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中編①
しおりを挟む数年ほど前。
マリーが可憐な少女から大人の美しい女性へと変貌しかけようとするそんな時期。
その時を境目に段違いにマリーは、彼女の美貌に惹きつけられた男性から告白を受けるようになった。
だが、大人しい性格だった彼女は母親にどうすればいいのか、告白を受諾するか否か――悩みを相談すると、母親の表情が一瞬曇った。
そして、マリーの頬に手を添えて言った。
「いつのまにか貴方ももうその時期なのね。……断りなさい。そして、しばらくどこか遠くへ旅行にでも行きなさい。店の事は私に任せて」
予想外の母親の返し。
告白を断るのは理解できるにしても、雲隠れまでする必要があるのか。
納得のいかないマリーに、人差し指と中指の二本をマリーの両瞼にかざして母親は詫びるように言った。
「誰も……マリーを愛していないわ。彼らは……その……貴方の魅了に掛かって一時的に錯乱状態に陥っているだけなの……」
魅了? 錯乱?
「わ、私そんな事してない!」
いきなり何を母親は言っているのか。
そもそもマリーは『魅了』を含めて魔術を一切勉強したことがない。
魔術を行使するなど、故意にしたくてもできない。
「――えぇ、勿論よ。マリーはそんな悪い子じゃないわ。これは事故よ。事故。……私も昔はそうだったから、今の貴方の気持ちは痛い程わかるわ。……でも、だからこそ理解しなさい。成人する時期になると、私達はそういう体質になるの。相手が誰であれ、目があってしまえば否応なく好意を抱かせてしまう――そこに自分の意思なんか関係ないわ」
「そ、そんな……。い、嫌……。どうしたら……」
否定したいが、母親の重苦しい口ぶりからして事実なのだろう。
そこに愛はなかった。
偽りの愛。
浮かれていた自分に、伝えられた知りたくなかった事実。
自分には生涯『無償の愛』など注がれないのだろうと考えると、目の前が真っ暗な気分になり、マリーは絶望した。
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