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ソレは死に際の走馬灯。
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小学三年生の頃に余命宣告を受けてから時は流れ、私蝶茶韻理早智は地元県内の名門私立学校、日山泉ヶ原学園に通っていた。
そして今日は高等部の修学旅行、その最終日。私達生徒一行は雲海で有名なF県のE城へとやってきていた。
「これが……香世夜の言ってた……未来……なのかしら……」
その声は、自分さえも聞き逃してしまいそうなほどか細く、頼りなかった。
頭が熱い。体が動かない。ほとんど声も出ていない。助けが呼べない。
だんだんと自分が起きているのかそうでないのか分からなくなってきた。
◇
これは、在りし日の記憶。
私達の学園にはスール制度(二人の生徒が疑似姉妹として過ごす、というもの)があり、私の妹となったのが……。
「よろしくお願いいたします、お姉様。私は中等部一年生、草蒸莉苅菜と申します」
「『くさむしり』? 草刈りしていそうな名前ね」
「でも、漢字で書くと草冠ばかりなんです……。お恥ずかしい……」
「なにも恥じらうことはないわ。私は蝶茶韻理早智。気軽に『さっちゃん』って呼んで頂戴」
「そんな。お姉様をあだ名で呼ぶなんて恐れ多いです」
「じゃあ、気が向いた時でいいわ。ほら、紅茶でも飲んで、親睦を深めましょう?」
「はい、お姉様!」
一人っ子だった私に妹ができた。入学前からこの制度は知っていたが、なんだかむずむずした。でも、嫌じゃなかった。
彼女がが高等部に上がり、起業したいと相談してきた時も、なんとか後押しできないかと必死に言葉を探しながらアドバイスした。
「起業?」
「はい。私は、昔から庭師の方と一緒に庭のお手入れをするのが好きで、庭師さん方の手助けをする製品を作りたいと思っているんです」
「……へぇ、いい夢じゃない」
「……けれど、植物が育つのを助ける製品を作るか、綺麗な庭にするために余計な草を刈る製品を作るかで悩んでいて……」
「……だったら、どっちも作ればいいじゃない。どちらかにしなきゃ、なんてこだわる必要はないと思うわ」
「どっちも……ですか?」
「庭を整えるには、両方の作業が必要なんでしょ? 生やして、刈る。それでいいじゃないの」
「は、はい。そうですねお姉様! いえ……そうっすね、先輩wwwwwww」
「そんな吹っ切れたように突然草を生やさなくてもいいのよ?」
「www」
突然の変わりように私は少しばかり戸惑った。でもそれで、彼女が彼女らしく生きていけるなら、姉として応援するまで。
そして今日は高等部の修学旅行、その最終日。私達生徒一行は雲海で有名なF県のE城へとやってきていた。
「これが……香世夜の言ってた……未来……なのかしら……」
その声は、自分さえも聞き逃してしまいそうなほどか細く、頼りなかった。
頭が熱い。体が動かない。ほとんど声も出ていない。助けが呼べない。
だんだんと自分が起きているのかそうでないのか分からなくなってきた。
◇
これは、在りし日の記憶。
私達の学園にはスール制度(二人の生徒が疑似姉妹として過ごす、というもの)があり、私の妹となったのが……。
「よろしくお願いいたします、お姉様。私は中等部一年生、草蒸莉苅菜と申します」
「『くさむしり』? 草刈りしていそうな名前ね」
「でも、漢字で書くと草冠ばかりなんです……。お恥ずかしい……」
「なにも恥じらうことはないわ。私は蝶茶韻理早智。気軽に『さっちゃん』って呼んで頂戴」
「そんな。お姉様をあだ名で呼ぶなんて恐れ多いです」
「じゃあ、気が向いた時でいいわ。ほら、紅茶でも飲んで、親睦を深めましょう?」
「はい、お姉様!」
一人っ子だった私に妹ができた。入学前からこの制度は知っていたが、なんだかむずむずした。でも、嫌じゃなかった。
彼女がが高等部に上がり、起業したいと相談してきた時も、なんとか後押しできないかと必死に言葉を探しながらアドバイスした。
「起業?」
「はい。私は、昔から庭師の方と一緒に庭のお手入れをするのが好きで、庭師さん方の手助けをする製品を作りたいと思っているんです」
「……へぇ、いい夢じゃない」
「……けれど、植物が育つのを助ける製品を作るか、綺麗な庭にするために余計な草を刈る製品を作るかで悩んでいて……」
「……だったら、どっちも作ればいいじゃない。どちらかにしなきゃ、なんてこだわる必要はないと思うわ」
「どっちも……ですか?」
「庭を整えるには、両方の作業が必要なんでしょ? 生やして、刈る。それでいいじゃないの」
「は、はい。そうですねお姉様! いえ……そうっすね、先輩wwwwwww」
「そんな吹っ切れたように突然草を生やさなくてもいいのよ?」
「www」
突然の変わりように私は少しばかり戸惑った。でもそれで、彼女が彼女らしく生きていけるなら、姉として応援するまで。
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