婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林

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第三部 乙女ゲーム?高等部編

11

「昼飯どうする?」
「オレ、ちょっと食欲ない」
「そっか、じゃあ、オレ食ってきていい?」

 ラナを見送ってから、オレは1人警備室で仕事を続けた。

 裏門をチェックしながらも、さっきのスペッサの事を考えていた。

 オレはあくまで乙女ゲームのシナリオに沿って、自分が悪役令嬢になって婚約破棄をすればいいと思っていた。

 でも、妹の夢を見なくなってから、ここは現実の世界で。オレやこの世界のみんなは、現実を生きてるんだって、実感する様になって。

 ただ、必死だった。自分が生き残る為に。

 あのまま、令嬢として過ごしていたら、いつか絶対に男だとバレていた。もしかしたら殺されずに済む方法があったかもしれないけど、何かしらの罰は受けなければいけなかったと思う。

 それが怖くて。逃げた。

 残された人達の事も考えずに。

 ジェードとネフリティスはずっとオレを探して。

 スペッサは、側近になると言っていた王子や、友人だったジェードを恨んで。

 シレネは、いまだに能力がうまく開花してない。

 …トンガリ君や、ライバンはどうなったんだろう?

 ヴィラの事を大切にしてくれていた2人は、やっぱりスペッサと同じ様に、誰かを恨んでるの?

「リア、どうしたの?」

 ふいに声をかけられて、顔を上げると、いつの間かジェードが側に立っていた。

「どうして、ここに?」
「さっき学食でラナに会って。リアの食欲が無いって聞いたから」

 そっと、ジェードはオレのおでこに手を添えて、熱は無いな、と呟いてる。

 その姿が、少しずつ滲んでいく。

「何で泣いてるの?」
「ジェード…ごめんな」

 あの時、婚約破棄したのはオレの我儘なのに。
 きっと、あの後、みんなに責められた筈だ。

 スペッサみたいに、恨みを買ったやつもいるかもしれない。

「何で、謝るの?」

 少し屈んで、オレに目線を合わせてくる。
 昔から変わらない、美しい緑の瞳がオレを見つめてる。

 全部、言ってしまいたい。
 オレがヴィラトリアだって。

 生きてるって。

 そして、謝りたい。
 迷惑をかけたって。

 でも。

 言える訳ない。

 だからせめて。リアとしては誠実でありたい。

「…あの時、黙って出てって悪かったな」
「……」
「怖かったんだ。リッチに引き止められたら、迷ってしまいそうで」
「…っ。じゃあ、僕が行かないでって言ったら、やめてくれてた?」
「……あの時、オレは事情があってどうしても旅に出ないといけなかったんだ」

 ジェードが必死にオレの顔を覗き込む。

「事情て何?旅に出ないといけなかった理由って」
「ごめん、それは言えない」

 暫く無言でオレの表情を見て。何かを覚悟した様に、ジェードが尋ねてきた。その声は微かに震えていた。

「もう、どこにも行かない?」
「…………約束は、出来ない」

 嘘は吐きたく無かった。

 情報収集できたら、オレは隣国に戻る。そしたら、もうこの国に戻るつもりは無い。

 オレの言葉や雰囲気から何かを察したのか。ジェードは、もうそれ以上は何も言わず帰って行った。

 ラナが戻って来てから、再び交代で見張りと剣の稽古を行う。午前中より集中したせいか、日が暮れるのはあっという間だった。
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