悪魔と契約した僕は伝説の『ブルオーガ』を右手に宿し、やがて世界最強。

葉月

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第19話 登場、パンティ仙人!?

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 ――バッサバッサ!

 僕が大きな羽音を立てて屋根の上にやって来たというのに、〝剥ぎ取り魔〟のおじいさんはこちらを見ようともせずに戦利品のパンティちゃんを頬でスリスリしている。

「おお~スウィートッ! この色合いは見事じゃの~。こっちのパンティちゃんも実に見事な色合いじゃ」

 僕を無視だとッ!?
 それともパンティに夢中になり過ぎて僕に気づいていないだけか?
 まぁ、気持ちはわからなくもない。

 なぜならおじいさんの傍らには宝石のように輝いた色とりどりのパンティちゃんたちがいるんだ。

 それにしてももの凄い量だな。

 僕はつい興味を駆られておじいさんの戦利品に手を伸ばそうとした、その時!

「うわぁあぁあああああああああッ!?」

 背を向けたままのおじいさんの煙管キセルが顔面にヒットして、僕はそのまま屋根の上から落っことされてしまった。

「いったぁぁああああああッ!?」

 おじいさんは僕を一度も見ていなかったにもかかわらず、的確に僕の顔面を捉えていた。
 それだけではない。

 殺気や僅かな機微を感じることすらできなかった。
 人や獣が何かに敵意を示したり、攻撃する時には必ず僅かだが殺気が込められるもの。

 だが、今のおじいさんからは何も感じられなかった。

 それは達人と言われる者の動きだと瞬時に悟ってしまうほどのものだ。

「なんという無礼者ッ! 儂が一生懸命集めたお宝をネコババしようなど言語道断! 盗人には罰を与えてくれるわッ!」

 自分はお姉さんたちからパンティを剥ぎ取っておきながら、僕がちょっと興味本意でパンティに手を伸ばしただけだというのに、まるで犯罪者を見るような目で僕を射殺すように見てきやがる。

 それに、屋根の上から飛び降りてきたというのに物音一つ聞こえなかった。
 一体何者なんだよ、このおじいさんは……。

 まともにやり合うのは危険……それは〝ホブゴブリン〟ジャミコに似たような者をこのおじいさんからは感じるんだ。
 まっ、そもそも僕にはおじいさんを捕まえる気もなければ、やり合う気など微塵もない。

 しかし、僕の考えとは違い。
 おじいさんは明らかに怒っている。

 仕方ない。
 勿体ないけどあれを使うしかないな。

「申し訳ありません! おじいさんのとても大切なお宝だと気づかずに、触ろうとしたことは謝ります。お詫びと言ってはなんですが……これをお納め下さい!!」

 僕は両膝を突き、憤怒するおじいさんに懐から一冊のスケベ本を取り出して、差し出した。
 すると、おじいさんの動きがピタッと止まる。

 まじまじと僕の差し出したスケベ本を見やり、ガサツに奪い取ると……。

「ふむふむ、小童の割には礼儀を弁えておるようじゃな。よかろう。このスケベ本に免じて今回は大目に見てやるとするかの」

 言いながら、おじいさんはお宝スケベ本をグイグイッと懐に押し込んだ。

「あぁっ!」
「なんじゃ!? まさか今更返せと言う訳ではなかろうなッ!」

 つい……本当につい、情けない声が漏れてしまい、おじいさんがまた睨みを利かせている。

「滅相もございません。おじいさんのような聡明なお方に納めることができ、僕はとても満足しています」
「ふむ。良き心がけじゃな。では、儂はコレクションの整理をせねばならんので行くとする」
「お待ち下さいッ!!」
「ん……? なんじゃ!?」

 背を向けて屋根の上に戻ろうとするおじいさんを、僕は全力で呼び止めた。

「僕は先ほどのおじいさんの凄まじい剥ぎ取りテクに感銘を受けたのです! どうか僕を弟子に……その剥ぎ取りテクを伝授してはいただけないでしょうか?」
「小童が儂の技を会得するなど半世紀早いわッ!」
「そこをどうか……この通りです、お師匠さま!!」

 僕が地面に頭を擦りつけているというのに、おじいさんは無視して屋根の上に戻ってしまった。

「諦めるものかッ!」

 僕もバッサバッサと屋根の上までおじいさんを追いかけた。
 だけど、おじいさんはもう僕のことが見えていないのか、パンティちゃんを選別している。

「極太じゃの! 一体誰がこんなデカパンを穿くのじゃ。いらん!」

 ぽーいっとデカパンを投げ捨てるおじいさん。
 不味いぞ。
 このままおじいさんのパンティ選別が終わってしまえば……おじいさんはきっとどこかに消えてしまう。

 その前になんとしてもあの凄い技を伝授してもらわないと。

「お前さまよ! 大丈夫か?」
「ワタシたち置いて一人で行くのひどいね」

 僕がおじいさんの背中を見つめてどうしようか困っていると、リリスがランランを抱えて飛んできた。

 普段は小さいリリスのコウモリのような翼がとても大きくなっている。

「どこも怪我はしておらんな? 一人で飛び出してはいかんじゃろ」
「リリスの言う通りね! パーティーは常に一緒に行動するものアル」
「おおっ! スウィート!」
「へっ……!?」

 リリスとランランが屋根の上に降り立ち、僕を気遣う言葉をかけてくれると、先ほどまで一切こちらを見ることのなかったおじいさんが瞳を輝かせて歩み寄って来た。

 自ら頭頂部をゴムのように引っ張り、お肌の皺やたるみを一瞬で取り除いた。
 老人とは思えないほどのハリとツヤを作り上げる。
 もはや妖怪だな。

 そのままツヤツヤになった顔でリリスとランランに話しかけている。

「儂はパンティ仙人ことチン・ジャオ・ロース、御年123歳。絶賛恋人募集中じゃ。お姉ちゃんたちおっぱい大きいの! ちとパフパフさせてもらっても良いか?」
「なんじゃ!? この気色の悪い妖怪わッ!」
「圧倒的妖怪仙人ね! 向こう行くよろしい」
「無礼者ッ! お主らはこの小童の連れであろう! 何を隠そうこの儂は小童の師匠なのじゃぞ!」
「へっ……!?」

 あからさまに気持ち悪がるリリスと、手でシッシッと追い払うような仕草を見せるランラン。

 それに対し、おじいさんは先ほどの発言からいっぺん、僕を弟子だと言い張っている。
 なんてスケベなジジイなんだ!

