙に立候補するつもりだったしね」

「えっ、そうなのかい!?」

「うん、まぁね。でも立候補する権利を得る為にはまず期末テスト後に行われる『学年人気投票』で一位か二位に入らないとダメなんだけど……なんとか立候補できる様に頑張るわ。そして生徒会長になって絶対に颯君の彼女になってみせるから!!」

「ア……ハハハ……」

 しかし……

 今のところ誰一人、俺の出した条件に対して異議を言わないよなぁ……

 なんか、ドンドン申し訳ない気持ちになってきたぞ……



 ―――――――――――――――――――
 お読みいただきありがとうございました。

 次回は羽柴陽菜&毛利茂香とのデートスタートです。
 どうぞお楽しみに(^_-)-☆
しおりを挟む

処理中です...