夫婦×交換(R18)

ももも

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 ある土曜日の11時ごろ、先月結婚式を挙げたばかりの桜井 裕也と香澄は高層マンションの並ぶ住宅街を歩いていた。

「ゆうくん、社長さんのおうちにお呼ばれなんてすごいね」

 香澄は先を歩く裕也を小走りで追いかけると、その腕を掴んで言った。

「うち結構アットホームだから」

 「新しいミールセットの案があって、妻がそれを作ってみるから試食も兼ねて、奥さんと遊びに来ないか」と社長の早瀬に声をかけられたときは裕也も驚いた。

 もともと勤め先の『ホーミィ』は、若い社員が多いこともあって社員同士の距離が近い会社で、家族ぐるみのバーベキューやら忘年会やら、色々なイベントをやっているので、社長の拓真とも気軽に話す機会は多かった。それでも、個人的に自分だけが誘われるというのは初めてだったので、最初は何かしでかしたかと却って不安に思った。

(まあ、でも、スイーツキット始めたの俺だし)

 自分が提案した商品は順調に売り上げを伸ばしていて、今はその部門をまとめるリーダーにも任命された。社長にも直接期待されているのだろうと思い直すと、嬉しくなった。

「社長さんは式に来てくれてたよね! 奥さんはどんな人なの?」

「……何回か、見かけたことあるけど、すごい綺麗な人だったな。デザインかなんかの仕事されてて……、うちのホームページのデザインとか、奥さんがやってるみたいだ」

 裕也は自分の立ち上げたスイーツキット部門の立ち上げパーティーに来ていた拓真の妻、結花子のことを思い浮かべた。背が高く、すらっとしていてモデルのような人だった。

「ふーん」

 香澄は少しむっとしたように頬を膨らませる。

「そしたら、美男美女なんだね! 社長さんも背が高くてかっこよかったもんね」
 
 「そうだな」と裕也は呟いた。裕也も身長はどちらかといえば高いほうだが、拓真はもっと高く、がっしりした身体つきをしている。頼りがいのある感じで、裕也から見ても同じ感想だった。
 
 香澄は「もう」とぼやいてから、続けて聞いた。

「お子さんはいないの?」

「……いないみたいだけど」

 好奇心に満ちた目で聞いてくる妻に、裕也は眉を寄せた。

(どうして女ってこう詮索好きなんだろ……。近所のオバサンかよ)

「お前さ、失礼なこと聞くなよ」

「聞かないよ! 何だと思ってるの」

 香澄は不機嫌そうにそう呟くと、もう一度質問する。

「何でだろう? 30代の終わりくらいでしょ?」

「知らねえよ」

 裕也ははぁ、とため息をついた。

 □

「わぁ! すごいマンションだねぇ」

 一際真新しい建物の前で、香澄ははしゃいだ声を出した。
 エントランスで部屋番号を入れ、通話を押す。
 「上がって来てくれ」と拓真の声が言った。

 緊張しながら扉のブザーをならす。

「桜井くん、休日に済まないね。奥さんもお時間頂いて、ありがとう」
 
 出迎えた拓真は、にこやかに笑った。

「本日はお招き頂いて、ありがとうございます」

「主人がいつもお世話になっています」

 二人はリビングに通されると、思わずため息を吐いた。
 大きい窓からは街の景色が良く見えた。
 広いリビングテーブルの上には、彩の良い料理が並んでいる。

「いらっしゃい、お酒は飲むかしら」

 奥から現れた結花子は、ワインの瓶を片手に微笑んだ。
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