婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林

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第一部 ここって乙女ゲームの世界らしい

18

 今日は厄日かもしれない。

 順調に冒険者デビューしてやがて1年が経とうとする頃。

 何故かオレはジェードと共に孤児院に訪れる事になった。

 月に一回の2人の親睦を深める日に、ジェードが紹介したい場所と紹介したい人がいると誘われたせいだ。

 それがまさか孤児院で。
 迎えの馬車に乗ったら予想外の人物達がいて。こんな事になるなんてー。

 ガタゴトと揺れる馬車の窓から、オレは空を見つめて溜め息を吐いた。

 あぁ…物凄く帰りたい。

 馬車の中では、ジェードを中心に、スペッサとトンガリ君ら男3人が恋バナで盛り上がっていた。

「へー、じゃあジェードは助けてもらったのがキッカケでその子を好きになったの?」
「うん。それだけじゃないんだ。同じ歳なのに、その子は考え方もしっかりしてて。その子といると、自分がどれだけ小さい世界で生きてたのかって思い知らされるんだ」
「あぁ。それなら俺も分かる。今までの狭い視野を壊された時の衝撃は俺も忘れられない…」

 そう言ってトンガリ君は、鋭い赤い目を優しく細め、オレを見つめて来た。いたたまれない。

 前の誕生日パーティーでの一件で、さすがにトンガリ君とスペッサが、オレを、正確にはヴィラトリアを好きなのは分かった。

「……トンガリ君、そんなに見られたら照れますの」

 トンガリ君も、とうとう好意を隠さなくなってきた。そのストレートな好意に思わず頬が熱くなる。

「そんな顔も可愛い」
「…っ」

 そのやりとりを見たスペッサが頬を膨らませて、不満を漏らす。

「ちょっとトンガリ君、ジェードが婚約解消したらボクがヴィラの新しい婚約者になるんだからね」
「何故だ。俺かもしれないぞ」

 相変わらず2人は犬猿の仲…でも今なら分かるよ。きっと前からオレを取り合ってたんだ…なんか、恥ずかしい。

 そんなオレ達を、ジェードがニコニコしながら見てる。

「良かった。これなら、僕が君と婚約解消しても大丈夫そうだね」

 オレの為に、ジェードはトルマリン家を出禁になってた彼らとわざわざコンタクトをとってくれたらしい。

 そして。自分には好きな人がいるから、いずれは婚約解消しようと思ってるから、ヴィラトリア嬢を頼むとお願いしてくれたんだそうだ。

 一難去って、また一難。

 婚約破棄したら、国外逃亡しよう…。
 オレは固く心に誓った。



 やがて、馬車が孤児院に着いた。

 ジェードがポケットから親指サイズ位の小さな黒いガラス玉を取り出した。それを握って、ジェードが目を閉じると、みるみる内に美しい金髪が平凡な茶髪になった。瞼を開いた目も緑から茶色に変化してる。

「すごいですの!何ですのそれ?」
「魔法を封じ込めるガラス玉だよ」

 ジェードが透明になったガラス玉を見せてくれた。それに事前に魔法を封じ込めれば、自分が使えない属性も持ち歩けるそうだ。

「ふわぁ…そんな便利な物があるんですのね」
「ヴィラ!欲しいなら、今度ボクがプレゼントするよ」
「スペッサ…いいんですの?」
「勿論!ちゃんとヴィラの属性分プレゼントするからね」

 属性分!めちゃ嬉しい!
 思わずキラキラした目でスペッサを見ると、スペッサがへへと嬉しそうに笑った。

「じゃあ行こうか。ここにいる間は僕の事はリッチって呼んでね」

 そうして、オレ達はリッチに変身したジェードに続いて孤児院へ向かった。
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