16 / 35
第16話 石化病
しおりを挟む
「それで、空気感染しないのなら、なぜ同じ地域の者たちが次々に石化病に感染するのだ?」
興味津々と尋ねてくるレーヴェンに、俺は過去の人生で得た知識を披露する。
「同じ地域の人々が次々と石化病に感染するのは、空気感染ではなく、主に水が原因なんだ」
「水……?」
「見たところ、この村の水源はあの湖のようだな」
「それが何だと言うのですか」
「村の人々は湖の水を飲料水として、日頃から飲んでいる。違うかい?」
それが何か問題でもあるのかと首をかしげる彼女たちに、俺は石化病の原因について詳しく説明する。
「石化病は、体内に多量の瘴気が取り込まれ、それが細胞を悪性化させる状態を指すんだ」
「細胞が悪性化……?」
レーヴェンは顎を指で触れながら、必死に理解しようとしていた。
「それと湖の水と何の関係があるというのです」
「調べてみないとはっきりしたことは分からないけど、たぶん湖には瘴気を含んだ特殊な鉱石があると思う」
「鉱石……?」
「その鉱石は紫色に輝いていて、長い年月をかけて魔物の糞が固まったものだ。それが人体に害を及ぼす瘴気を含んでいる。つまり、湖の水がその瘴気を含んでいて、それを飲み続けた結果、細胞が悪性化し、石化病が発症する。そして、同じ地域に住む人々がほぼ同時に感染するのもそのせいだ。この誤解から、多くの魔法医学者が空気感染だと考えていたんだ」
説明が終わると、レーヴェンは即座に湖の調査を命じた。
「かしこまりました」
ハーネスはメイドたちを湖に呼び寄せ、素潜りで湖の底を調査し始めた。
「それで、石化病を治す方法はあるのか?」
深刻な表情のレーヴェンに、俺は「もちろんだ!」と答えた。
「体内に取り込んでしまった瘴気を取り除けばいい。そのためには浄化石が必要になる」
「浄化石……そんなもので治るのか?」
浄化石は、魔物が寄りつかないように設置される石で、魔物が放つ瘴気を浄化する効果がある。魔物は自分たちの瘴気が消えることを嫌うため、浄化石は村や街に設置されている。
「ありました!」
湖に潜っていたメイドの一人が、瘴気を含んだ鉱石を発見したようだ。湖の中に大きな塊があることが判明した。
この湖には古代に魔物が住んでいたらしく、その糞が長い年月をかけて瘴気を含んだ鉱石に変化したのだ。
「よし、鉱石をすべて取り除こう」
湖の調査はハーネスたちに任せ、俺たちは再び村に戻ってきた。そして、レーヴェンは大声で村人たちに呼びかけた。
「皆聞くのだ! この者ははランス、お前たちの石化病を治すことができる名医だ!」
「石化病が治るのか?」
「これは死の病なんじゃ?」
最初は疑念が漂っていたが、レーヴェンの情熱的な呼びかけに徐々に村人たちが集まってきた。
「で、そのような浄化石をどうするのです?」
俺は村にある浄化石の一部を砕き、粉末にする作業を行っていた。
「すまないが、誰かムクネ草を持っていたら分けてほしい」
俺の呼びかけに、先ほどの少女がムクネ草を持ってきてくれた。
「ありがとう!」
「……」
恥ずかしそうに頷いた少女が、母親の元に戻っていく。この一連のやり取りを見ていたレーヴェンは優しく微笑んでいた。
「石化病を治すのに、ムクネ草なんて必要なんですか?」
「ムクネ草は吸収を早める効果がある。粉末状にした浄化石を素早く体内に吸収させるためにも、ムクネ草を摂取することは重要なんだ」
俺は出来上がった薬を村人たちに渡した。最初は毒ではないかと疑念を抱いている村人もいたが、
「「「おおおおっ!!」」」
驚きの声が上がった。
率先して薬を飲んでくれた少女の石化が和らいだことを確認すると、警戒心を解いた村人たちも、次々と薬を受け取り、飲み始めた。
「こ、こりゃすげぇ!」
「絶対に治らないと思っていた、石化病の症状が和らいでいくぞ!」
「皇女殿下様が名医を連れて、俺たちを助けにきてくださったんだ!」
村人たちは感謝の意を伝えながら、何度も頭を下げていた。俺は謙遜しつつ、「大したことじゃないよ」と言って、レーヴェンと笑顔を交わした。
かつてどんよりとした村が、今では活気にあふれている様子を見て、俺たちは感慨深い気持ちになる。
きっとこれがこの村の本当の姿なのだろう。
病気は人々から笑顔を奪い、心を閉ざさせることがある。今回の人生でも石化病に苦しむ人々を救えたことで、あの時の俺の苦労も――人生にも意味を見出せたと思う。
ククルたちにも、早く届くといいな。
「あとはこれを一週間程飲み続ければ、体内に取り込んでしまった瘴気は完全に取り除かれるだろう」
