王宮追放された没落令嬢は、竜神に聖女へ勝手にジョブチェンジさせられました~なぜか再就職先の辺境で、王太子が溺愛してくるんですが!?~

結田龍

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ターゲット、無実の罪で追放だ

第7話

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「殿下、出発します」

「ああ、頼む」


 殿下にさり気なくエスコートされて馬車に乗り込むと、馬車は進みだした。
 檻のような馬車とは全く異なり、揺れが少なく快適に座っていられる上級の馬車だ。
 その上、馬の質も違うのかスピードがぐんぐん上がっていく。
 車窓の外を見てみると、裏街道ではなく、遠くに街の風景も見える表の街道を優雅に走っていた。


「ここまで来たら追っては来ないだろう。安心していいよ」

「あ、ありがとうございます」


 良かった。助かったみたい。
 ほっと安心して全身の力が抜けた。ずっと体がこわばっていたからか、随分と疲労を感じる。
 気を少し緩めたせいか、王太子殿下の存在が急に気になり、そわそわする。
 だって、没落貴族の私が殿下と同じ馬車に乗るなんて、恐れ多すぎる……。

 向かいの席に座っている殿下をちらりと見ると、視線がばちんと合った。
 目を丸くして固まる私とは対照的に、殿下は目を細めてにこにこと微笑んでいた。殿下の微笑は眩しい。
 もしかしてずっと見られていたのかしら。
 は、恥ずかしい……とたんに頬が熱くなった。


「今までゆっくりできなかっただろう? ここでは寛いでほしい。少し時間がかかるからね」

「あの、殿下……この馬車はどちらに向かっているのでしょうか?」


 微笑みに負けてしまいそうなので、視線をそらしながら、気になっていたことを口にした。


「カスタリアだよ、イシュカ」

「カ、カスタリア!?」


 また私は目を丸くして、体が固まってしまった。
 カスタリアといえばこの国の辺境の地のひとつ、デルフィ地方にある街。王都から馬車で何日もかかってしまう地域だ。
 辺境の修道院へ連れていかれる予定だったが、また別の辺境の地へ行くというのか。


「あの、私は辺境の修道院へ行かされると聞いていましたが、別の辺境の修道院へ行くのでしょうか? それとも……」 


 自分の言葉にはっと気がつき、ザアッと青ざめた。
 わざわざ殿下が来たのだ。処罰が重くなったってことなのでは……。


「も、もしや……殿下はさらに厳しい処罰のためにこちらに……」

「違うよ、イシュカ! 俺はそんなことをしに来たんじゃない!」

「え、違うんですか?」


 慌てて弁解をする殿下の姿に我に返った。
 気が遠くなりかけたけれど、そうではないらしい。


「君の処罰は聞いたよ。ただの冤罪だ。代わりに謝らせてくれ。君に申し訳ないことをした。すまない」


 唐突に、真摯な態度で殿下がすっと頭を下げた。


「頭をお上げください、殿下! 殿下の判断ではありませんし、身分の低い私に頭を下げるなど……」


 慌ててすぐに頭を上げてもらった。心臓に悪すぎる。
 でも、まさか王族の方に頭を下げられるなんて。
 殿下は身分の低い者に対して、非を認め謝罪ができる方なのか。
 昨夜の宰相閣下の姿を見ているだけに、正直驚いた。




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