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モブ令嬢の願い
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「その……貴様が家から追放されたと知ってな。大丈夫か?行く当てはあるのか?」
私を、より一層心配そうに見つめるシュエル。そんな彼は、ゲームの攻略対象。今、彼を頼ってしまえば、彼は時期にソフィアに魅入られ、私を裏切ることになるだろう。
「わ、私は……!!」
何故か私はそう考えてしまい、シュエルを信じたい気持ちと、裏切られたくない気持ちが交差し、私は何とか場をつなげようとした結果、思ってもいないようなことを口にしてしまう。
「私は、あんたなんかに心配される筋合いはない!!」
一度口に出してしまったら止まらなくなってしまい、どんどん口から言葉があふれ出る。
「それに、私はあんたのことなんて、都合のいい駒としか思ってない!!」
違う、こんなことが言いたいわけじゃない。こんなこと、言いたくないのに……!!
「私は、あんたのことなんて、大っ嫌い!!!!」
そこまで言って、シュエルを見ると、シュエルは目を見開き、何も言えない様子でわなわなと震えている。
私は、本当はもう、とっくのとうに限界がきていたのかもしれない。そりゃそうだ。実の親からは自分なんかよりもソフィアを優先させられ、誰一人からも信じてもらえない。それに、私はいまだにレイナが死んだことを受け止め切れていない。もう、私の心は壊れてしまったのかもしれない。そう思うほど、私は今、心にもない言葉をシュエルに言い続けている。
怒って、私を見捨てないで、私を裏切らないで、私を信じて……
「わかったならさっさと私の前からいなくなって!!」
こんなこと、言いたくないのに。本当はもっと、別のことを言いたいのに。どうして、私は素直になれない?私は、シュエルを信じ切れない?
自己嫌悪に陥りそうになりながらも、私の口からは言葉があふれる。なのに、シュエルは何も言わない。私だけが、シュエルに一方的に罵声を浴びせ続ける。こんなの、レイナや私を傷つけた、国民たちからの言葉と同じなのに。私は、自分自身ですら自分を止められなかった。
「なにか、言いなさいよ!!」
少し乱暴な口調になってしまったが、私は今日初めて、シュエルに対して自分が思ったことを口にできたかもしれない。
「じゃあ、なんでヴィルは、泣いているんだ?」
「……え?」
泣く?どうして、私が?
戸惑う私の頬にシュエルは手を伸ばし、涙をぬぐう。
私は本当に、泣いていた。自分では気が付けなかったが、私の目からは大粒の涙があふれ続けていた。
「ヴィル。君はどういう時に、涙を流す?」
「……嬉しい、とき?」
「じゃあ、ヴィルは今、嬉しいかい?」
「……」
嬉しいわけがない。むしろ……
「辛いし、悲しい」
「そうか……じゃあ、どうして今、ヴィルは辛いんだい?悲しいんだい?」
「……思ってもないことを口にしたから。思っていること、伝えたいことを、すべて偽ったから……自分の心を、偽ろうとしたから」
「じゃあ、君は本当は、俺にどうしてほしいんだい?」
ずるいくらいいつもの乱暴な口調とは違い、酷く落ち着いた様子でそう聞くシュエル。そんな彼の質問に、私は正直に答えたいと、そう思った。
「私の、そばにいてほしい。私から、離れないでほしい」
「もちろん。俺は君のそばにいよう。たとえ、君が俺にそばにいてほしいと願わなくなっても、俺は君のそばにいつづけるよ」
そう言って、にっこりと笑うシュエルを見て、私は安心しきってしまい、気を失ってしまったのだ。
私を、より一層心配そうに見つめるシュエル。そんな彼は、ゲームの攻略対象。今、彼を頼ってしまえば、彼は時期にソフィアに魅入られ、私を裏切ることになるだろう。
「わ、私は……!!」
何故か私はそう考えてしまい、シュエルを信じたい気持ちと、裏切られたくない気持ちが交差し、私は何とか場をつなげようとした結果、思ってもいないようなことを口にしてしまう。
「私は、あんたなんかに心配される筋合いはない!!」
一度口に出してしまったら止まらなくなってしまい、どんどん口から言葉があふれ出る。
「それに、私はあんたのことなんて、都合のいい駒としか思ってない!!」
違う、こんなことが言いたいわけじゃない。こんなこと、言いたくないのに……!!
「私は、あんたのことなんて、大っ嫌い!!!!」
そこまで言って、シュエルを見ると、シュエルは目を見開き、何も言えない様子でわなわなと震えている。
私は、本当はもう、とっくのとうに限界がきていたのかもしれない。そりゃそうだ。実の親からは自分なんかよりもソフィアを優先させられ、誰一人からも信じてもらえない。それに、私はいまだにレイナが死んだことを受け止め切れていない。もう、私の心は壊れてしまったのかもしれない。そう思うほど、私は今、心にもない言葉をシュエルに言い続けている。
怒って、私を見捨てないで、私を裏切らないで、私を信じて……
「わかったならさっさと私の前からいなくなって!!」
こんなこと、言いたくないのに。本当はもっと、別のことを言いたいのに。どうして、私は素直になれない?私は、シュエルを信じ切れない?
自己嫌悪に陥りそうになりながらも、私の口からは言葉があふれる。なのに、シュエルは何も言わない。私だけが、シュエルに一方的に罵声を浴びせ続ける。こんなの、レイナや私を傷つけた、国民たちからの言葉と同じなのに。私は、自分自身ですら自分を止められなかった。
「なにか、言いなさいよ!!」
少し乱暴な口調になってしまったが、私は今日初めて、シュエルに対して自分が思ったことを口にできたかもしれない。
「じゃあ、なんでヴィルは、泣いているんだ?」
「……え?」
泣く?どうして、私が?
戸惑う私の頬にシュエルは手を伸ばし、涙をぬぐう。
私は本当に、泣いていた。自分では気が付けなかったが、私の目からは大粒の涙があふれ続けていた。
「ヴィル。君はどういう時に、涙を流す?」
「……嬉しい、とき?」
「じゃあ、ヴィルは今、嬉しいかい?」
「……」
嬉しいわけがない。むしろ……
「辛いし、悲しい」
「そうか……じゃあ、どうして今、ヴィルは辛いんだい?悲しいんだい?」
「……思ってもないことを口にしたから。思っていること、伝えたいことを、すべて偽ったから……自分の心を、偽ろうとしたから」
「じゃあ、君は本当は、俺にどうしてほしいんだい?」
ずるいくらいいつもの乱暴な口調とは違い、酷く落ち着いた様子でそう聞くシュエル。そんな彼の質問に、私は正直に答えたいと、そう思った。
「私の、そばにいてほしい。私から、離れないでほしい」
「もちろん。俺は君のそばにいよう。たとえ、君が俺にそばにいてほしいと願わなくなっても、俺は君のそばにいつづけるよ」
そう言って、にっこりと笑うシュエルを見て、私は安心しきってしまい、気を失ってしまったのだ。
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