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4 性格

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 オレの性格の話をしよう。

 元々オレは考え無しで。思った事をバンバン口にしていた。

 でもある時から、それが時に人を傷つけると気づいてから、あまり自分の思った事を口に出来なくなった。

 だから今。

 ずっと会いたかった親友が目の前にいても、なかなか思いを口に出せない。

「身体はもう大丈夫なのか?」

 何て言っていいか分からず、それでもやっと絞り出したのはそんな言葉だった。

 オレの腕にすっぽりハマったコウちゃんが、うんと頷いた。

「手術してちゃんと治ったよ。もう大丈夫」

 そう言ってはにかむ様に笑った。相変わらず可愛くて。胸の奥がギュッと痛くなった。



 せっかく再会したからと、近くのファーストフード店に2人で立ち寄った。

 コウちゃんは全然変わってなかった。

 相変わらず小柄で、相変わらず色白で、相変わらず可愛い。きっと身長は伸びてるけど、それを上回る様にオレが伸びたから。昔より小さく見える。多分言ったら怒るから言わないけど。

「いつここに?」

 確か田舎に引っ越すって言ってたのに。

 コウちゃんの話によると、中学を卒業して、進学と同時にこの辺りに戻って来たらしい。

「そうなんだ。教えてくれたら良かったのに」

 オレの言葉にコウちゃんがちょっと傷ついた表情をした。

「ごめんね。でも、あんな別れ方をしたから…気まずくて」

 気まずそうに顔を伏せる様子を見て、オレはズキズキと胸が痛くなった。

「オレの方こそ、あの時はごめん」

 震えながらチョコレートを手渡してきたコウちゃん。今でも思い出せる。傷つけるつもりなんて無かった。

 いつの間にか。無意識にテーブルの上にあったコウちゃんの手を握っていた。オレの手にすっぽりハマる小さい手。前以上に小さく感じる。

 気のせいか、コウちゃんが赤くなった。

 その時、オレに声をかけてきた奴がいた。



◆◆◆



 僕の性格の話をしよう。

 僕は臆病だ。言いたい事も言えない。人見知りだし、和を乱したくなくて、我慢する事もしょっちゅうだ。

 そんな僕が、中学生の頃、たっくんに告白したのは本当に本当に勇気のいる事だった。

 でも、僕は手術で転校が決まってたし。
 好きって気持ちが大きくなり過ぎて苦しくなってたし。
 たっくんなら、きっと否定はしないと信じていたから。

 だから、あの時のたっくんの言葉は、悲しくて苦しくて、僕はあのまま死んじゃうんじゃないかと思う位、ショックだったんだ。



 だから、たっくんの言葉に僕はまた傷ついた。

「そうなんだ。教えてくれたら良かったのに」

 ファーストフード店で向かいに座ったたっくんがそう言ってきた。

 たっくんにとっては、僕はいまだに友達なんだ。

 でも、僕の中では、たっくんはもう友達じゃない。

 昔、好きだった初恋の人、なのに。

「ごめんね。でも、あんな別れ方をしたから…気まずくて」

 あれから何年も経つけど、いまだに思い出すと苦しくて。たっくんの顔が見れず、僕は顔を伏せた。

「オレの方こそ、あの時はごめん」

 たっくんが僕の手の甲に、自分の手を重ねてきた。

 たっくんの手は大きかった。昔よりずっと。
 それに体温が高い。

 僕の鼓動が早まった。



 その時、女の子の声がした。

「有川くん。塾お疲れ様」

 可愛い女の子だった。親しげにたっくんの腕に触れている。

「何でここに?」
「最近あまり会えなかったでしょ?寂しくて友達とココで待ってたの。一緒に帰ろ?」

 チラッと女の子が僕を見た。まるで品定めするみたいに僕の全身を見て、たっくんに視線を戻した。

 なんか…嫌な感じだ。

「たっくん彼女?待たせたら悪いよ」
「あ、ああ。また今度な」

 たっくんは少し悩んだ表情を見せたけど、結局女の子と帰って行った。

 途中女の子はたっくんと腕を組みながら、一緒に来てたらしい女の子のグループに挨拶して帰って行った。



「…彼女できたんだ」

 当たり前だ。あんなにカッコ良くて。女の子がほっておく筈ない。

 僕も…。あれから、たっくんを忘れようと思って、試しに女の子と付き合ってみた。時には男の子とも。

 でも、ダメだったんだ。

 あの時の、子供の頃の様なワクワクしたり、ドキドキしたりする感情は生まれなかった。

 なのに。

「まだ熱い気がする…」

 たっくんに握られた手が、まだ熱を持ってる気がして。何だかドキドキした。
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