101回目の人生で、俺が初めて好きになった相手は破滅確定の皇女殿下!?

葉月

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第25話 女遊びの代償

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「(考えろ!  ここから逃げ出す方法を)」

 逃走経路を割り出すため、素早く室内を確認する。

「(どうやら牢屋というわけではなさそうだ)」

 部屋にはベッド、机、そしてハンガーラックにはたくさんのメイド服が掛かっている。

「(ここは……ロレッタの部屋か! でもなんで自室なんだ? ――って、ちょっと!?)」

 油断した一瞬の隙を突かれ、再びメイド長に捕まってしまう。

「(くそっ、離せ!)」

 必死に暴れるが、両脇をしっかりと掴まれている。絶望しか感じない。

 そして、次の瞬間……。

「んんっ」
「(……へ?)」

 突然、メイド長が俺の体に顔を押し付けながら唸り声を出した。予想外の行動に、俺は驚きのあまり硬直してしまう。

「(な、何をしているんだ……?)」

 気が済むまで俺の体をもふったメイド長は、「ゴホンッ」と少し赤らんだ顔で咳払いをした。

「少し、待っていなさい」

 床に俺を置き、いつもの冷静な声で言うと、メイド長は部屋を出て行き、数分後にミルクを持って戻ってきた。

「飲みなさい」
「(…………)」

 まさかとは思うが、ただの猫好きなのか?

「(この人間はいつもにゃたちに食事を運んで来てくれるにゃ)」
「(じゃあさっきのはお前のことかよっ! 紛らわしいんだよ!)」

 貴方なんていうから、てっきりランスのことを言っていると勘違いしてしまった。

「(にしても、メイド長のこんな顔は初めて見るな)」

 俺の頭を優しく撫でてたかと思うと、メイド長は物思いにふけり、ため息をついた。

「ここはすぐに戦場になります。あなたももうここには来てはいけませんよ」
「にゃー」
「ランスもこの周辺を離れた頃ですかね。あのような別れ方になってしまったのは残念ですが、彼のためにはあれで良かったのかもしれませんね」
「……」
「しかし、レーヴェン様を恋愛対象として見るなんて言語道断です。ランスにはきっと、彼にぴったりの素敵な人が見つかるでしょう。わざわざ茨の道を進む必要はありません」

 メイド長の気持ちが嬉しくもあり、寂しくもあった。

「さあ、もうここには来てはいけませんよ」
「……にゃー」

 メイド長に連れ出され、仕方なく噴水の石段に座り込んだ俺は、レーヴェンの部屋をじっと見上げていた。

「(御主人様……)」
「(なんだよ?)」
「(ストーカーって言葉、知ってるかにゃ?)」
「(……契約解除しようかな)」
「(にゃは猫界一のストーキングの腕前にゃ)」
「(馬鹿野郎! 黙ってちゃんと監視していろ!)」

 ったく、こんな性格だとは思わなかった。契約する猫を完全に失敗してしまったようだ。

「テレサもロレッタも、やっぱりいい奴なんだよな」

 彼女たちを助けるためにも、孤軍奮闘しないといけない。
 ブランキーとの精神融合を解除し、暗くなる前に湖にやって来ていた。晩飯を確保するためだ。

「てっとり早く魚でも取るか」

 千里眼で魚を見つけ、無重力魔法を使って魚だけを浮かせていく。同じ方法で薪に使う小枝なども採取する。ベクトルを変更すれば、まるで磁力によって引き寄せられるかのように材料が集まってくる。

「これだけあれば十分だな」

 拠点外で魚を焼いた後、地下の自宅に帰り、食事を済ませる。寝る前にもう一匹の使い魔、クローの状態を確認しておく。




「くそったれぇええええっ!!」

 ――ガシャーン!!