「やはり、ランスは私が見込んだ通りの男だ!」
レーヴェンに褒められると、途端に顔が熱くなる。
「ロレッタも少しはランスを信用してやってくれ。私の恩人だ」
「……そうですね」
ロレッタの声は少し不満そうだったが、先程までの敵意は消えていた。
興味津々と尋ねてくるレーヴェンに、俺は過去の人生で得た知識を披露する。
「同じ地域の人々が次々と石化病に感染するのは、空気感染ではなく、主に水が原因なんだ」
「水……?」
「見たところ、この村の水源はあの湖のようだな」
「それが何だと言うのですか」
「村の人々は湖の水を飲料水として、日頃から飲んでいる。違うかい?」
それが何か問題でもあるのかと首をかしげる彼女たちに、俺は石化病の原因について詳しく説明する。
「石化病は、体内に多量の瘴気が取り込まれ、それが細胞を悪性化させる状態を指すんだ」
「細胞が悪性化……?」
レーヴェンは顎を指で触れながら、必死に理解しようとしていた。
「それと湖の水と何の関係があるというのです」
「調べてみないとはっきりしたことは分からないけど、たぶん湖には瘴気を含んだ特殊な鉱石があると思う」
「鉱石……?」
「その鉱石は紫色に輝いていて、長い年月をかけて魔物の糞が固まったものだ。それが人体に害を及ぼす瘴気を含んでいる。つまり、湖の水がその瘴気を含んでいて、それを飲み続けた結果、細胞が悪性化し、石化病が発症する。そして、同じ地域に住む人々がほぼ同時に感染するのもそのせいだ。この誤解から、多くの魔法医学者が空気感染だと考えていたんだ」
説明が終わると、レーヴェンは即座に湖の調査を命じた。
「かしこまりました」
ハーネスはメイドたちを湖に呼び寄せ、素潜りで湖の底を調査し始めた。
「それで、石化病を治す方法はあるのか?」
深刻な表情のレーヴェンに、俺は「もちろんだ!」と答えた。
「体内に取り込んでしまった瘴気を取り除けばいい。そのためには浄化石が必要になる」
「浄化石……そんなもので治るのか?」
浄化石は、魔物が寄りつかないように設置される石で、魔物が放つ瘴気を浄化する効果がある。魔物は自分たちの瘴気が消えることを嫌うため、浄化石は村や街に設置されている。
「ありました!」
湖に潜っていたメイドの一人が、瘴気を含んだ鉱石を発見したようだ。湖の中に大きな塊があることが判明した。
この湖には古代に魔物が住んでいたらしく、その糞が長い年月をかけて瘴気を含んだ鉱石に変化したのだ。
「よし、鉱石をすべて取り除こう」
湖の調査はハーネスたちに任せ、俺たちは再び村に戻ってきた。そして、レーヴェンは大声で村人たちに呼びかけた。
「皆聞くのだ! この者ははランス、お前たちの石化病を治すことができる名医だ!」
「石化病が治るのか?」
「これは死の病なんじゃ?」
最初は疑念が漂っていたが、レーヴェンの情熱的な呼びかけに徐々に村人たちが集まってきた。
「で、そのような浄化石をどうするのです?」
俺は村にある浄化石の一部を砕き、粉末にする作業を行っていた。
「すまないが、誰かムクネ草を持っていたら分けてほしい」
俺の呼びかけに、先ほどの少女がムクネ草を持ってきてくれた。
「ありがとう!」
「……」
恥ずかしそうに頷いた少女が、母親の元に戻っていく。この一連のやり取りを見ていたレーヴェンは優しく微笑んでいた。
「石化病を治すのに、ムクネ草なんて必要なんですか?」
「ムクネ草は吸収を早める効果がある。粉末状にした浄化石を素早く体内に吸収させるためにも、ムクネ草を摂取することは重要なんだ」
俺は出来上がった薬を村人たちに渡した。最初は毒ではないかと疑念を抱いている村人もいたが、
「「「おおおおっ!!」」」
驚きの声が上がった。
率先して薬を飲んでくれた少女の石化が和らいだことを確認すると、警戒心を解いた村人たちも、次々と薬を受け取り、飲み始めた。
「こ、こりゃすげぇ!」
「絶対に治らないと思っていた、石化病の症状が和らいでいくぞ!」
「皇女殿下様が名医を連れて、俺たちを助けにきてくださったんだ!」
村人たちは感謝の意を伝えながら、何度も頭を下げていた。俺は謙遜しつつ、「大したことじゃないよ」と言って、レーヴェンと笑顔を交わした。
かつてどんよりとした村が、今では活気にあふれている様子を見て、俺たちは感慨深い気持ちになる。
きっとこれがこの村の本当の姿なのだろう。
病気は人々から笑顔を奪い、心を閉ざさせることがある。今回の人生でも石化病に苦しむ人々を救えたことで、あの時の俺の苦労も――人生にも意味を見出せたと思う。
ククルたちにも、早く届くといいな。
