11 / 21
後編①
しおりを挟むしかしマリーは後に激しく後悔した。
なぜ、あの時ロディの言葉を鵜吞みにして、自らその場に残り続けたのかと。
――それは自分の望まざる力をやっとこの片田舎で得られたと錯覚……いや思い込もうとしたに他ならない。
☆★☆
ロディは徐々に、しかし確実にマリーの持つ魅了の力に取り込まれいき、そして彼女に尽くす、ただ尽くすという事に頭をほぼ完全に支配されてしまった。
おかげで本来の彼であるならば、絶対に手を染めないであろう事にも最初こそ躊躇はあれど、一度決心すると、後は海底に引きずり込まれる様に流されていった。
そしてそれが良かったのか悪かったのか。
彼にはデュークの思惑通り、オリジナルに関しては全く才能の芽すらなかったが、こと贋作を創りあげることにおいては随一のものを持っていた。
最初こそ、不慣れなこともあり四苦八苦していた。
が、デュークがその手の√から入手した技法を伝授するや否や、ロディは寝食問わず練習して、あっという間に吸収し、それを圧倒的……もはや狂気ともよべる集中力で次々に描き上げた。
その出来はどれもこれも文句のつけようがなく、デュークもご満悦で、報酬を支払い、やがてそれは普通の人が十人束になっても生涯稼ぐことのできない程に積み重なった。
誰もが羨む程。
そう、ロディは億万長者になったのだ。
だが、富は手に入れたがその辺りからますます歯車はおかしくなった。
大金を手に入れた。
今まで住んでいた小屋を売り払った。
平均的な貴族では太刀打ちできない程大きく立派な屋敷にマリーと共に移り住んだ。
そして使用人も数名雇い……。
使用人はすべて女性だった。
ここまで広大な屋敷に住むともなれば、何人かは男性の使用人も雇った方が良いという事は、物件購入に関して、右も左も分からないロディの為に、デュークがアドバイスしてくれたのだが、嫌だった。
そもそも本当なら女性だって嫌。
ただ、マリーの事を考えると、最低限何人かは身の回りの世話をしてくれた者が居た方がいいだろうという事で、雇う事にしたのだから。
この辺りで、既にロディは彼の中に渦巻く『得体のしれないモノ』を押さえつけることが出来なくなりつつあった。
そしてついに。
――マリーを部屋から出すな。
基本的にマリーは敷地内にある花の面倒を見るだけで、以前のように人目に触れないように屋敷で過ごしていた。
しかし、それでも偶に外出をしたくなる時が何度かあり、ロディに何も言わず一度遠くの街に遠出をし、帰りが遅くなることがあった。
これがロディの癪に障った。
マリーが帰ってくると、門の前で待ち伏せをしていたロディがマリーを部屋に閉じ込め、先程の命令を屋敷内の物全員に伝達したのだ。
自分の傍にいて欲しい。
自分を愛して欲しい。
どこにも行くな。
ロディは暴走していた。
既にマリーを見る目は単なる同居人でも実姉でも恋人ですらなく――。
――後書き
若干エタっててすいません。
他作品について考えすぎて、放置していましたが書きます。
0
あなたにおすすめの小説
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ウインタータイム ~恋い焦がれて、その後~
さとう涼
恋愛
カレに愛されている間だけ、
自分が特別な存在だと錯覚できる……
◇◇◇
『恋い焦がれて』の4年後のお話(短編)です。
主人公は大学生→社会人となりました!
※先に『恋い焦がれて』をお読みください。
※1話目から『恋い焦がれて』のネタバレになっておりますのでご注意ください!
※女性視点・男性視点の交互に話が進みます
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
王の影姫は真実を言えない
柴田はつみ
恋愛
社交界で“国王の妾”と陰口を叩かれる謎の公爵夫人リュミエール。彼女は王命により、絶世の美貌を誇る英雄アラン公爵の妻となったが、その結婚は「公爵が哀れ」「妻は汚名の女」と同情と嘲笑の的だった。
けれど真実は――リュミエールは国王シオンの“妾”ではなく、異母妹。王家の血筋を巡る闇と政争から守るため、彼女は真実を口にできない。夫アランにさえ、打ち明ければ彼を巻き込んでしまうから。
一方アランもまた、王命と王宮の思惑の中で彼女を守るため、あえて距離を取り冷たく振る舞う。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる