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三人目の元婚約者は、隣国の王弟殿下
第51話
しおりを挟む「悪女が再びドルレアンに現れるだなんて、なんて非常識なのかしら」
「自分勝手に婚約破棄をした悪女が、堂々と王宮のパーティーにいるわ。恥知らずね」
ひそひそと悪意が向けられているのは、クリスティーナに対してだ。
今宵は王妃ユメノから招待された、ドルレアン王家主催のパーティー。
クリスティーナは婚約者であるシキをパートナーとして、ドルレアン王宮の大広間に足を踏み入れた。
パーティーの参加者の中で最も地位が高いクリスティーナたちは、最後に入場し、この国の貴族たちの注目を浴びていた。
(ナガトが貼った悪女のレッテルは健在ね)
クリスティーナはシキにエスコートされながら、呆れたように周りの反応を見ていた。
やがて、ドルレアン国王のパーティーの開会宣言が発せられた。
朗々とした声で参加者たちに語りかける国王の隣には、美しく着飾った王妃ユメノがいる。
楽団が演奏する中、ファーストダンスを国王と王妃が踊り、パーティーが本格的に始まった。
「クリスティーナ!」
シキと二人で壁際にたたずんでいると、突然、大きな声で呼ばれた。
声がした方に視線を向けると、クリスティーナは顔が引きつった。
「久しぶりだね。クリスティーナ」
「ナガト……」
王族とわかる煌びやかな衣装に身を包み、威張るかのように胸を張った男が、クリスティーナたちの前に現れた。
ドルレアン国王弟であるナガト・ドルレアンだ。
悪女のレッテルを貼った張本人は、典型的な王族スマイルを振りまいていた。
「元気だったかい? このパーティーに来るなんて、僕のことが相当恋しかったんだね」
「……あなたのことなんて、ここに来るまですっかり忘れていてよ」
「ハハッ、僕の前では素直になっていいんだよ。今日の君の装いはとてもキレイだ。僕のために磨いてくれたんだろう?」
リヒトホーフェン家が総力を挙げたおかげか、クリスティーナの容姿はさらに磨きがかかっている。
帝国の公爵令息であるシキが息を飲んだほど。
クリスティーナが身にまとっているドレスは、バラの花をモチーフとした華やかな赤いドレスだ。差し色になっている婚約者の色である黒が華やかさをさらに引き立てている。
「クリスティーナ、悪女というレッテルを貼られ続けているのも嫌だろう? 僕がそのレッテルを消し去ってあげるよ。さあ、僕の腕につかまって。エスコートしてあげよう」
(頭が痛い。手紙を読んだ時も相当だと思ったけれど、実物を目の前にするとさらに超えてくるわね)
彼の身勝手な発言の数々にクリスティーナは呆れた。
「結構よ。わたくしにはパートナーがいるもの」
「は?」
今まで目に入らなったのか、ナガトがクリスティーナの隣へすすす、と視線を移した。
「ナガト殿下、この度クリスティーナ殿下の婚約者となりました、帝国軍所属シキ・ザートツェントルでございます。以後、お見知りおきを」
ぽかんとしているナガトに向ってにっこりと微笑んだシキは、クリスティーナの腰をぐっと引き寄せた。
シキの端正な顔が間近に迫り、息遣いも感じられる距離だ。
(ち、近い、近いわ!)
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