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第3部 呪いの館 それぞれの未来へ
桃の話 3
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夏休み明けの高校生活は一見順調だった。
休み明け、怜が急遽いなくなった事でクラスが騒がしくなったが、1番仲の良かった勇輝と華があまり話題に出さない事で、いつの間にか落ち着いた。
むしろ話題に出ない事が不自然だった。以前より明るくなった華に、勇輝と桃は不安を覚えた。
桃は病室で華から、あの館で怜とお互いの気持ちを伝えあったと聞いていた。なのにいざ戻って来た後、怜はいつの間にかいなくなっていた。それなのに無理して笑う華は、どれだけ無理をしているのか。
◇◇◇
あれから桃と勇輝の関係は以前と変化した。前は友達。そして今は戦友みたいな関係だ。
「華に告白してくる奴らをどうにかしたい」
会って話す事は、ほぼ100%華と怜の事だ。今日も作戦会議で近所のカフェにやってきた。
今日は華にはお互い用事があると言っている。ちなみに今日の議題は、華に寄ってくる男達の対処についてだ。
「いい作戦があるよ!」
桃もノリノリだ。華とは病室で和解してから、数年来の親友のように打ち解けた。そして勇輝への気持ちも一区切りつけた。
なので、今は純粋に友達として接している。
「勇くんが、華ちゃんと付き合ってるって噂を流すの!」
「え!?そんな、嬉しいけど、でも」
慌てふためく勇輝に、桃が諭す。告白される度、きっと華は怜を思い出して心を痛める。それならいっそ、勇輝が防波堤になればいいと言った。
「始めは噂でもこれがキッカケで付き合えるかもよ」
「嬉しいけど、怜に悪いし、あ、でも防波堤か、うん」
挙動不審になりながらも、嬉しそうだ。桃が好きだったこの男は、華と怜が絡むと途端にポンコツになる。
「じゃあ、それでわたしが噂流しとくね」
「あぁ、すまない」
「じゃあ、ここは勇くん奢ってね」
言いながら立ち上がる。奢るのはいいけど、もう行くのか?と聞いてきた。
「この後デートなの」
「バスケ部の先輩だっけ」
「そっちは別れた。今はサッカー部」
「え?また?」
勇輝があんぐりしてる。
勇輝への気持ちに区切りをつけた桃は、恋多き女に変貌した。
もともと可愛くて明るくて、そこそこモテていたが、今は次々と相手を変えている。
「だって、時間は有限でしょ?自分から運命の人探しに行かなきゃ!じゃあね~」
手を振って桃はデート場所へ向かう。そう、失恋の痛みを忘れるには新しい恋が1番。そして勇輝以上に素敵な相手を見つけるのだ。
◇◇◇
幾つもの季節が過ぎ、卒業式の日にとうとう怜が戻って来た。
昔の面影はあるものの、身長は20cmくらい伸びてたし、綺麗で女性的な顔立ちも、美形な男性のそれへと変わっていた。
桃を含め、華と勇輝以外は最初誰かわからなかったくらいだ。
後から華に聞いた話では、あの後怜は1年以上眠り続け、起きたら記憶を失っていたらしい。
しかも昔から持病もあって苦労していたそうだ。何とハードな人生。
実は世話を焼きたがりの華が、そんな怜を放っておける筈がない。再会してから甲斐甲斐しく、怜に構っている。
卒業後、桃は親の反対を押し切って看護学校へ進んだ。親に文句を言わせない為に、バイトで学費も稼いだ。
ちなみに、幼馴染3人は相変わらずだった。
勉強して学力を大幅に上げた華と勇輝が同じ大学に進学した。そしてたまたま怜が進学した大学も同じだった。
3人とも学部は違うが学食などで仲良くつるんでいるらしい。
◇◇◇
「桃、ついたぞ」
勇輝が桃と華に声をかけてきた。
怜も含めて4人で列車から降りた。
降りた先は桃の祖父母の田舎。
