婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林

文字の大きさ
51 / 75
第三部 乙女ゲーム?高等部編

18

 気づいたら朝だった。

 ベッドにジェードと2人。互いの制服のまま、一緒に横になってた。

 魔力が戻って来たのか。身体は普通に動く様になったけど。まだ疲労感は伴った。

 側に寝るジェードは、目元はもう腫れがひいていた。ホッとしてジェードの目元に触れる。コイツの泣き顔はもう見たく無い。

 昨日は、互いを慰め合う様にキスし合って、そのまま抱き合いながら眠った。ただ、それだけだ。

 なのに、オレの気持ちは不思議なほど満たされていた。

 不意に、オレの手をギュッと握る手があった。

 見ればジェードの目元に触れていた手を、目を覚ました彼に握られていた。

「リア、おはよう」
「ん、おはよ」

 昨日カーテンを閉め忘れたせいで、朝の光に照らされて微笑むジェードは、とてもキレイでカッコ良い。

 そんなジェードが、ちょっと眩しそうに表情を歪めた。

「眩しい?」
「うん、リアが綺麗過ぎて」
「…は?」

 ポカンとするオレの腕をジェードが引っ張って、ブランケットの中に引きずり込んだ。

 抱きしめられて、そしてー。

「ん…」

 昨日みたく、優しく口づけてくる。

 壊れ物を扱うような、優しいキスに、また溺れそうになる。

「待って、オレ、仕事」
「まだ、もう少し時間があるよ」

 耳元で囁かれると、全身から力が抜けてしまいそうで、必死にオレは抵抗する。

「風呂も入りたいから、これ以上はヤダ」
「…じゃあ、一緒に入ろう」
「え?一緒?」

 唖然としてる間にジェードがオレを横抱きにして、さっさと歩き出す。出入り用のドア以外にも2つドアがあったけど。その内の1つが風呂場だったみたいだ。

「ひ、広い!」

 ジェードが連れてってくれた風呂場は、5、6人は余裕で入れそうな広さで、何よりも豪華な湯船が設置されていた。

「ゆ、湯船…!」

 この世界に生まれて入ったのは、本宅でお風呂に入れられたほんの数回だけだ。

「お風呂好きなの?」
「好き!大好き!久しぶりに入りたい!」

 ジェードが風呂場に置かれていたガラス玉に手を触れると、湯船はすぐに水が満タンになった。

「あとは、火魔法で熱をー」
「オレやる!オレやる!」

 これだけ大量の水を温めるのは至難の技だ。普段やらない詠唱を使って、オレは湯船の水に熱を送って何とか温めた。

 それだけで、もうオレはグッタリだ。

「リア、大丈夫?」
「ん。オレ属性は多いけど、魔力量が乏しいんだ」
「無理しなくて良かったのに」

 風呂用に火魔法のストックは準備してたよ、と笑いながらオレを一旦部屋へ連れて行く。

 そしてー。

「何で服脱がすんだよ!」
「だって風呂に入るなら脱がないとでしょ?」

 ジェードが楽しそうにオレの詰襟ボタンをどんどん外していく。抵抗するけど、さっきの火魔法のせいで力が入らず、簡単に制服と中のシャツのボタンを開けられてしまった。

 その拍子に、はだけたオレの胸元から黒い石のついたペンダントが晒されていた。パッとそれを掴んでオレは身を捩らせた。

 バカ。オレ、何絆されてるんだ。これ以上踏み込まれたらきっとボロが出る。

「もう風呂はいい。帰る」
「リア…?」
「どけよ」

 ジェードを押し除けて立ちあがろうとするオレを見て、ジェードが先に立ち上がった。

「ごめん、悪ふざけが過ぎたよ。僕はネフに君の体調報告してくるから、ゆっくり入って」

 そう言ってジェードは部屋を出て行った。

 どうしようか一瞬迷う。でも、念の為確認したい事もあって。オレは素直に風呂場に入った。

 服を脱いで全裸になって、全身鏡の前に立つ。黒い髪と目。胸元に黒いペンダントをした男が映っていた。

 冒険者にしては、細めのしなやかな身体。腹部分に、昔ネフリティスを庇った時に負った傷跡が目立つ。

 オレは闇属性のペンダントを外した。途端、髪は美しく艶やかな銀髪。瞳は紫に変わった。そして、胸元に銀のネックレスが現れた。

 ちゃんとネックレスがある事に安堵して、それに清浄と保存の魔法をかけ直した。

 お母様がオレが家を出る最後の日に贈ってくれた物だ。
 
 お母様が男爵家を出る時に、お祖父様からプレゼントされた男爵家の紋章入りのネックレス。いつかオレに何かあった時に、男爵家を頼れる様と渡された物だ。

 オレが闇魔法のペンダントをしている1番の理由は、これを隠したいからだ。

 だからー。

「今まで…他人を避けてたのにな」

 これまで人肌が恋しいと思った事も勿論ある。だけど、誰かと肌が触れ合う関係になった時。もし何かの拍子でオレの正体がバレてしまったら。

 そう思うと誰かと深い関係なんて作れなかった。

 だって、オレだけじゃなくて、お母様にも被害が及ぶからー。

 ずっと気をつけてたのに。アイツはいとも簡単に、オレと距離を縮めてきた。思わず、もっと触れたいと思ってしまう位に。

 アイツは危険だ。

「早くこの国を出なきゃ。そして、もう会わない」

 改めて決意する。

 なのに。

 鏡に映ったオレは泣きそうな顔をしていた。
感想 40

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。