「お前さまよ、この死にぞこないがお前さまの師匠だと吐かしておるぞ」
「ボケ老人も大概にするね。こんな気色の悪い妖怪がタタリのお師匠さまなはずないね」
「嘘などではないわッ! タタリはこのパンティ仙人の愛弟子じゃ。その証拠にほれ、儂のコレクションの一つを愛弟子のタタリにプレゼントじゃ」

 と言いながら、パンティ仙人ことチン・ジャオ。ロース師が僕にパンティを握らせた。
 それを持つ僕の手に思わずギュッと力が入ってしまう。

 クソッ!
 これは捨てる予定だった婆色のデカパンじゃないか!
 愛弟子だと言っておきながらこんなの握らせやがって、それに先ほどと違い親しげにタタリなんて呼びやがって……だが今は我慢だ。

 技を伝授してもらうまではグッとこらえるんだ。

「そ、そうなんですよ。こちらは偉大なるパンティ仙人ことチン・ジャオ・ロースお師匠さまなんですよ」
「ほれ見ろ! わかったらパフパフさせんか」
「な、なにをするのじゃ!?」
「叩き殺してくれるね!」

 お師匠さまは〝ノミ〟のようにリリスとランランの胸を行ったり来たり飛び跳ねている。

 この野郎ッ!
 僕のリリスとランランのマシュマロに勝手に触りやがってッ!
 ぶちのめしてやりたい……だがッ……我慢だタタリくんッ。

「そ、それでお師匠さま! 早速で申し訳ないのですが、先ほどの技を伝授して下さい」
「めんどくさいが仕方ないの~」

 なんて野郎だッ!
 今僕のことを愛弟子だと言ったじゃないかッ!?
 それなのにめんどくさいと溜息を吐きやがった!!

 技を伝授してもらったら憲兵団に突き出してやる。
 今に見てろよ。

「よいかタタリよ。よく見ておくのじゃ」

 お師匠さまが両手を広げて弧を描くように腕を動かしていく。
 すると、なめらかな動きを見せるお師匠さまの腕が残像を残して幾重にも重なって見える。

「なんだこれはッ!?」

 次の瞬間――

「イヤッ! どうなっておるのじゃ!?」
「アイヤー! ワタシのスカートがッ! やめるよ圧倒的ドスケベジジイ!」

 なんとッ!?
 先ほど同様、独りでにリリスとランランのスカートの裾が捲り上げられていく。

 それはまるで透明人間が2人のスカートを引っ張っているようだ。

「一体どうやっているのですか!?」
「な~に、簡単なことじゃ。大気中に霧散する〝マナ〟をコントロールし一点に集結させ、それを手の形に保ち操るだけじゃ。通常人の目には見えぬが、マナを目に集約させることでそれを見ることが可能になる。試しにマナを目に集めお姉ちゃんたちを見てみるんじゃな」

 お師匠さまに言われた通り、僕は両目にマナを集めてリリスとランランを見ると……!?

 リリスとランランのスカートの裾を無数の半透明の腕が掴んでいた。
 まさか……マナにこんな使い方があったなんて知らなかった。

「いいから早うやめさせるのじゃ! 妾たちは穿いておらんのじゃぞ!」
「圧倒的羞恥プレイね!」

 お師匠さまはイヤらしい笑を浮かべながら、疲れ果てて尻餅をついた2人を見て喜んでいる。

「さて、タタリよ。お前にこの〝千手観音〟を会得することは可能かの~」
「〝千手観音〟!?」
「千手観音とは……異国の地で神として奉られている千の手を持つスケベ神のことを言う」
「スケベの神ッ!?」
「その昔、神〝観音〟はハーレムを築きたいと願った。しかしッ! 観音はハーレムを築く途中である重要なことに気がつく」
「重要なことですか?」

 お師匠さまは腰を下ろし、口から煙を吐き出すと煙管をポンッと叩き、灰を捨て話しを続けた。

「ふむ、同時に何人もの娘をイカせることが不可能だということに気づいたんじゃ。そこで観音は願った。もしも千人の女を同時に相手にできる腕が自分にあればと……それが異国の地に伝わるハーレムの神、〝千手観音〟の伝承と云われておる」
「そんな素晴らしい神様がいたんですね!」
「ふむ、儂は若かりし頃に異国の地でこの伝承を聞いた時から、〝千手観音〟に憧れた。そこで儂も千の手を手に入れたいと願い……辛く、険しい修行を続けた。そんなある時、この〝千手観音〟を閃いたというわけじゃな」
「凄い! 本当に凄いですよ、お師匠さまッ!」


 お師匠さまとの出会いで、僕はまた一歩男の中の男に近づけると確信していた。
 同時に何人も相手にする〝千手観音〟……それはまさに僕の理想と呼ぶべき姿だ。


 僕は必ず〝千手観音〟を会得し、築き上げるハーレムのお姉さんたちをみんな幸せにしてみせる。
 誰か一人を幸せにして、誰か一人を不満にさせるなんて男じゃないからね。
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