卒業後、初めての夏。4人は再びこの地にやってきた。
あの世界で見た彼らの墓参りに来たのだ。
休み明け、怜が急遽いなくなった事でクラスが騒がしくなったが、1番仲の良かった勇輝と華があまり話題に出さない事で、いつの間にか落ち着いた。
むしろ話題に出ない事が不自然だった。以前より明るくなった華に、勇輝と桃は不安を覚えた。
桃は病室で華から、あの館で怜とお互いの気持ちを伝えあったと聞いていた。なのにいざ戻って来た後、怜はいつの間にかいなくなっていた。それなのに無理して笑う華は、どれだけ無理をしているのか。
◇◇◇
あれから桃と勇輝の関係は以前と変化した。前は友達。そして今は戦友みたいな関係だ。
「華に告白してくる奴らをどうにかしたい」
会って話す事は、ほぼ100%華と怜の事だ。今日も作戦会議で近所のカフェにやってきた。
今日は華にはお互い用事があると言っている。ちなみに今日の議題は、華に寄ってくる男達の対処についてだ。
「いい作戦があるよ!」
桃もノリノリだ。華とは病室で和解してから、数年来の親友のように打ち解けた。そして勇輝への気持ちも一区切りつけた。
なので、今は純粋に友達として接している。
「勇くんが、華ちゃんと付き合ってるって噂を流すの!」
「え!?そんな、嬉しいけど、でも」
慌てふためく勇輝に、桃が諭す。告白される度、きっと華は怜を思い出して心を痛める。それならいっそ、勇輝が防波堤になればいいと言った。
「始めは噂でもこれがキッカケで付き合えるかもよ」
「嬉しいけど、怜に悪いし、あ、でも防波堤か、うん」
挙動不審になりながらも、嬉しそうだ。桃が好きだったこの男は、華と怜が絡むと途端にポンコツになる。
「じゃあ、それでわたしが噂流しとくね」
「あぁ、すまない」
「じゃあ、ここは勇くん奢ってね」
言いながら立ち上がる。奢るのはいいけど、もう行くのか?と聞いてきた。
「この後デートなの」
「バスケ部の先輩だっけ」
「そっちは別れた。今はサッカー部」
「え?また?」
勇輝があんぐりしてる。
勇輝への気持ちに区切りをつけた桃は、恋多き女に変貌した。
もともと可愛くて明るくて、そこそこモテていたが、今は次々と相手を変えている。
「だって、時間は有限でしょ?自分から運命の人探しに行かなきゃ!じゃあね~」
手を振って桃はデート場所へ向かう。そう、失恋の痛みを忘れるには新しい恋が1番。そして勇輝以上に素敵な相手を見つけるのだ。
◇◇◇
幾つもの季節が過ぎ、卒業式の日にとうとう怜が戻って来た。
昔の面影はあるものの、身長は20cmくらい伸びてたし、綺麗で女性的な顔立ちも、美形な男性のそれへと変わっていた。
桃を含め、華と勇輝以外は最初誰かわからなかったくらいだ。
後から華に聞いた話では、あの後怜は1年以上眠り続け、起きたら記憶を失っていたらしい。
しかも昔から持病もあって苦労していたそうだ。何とハードな人生。
実は世話を焼きたがりの華が、そんな怜を放っておける筈がない。再会してから甲斐甲斐しく、怜に構っている。
卒業後、桃は親の反対を押し切って看護学校へ進んだ。親に文句を言わせない為に、バイトで学費も稼いだ。
ちなみに、幼馴染3人は相変わらずだった。
勉強して学力を大幅に上げた華と勇輝が同じ大学に進学した。そしてたまたま怜が進学した大学も同じだった。
3人とも学部は違うが学食などで仲良くつるんでいるらしい。
◇◇◇
「桃、ついたぞ」
勇輝が桃と華に声をかけてきた。
怜も含めて4人で列車から降りた。
降りた先は桃の祖父母の田舎。
卒業後、初めての夏。4人は再びこの地にやってきた。
あの世界で見た彼らの墓参りに来たのだ。
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