「あとはこれを一週間程飲み続ければ、体内に取り込んでしまった瘴気は完全に取り除かれるだろう」
「やはり、ランスは私が見込んだ通りの男だ!」
レーヴェンに褒められると、途端に顔が熱くなる。
「ロレッタも少しはランスを信用してやってくれ。私の恩人だ」
「……そうですね」
ロレッタの声は少し不満そうだったが、先程までの敵意は消えていた。
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
追放された悪役令嬢、前世のスマホ知識で通信革命を起こしたら、王国に必須の存在になっていました
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢エリザは、婚約者の第二王子アルフォンスに身に覚えのない罪を着せられ、満座の中で婚約破棄と勘当を言い渡される。全てを奪われ、たった一人で追放されたのは、魔物が跋扈する寂れた辺境の地。
絶望の淵で、彼女の脳裏に蘇ったのは、現代日本で生きていた前世の記憶――人々がガラスの板で遠くの誰かと話す、魔法のような光景だった。
「これなら、私にも作れるかもしれない」
それは、この世界にはまだ存在しない「通信」という概念。魔石と魔術理論を応用し、彼女はたった一人で世界のあり方を変える事業を興すことを決意する。
頑固なドワーフ、陽気な情報屋、そして彼女の可能性を信じた若き辺境伯。新たな仲間と共に、エリザが作り上げた魔導通信端末『エル・ネット』は、辺境の地に革命をもたらし、やがてその評判は王都を、そして国全体を揺るがしていく。
一方、エリザを捨てた王子と異母妹は、彼女の輝かしい成功を耳にし、嫉妬と焦燥に駆られるが……時すでに遅し。
これは、偽りの断罪によって全てを失った令嬢が、その類まれなる知性と不屈の魂で自らの運命を切り拓き、やがて国を救う英雄、そして新時代の女王へと駆け上がっていく、痛快にして感動の逆転譚。
悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~
女譜香あいす
ファンタジー
数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。
聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。
だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。
そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。
これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~
如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる
その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う
稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある
まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが…
だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた…
そんな時に生まれたシャルロッテ
全属性の加護を持つ少女
いったいこれからどうなるのか…
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~
リーフレット
ファンタジー
「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」
帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。
アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。
帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。
死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。
「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる