異世界定食屋 八百万の日替わり定食日記 ー素人料理はじめましたー 幻想食材シリーズ

夜刀神一輝

文字の大きさ
104 / 189

八百万名物 パスタの日

しおりを挟む
 カレーの日に続いて、八百万の名物料理、銀貨1枚でもお腹いっぱい食べられる日の料理を紹介しよう。 
 
 その名もパスタの日! 
 
 これも初めは料理になれないで、しかも思った以上にお店が繁盛してしまった為に、手の抜いた日を作りたいと思った斗真が始めた事だった。 
 
 まぁ単純な話パスタなら茹でてソースをかければ、すぐに出せると考えた訳でございます。 
 
 今でこそ一杯銀貨一枚で、普通盛りから特盛、巨人盛り、火山盛りと選べる所ですが、当初店で出していたときは銀貨一枚に加えてお替わり自由の何杯でも食べていい状態だったんです。 
 
 これまたパスタを掻っ込むみんなの速さもあって、回転率が高く、斗真は麺を大量に茹で、終いにはミートソースがなくなり、レトルトソースをかける所まで追い詰められたとか? 
 
 そんな大繁盛した事から、カレーの日同様にお客様からの声を聴いてパスタの日を作る事となりました。 
 
 大鍋には時雨牛のひき肉をふんだんに使って、王玉玉ねぎと紅玉トマトの美味さが爆発するミートソースの鍋がぐつぐつと煮られている。 
 
 もう一つの準備は完全に日本の食材、たらことバターと醬油が用意されている、たらこバター醬油!これもまた八百万パスタの日には欠かせない、お客様の大好物の一つとなりました。 
 
 そしてもう一つはこれこそ原価的には安くすむが、フライパンで調理するためにちょっとだけ手間がかかるペペロンチーノ、おいおいペペロンチーノなんか一番簡単じゃねーかとおもうでしょ?でも相手は大量のお客様、ミートソースやたらこバターの様に茹でてすぐに和えて出せるパスタと比べると、やはりフライパンを使ってニンニクとオイルを丁寧に和えるのとではやはり手間が違う、じゃあレトルトみたいに和えるだけのペペロンチーノつかえばいいじゃないかって?斗真も最初はそれでいいかもと考えた。 
 
 でもお客さんからは銀貨一枚お代を頂いている。 
 
 そう考えると、素人でも精一杯のもんを食ってもらいたいと思うのが人情ってもんでございます。 
 
 銀貨一枚の料理に銀貨一枚以上の価値を感じてもらって、得して美味しくて腹いっぱい満足しての八百万、そう考えると手を抜きたいんだけど手を抜けない、という悪循環に陥る。 
 
 本場のペペロンチーノの動画から、日本で人気の動画シェフの作り方まで食い入るように見て、手順を覚えて、素人なら素人なりに全力のペペロンを!ベーコンには異世界産のキャラメル豚のベーコンを態々庭先で作って、ニンニクは日本で生産量第三位の香川県産のものと、異世界産のニンニクの紫蘇ニンニクを使って、さっぱり感と強烈なニンニクの美味さを前面に出したペペロンチーノを作った。 
 
 ニンニクは臭い!臭いけど美味い!しかも紫蘇ニンニクの爽やかな味と強烈で癖になる旨味!そのままニンニク揚げにしても強烈に美味い!唯一の救いは一時間程度ニンニクの匂いが収まってくるところだ。 
 
 十二星座団 師団長 牡羊座アリエスのレム 牡牛座タウラスのビーチェ 双子座ジェミニのミミ 
 
 「だ~か~ら~!パスタって言ったらミートソース一択に決まってんじゃん!八百万のミートソースは最強!最高!なんだから!しかも追加料金でごろごろのミートボールもつけてくれるんだよ!」  
 
 行列にまじり師団長のレムが大声をあげる、これに答えたのは同じく師団長のビーチェだった。
 
 「最強なのはたらこバター!たらこ!お醤油!そしてバターがまろやかに一つにしてくれる・・・・・・この美味しさがわからないなんて!それでもアンタ十二星座団の師団長なんてよくできるね!?いっそ後輩にアリエスを譲ったら?」 
 
 長い金髪の髪をゆらして、いつもはおっとりした顔と表情と口調のゆるふわガールな落ち着き娘のレムなのだが、顔を真っ赤にしてタレ目を吊り上げて怒っている。 
 
 一方ポニーテルに少し日焼けした小さな女の子ビーチェも可愛い顔をしているのに、とんでもない暴言が口から飛び出る。 
 
 一人短めの髪をいじりながら、眼鏡をかけ小説片手に列に並んで知らんふりをしているジェミニのミミ。 
 
 「そこまで言うのね?この怪力ちび娘!?なぁ~にがタウラスよ!アンタなんかどっからどうみてもウサギに牙はやしたのが精々のくせして!?」 
 
 「あぁ~ん!レムがちびっていった!言っちゃいけない事いった!アテナ姉さまとリリア姉さまに言いつけてやる!レムなんか羊そっくりなくせに!?」 
 
 「なによ!」 
 
 「やる気!」 
 
 二人の闘気と殺気が爆発的に上昇してくなか、列の人間はおいおいと言った感じで二人から距離をとる。 
 
 「食らいなさい!このアリエスの一撃を!!」 
 
 「タウラスの名が伊達じゃないって事見せてやろうじゃない!!」 
 
 「おい!誰かとめろ!こいつらマジだぞ!!」 
 
 「無理だ!武闘派で鳴らした十二星座団だぞ!止められるわけがねぇ!退避!!列の人間は安全圏まで退避しろ!!」 
 
 「SSかSSS級だろ!?しゃれになんねーよ!誰かクラウスさん呼んで来い!結界師のルーナちゃんでもいいぞ!ガンダルフ様!にエスメラルダ様!はみつかるわけもねぇか!」 
 
 ぶつかり合おうとしている、にらみ合っているその時、ジェミニのミミが読んでいる本をパンと閉じ、二人を見つめると 
 
 「二人とも、こんな所で戦ったら八百万の皆さんに迷惑がかかる」 
 
 「ミミ!」 
 
 「だってレムが!」 
 
 「周りをみて、列もぐちゃぐちゃになって他のお客さんにも迷惑かけてる、斗真さんが悲しむ事になるよ」 
 
 「それは・・・・・・」 
 
 「そう言われると・・・・・・・・」 
 
 「ほら、他のお客さんにも謝って、皆さん申し訳ありません。熱くなるとポンコツな子達なんです」 
 
 「はぅぅ、ごめんなさい、皆さま、ご迷惑おかけしました」 
 
 「うぅぅぅごめんなさい」 
 
 周りの人間達は、納まってくれてよかったと、まぁまぁいいじゃないか八百万っていったらこんな事しょっちゅうだしなって空気が流れる。 
 
 列も綺麗に元通りになり、三人はまた談笑を始める。 
 
 「それで?なんでもめてたの?」 
 
 「どのパスタが最強無敵かで喧嘩になっちゃって、今思えば恥ずかしいわ、駄目ねむきになっちゃって」 
 
 「そうだよね、それに八百万のパスタはどれもとおおおおっても美味しいもんね!」 
 
 するとミミが眼鏡をクィとあげて微笑む。 
 
 「私の中の最強はペペロンチーノ!これ一択!あのニンニクの味が癖になったらたまらない!臭くてもいい!だって美味しいんだもの!!」 
 
 「げぇ!ミミはペペロン推しかぁ、美味しいけど匂いがね・・・・ちょっと恥ずかしいかなって」 
 
 「ビーチェはペペロン好きなのもわかるよぉ、あれは確かに強烈に美味しいよね、でも毎日ってよりたまに無性に食べたくなる奴って感じ!たらこはさぁ三食の内一食はタラコバターでいいかなって毎日行ける感じがいいの」 
 
 「あ~それわかるかも!私もミートソースは週一って感じ!ペペロンは月一かな?」 
 
 「ペペロン巨人盛り、あののど越しといい、強烈な匂いと味の暴力といい最高」 
 
 「ミートも最高だよ~、時雨牛とか毎回お肉や出汁を変えてるんだって!飽きがこないのも納得だよねぇ!またミートボールが最高なの!小さなハンバーグみたいで肉感満載のじゅんわりジューシーでさぁ、トマトの酸味で爽やかだし、玉ねぎの甘味もすごいんだよ~」 
 
 「うぅぅぅぅん、そういわれるとミートもいいかも、でもタラコのあの独特の海の香と醬油とバターのまろやかなコクと塩味、海苔がまたいい仕事するんだよなぁ、毎日でもいけるけど、実際は毎日食べられないし・・・・・・うん!今回はタラコバターにやぱりしよう!次回でミートにペペロンにしようかな?それともお替わりしちゃう??」 
 
 「それもいい、一回目は普通の大盛で、二回目には違う味でもいいかも」 
 
 「いっそみんなで一口づつシェアしない?それが一番楽っぽくない?」 
 
 「「おおぉ~~」」 
 
 「レムあったまいい!」 
 
 「それでいこう!」 
 
 「楽しみ~」 
 
 パスタの日、お客さん達にも大盛況のようですね、しかし斗真は結局手を抜く事ができたのか?どうなのか?
しおりを挟む
感想 145

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。 絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」! 畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。 はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。 これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

処理中です...