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中編③
しおりを挟む汽車が止まった。
(ついたわ。この村でしばらく私は生活するのね。……顔は隠しておかないと……)
母の二の舞を踏みたくない。
少々、不便な生活にはなると思うが、顔を隠せば、誰も魅了せずにすむ。
マリーは、頭にフードを被ってから、汽車を降りて駅を出た。
――広々とした大地が地平線の彼方まで続き、丘には葡萄畑が広がっている。
ポツポツと真っ白な家が点在して、空を見上げれば青々とした空に雲が浮かんでいた。
「………綺麗な所だわ」
都会にずっと住んでいたマリーにとってはズンと心に重くのしかかっていた気持ちが浄化されていくような――そんな光景だった。
☆★☆
母が紙に書いてくれた場所を目指し、途中何度か道に迷いそうになりながらも、マリーは目的地に何とか辿り着いた。
――村のはずれにある一つの小さな家。
こじんまりとしているが、庭には向日葵の花が植えられいて、他にも部屋の中からオルゴールの音が漏れ聞こえてきて、マリーは洒落た家だなと思いながら、玄関の扉を「ごめんください」と軽くノックをした。
扉はすぐに開き、中からは自分と同じ年くらいの男性ーーロディが出てきた。
中は何個かの小部屋があり、その内の一つだけをロディが使用しているといい、マリーが聞いてもいないのに、父と同じ画家を目指す絵描きであると名乗った。
自分が音に敏感であり、雑音などが万が一にでも耳に入れば絵に集中できないからオルゴールを大音量で鳴らしていることを付け加えて。
また、ロディは事情を知っているようで、「大変だな。…まあ俺のことは気にしなくていいから。邪魔さえしなきゃ何も言わないから。自由に過ごして」と一言だけ同情するような言い方をした。
顔を隠すマリーに、余っている部屋を紹介すると、それ以上深く言及することはせず、すぐに自室に戻った。
正直、ロディのこの態度は人との関わりを極力控えようと考えていたマリーにとってありがたかった。
母が意図していたのかいないのか、それは分からないが幸いにもこの村にはマリーの好きな花が沢山ある。
最初は1日の大半を用意された部屋の中で籠りきっていたマリー。
だが、二、三日もすれば身体がウズウズしだし、庭にある向日葵の世話をすると、ロディに申し出て、彼もコレを二つ返事で承諾した。
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