 精神融合した瞬間、怒鳴り声に続いて、何かが壊れたような音が耳を刺す。

「(な、なんだ!?)」

 慌てて状況を確認する。俺は木に隠れ、酒場のような場所を見つめた。店内には酒に酔ったセドリックの姿があり、彼はかなり荒れている様子で、コップを壁にぶつけていた。

「お、お客様困ります!」
「あぁン? 俺は帝国聖騎士団のセェドリック・サンダァースだぞぉおお! ヒィッ、文句あんのか馬鹿野郎っ!」

 店員も客たちも大いに迷惑そうな顔をしていた。からまれる前に退散する客たちにより、店内はあっという間に閑古鳥が鳴く。

「あんた帝国の騎士なのかい? その若さですごいじゃないか。さぞ家柄がいいんだろうね」
「当然だ!」

 すっかり寂しくなった店内で声をかけるのは、20代後半ほどの娼婦らしき女性。

「サンダース家といえば名家だ! 子爵なんだぞ! それなのにっ、それなのにどいつもこいつもこの俺を馬鹿にしやがってぇっ!!」

 セドリックの奴は相当に酔っているようだ。思い出すのは、応接室での彼の発言。

『俺は……レーヴェン殿下から良い返事をもらえなければ帰れないんだ』

 間違いなく、あれが原因だろうと思案する。

「あのクソ女っ! 女の癖に偉そうなんだよ! それにあの小せぇ国の糞王子めっ。なめた態度取りやがってぇっ!」
「そんなことより、どうだい? アタシとアンタでいい事しないかい?」
「まあいい。……ほら、これで足りるだろ」
「お貴族様なのにこれっぽっちかい?」
「色男の俺が見るからに年増のお前を買ってやるんだ。それだけで感謝しやがれっ!」

 セドリックのけちくさい態度に、女性は不満そうな顔を見せた。

「宿に行くぞ」
「あっ、ちょっと、これっぽっちじゃ足りないよ」

 酒場を出て、近くの宿に、セドリックはやや強引に娼婦を連れ込んだ。

「主、どうかしましたか?」
「えっ、な、なにがっ!?」
「急激な心拍数の上昇を確認。かなり動揺しておられるようですが」
「そ、そんなことないよ! ただその……トイレ。そう! 用を足してくるからさ、終わったら呼んでくれる?」
「終ったら……? それはあのオスとメスの交尾が終ったら、そういう意味で良いのでしょうか?」
「う、うん!」
「御意」

 俺はセンシティブな内容になる前に、急いで精神融合を解除する。

「もう、セドリックの奴は下品過ぎるんだよ!」

 俺はソワソワしながら連絡を待った。

「一体、どれくらい時間がかかるものなんだろう?」

 この種の経験が全くなかったので、予測の立てようがない。

「一時間くらいかな?」

 そんな風に考えていたら、

『主、終わりました』
「はやっ!?」

 予想していたよりもずっと早かったことに驚いてしまった。

 あれからまだ5分も経っていないのに、クローからソウルテレパシーによる連絡が入った。
 何かの間違いではないかと思いながら再び精神融合をすると、セドリックがベッドの上で、それも全裸で果てていた。

「あのオス、秒でした」
「……そう」

 聞きたくない報告だった。

 女はシーツをまといながら、とても不満そうな顔で寝ているセドリックを睨みつけている。

「貴族だか何だか知らないけどねっ、なめんじゃないよ!」

 女が部屋の扉を開けると、待ってましたと言わんばかりに、悪漢の男たちがぞろぞろと部屋になだれ込んでくる。

「随分早かったじゃねぇか」
「見ての通り、三擦り半さ」
「ぷっ、ぎゃはははは」

 女の辛辣な言葉に、悪漢たちは笑いを堪えきれない。

「笑ってないで、とっととやっちまっておくれよ」
「ああ、悪りぃ悪りぃ」

 腰から得物を引き抜いた悪漢の男が、全裸で寝ているセドリックへと歩み寄る。
 女遊びの代償は、予想以上に大きいようだ。
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