婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林

文字の大きさ
65 / 75
最終章 いつの間かBLの世界だってさ

しおりを挟む
 戦いは人間側が優勢だった。

 旧校舎側から複数の獣が集まってから倒し、その後また数が一定になるまで休息する。それを繰り返した。

 戦いが始まってすでに数刻。

 まだ聖職者達が集う様子は無い。彼らが到着すれば共に森へ進行する予定だ。

 何度か前線に立ったオレは、ラナと共に回復薬を飲みながら休んでいた。

 そこにライバンとギルド長がやって来た。

「皆よくやってくれた!次は騎士団が出るから暫く休んでていいぞ。報酬も割り増しだそうだ!」

 ギルド長の言葉にみんなから歓声が上がる。
 何が嬉しいって? そりゃ金でしょ!

 オレも嬉しくてホクホクしていると、何人かの冒険者達が近寄って来た。

「リア坊~。臨時収入でオレと一晩どうだ?」
「はあ!?」
「いつも帽子被ってたから知らなかったけど、こんな可愛い顔してるなんてな~」

 いつの間にか屈強な男達に囲まれている。怖くは無いけどむさ苦しい!

 おい、ラナ助けろ!と叫ぶ前に。オレは誰かに腕を掴まれて、囲いから抜け出していた。

 オレを掴む逞しい腕が見えて。視線を上に向けると、澄んだ水色の瞳とぶつかった。ライバンだった。

「大丈夫か?」
「あ、ありがとう、ございます」
「……そろそろシレネが来るかもしれん。ついて来い」
「は、はい。おいラナ!お前も来い」

 オレとラナはライバンの後に続いた。



 着いたのは騎士調査団が拠点にしてる場所だった。すぐ側にあった魔術師団の拠点にいたスペッサが、オレを見ると険しい顔をして近寄って来た。

「ライバン兄様!何でコイツがここにいるの!?」
「シレネと会わせる約束をした。もうすぐ到着するからここで待機させる」
「な、なんで!?」

 スペッサが驚愕して、オレを睨みつけた。

「今度はライバン兄様まで!何で!?どうやってたらし込んだのさ!」
「わ、くるし…」

 スペッサがオレの襟首を掴んで締め上げる。背はオレの方が高いのに、怒りのせいか容赦ない力だった。

「やめてください!」
「スペッサやめろ!」

 ラナとライバンが慌てて引き離してくれた。オレは首を絞められた影響で咳き込んだ。

「何で?何でライバン兄様までソイツ庇うの?ソイツはー」

 スペッサは全部の言葉を言えなかった。途中で、地鳴りが聞こえて足元が激しく揺れ出したからだ。

 まるで地を割って、何かが出て来る様な、地響きがした。オレ達も地面の激しい揺れに立っていられなくて、座り込む。

 揺れが収まった時、誰かが叫んだ。

「おい、何だあれ!」

 騎士の1人が指差した方向を見ると、暗闇の中にぼんやり浮かび上がる何かが見えた。

 そいつは森の中に鎮座する大きな何かだった。



 すぐにそれを調査、という訳にはいかなかった。

 空から陸から、凶暴化した生き物が次々と森から出て来たからだ。

 怪しい地響きがして、怪しい何かが現れて数時間後。気づけば、冒険者、騎士、魔術師関係なく全員総力戦になっていた。

「シレネはまだですか!」
「日の出には到着する筈だ!」

 ライバンの声に空を見る。いつの間にか、空は少しずつ明るくなって来た。

 各地から聖職者達も到着しているが、ほんの少し獣が弱くなる程度でほとんど役に立たない。きっとあのデカいヤツが悪しきエネルギーを放出してるんだ。

 幸いまだ死者はいないみたいだが、怪我人はチラホラ出て来ている。気力や体力が続くとも思えない。学生達のほとんどは既に避難させられている筈なのに…。

 そんな中、信じられない姿を見つけた。

「ロード様、スペッサ様!何でまだいるんですか!」

 戦ってるメンバーの中にまだ学生の2人を見つけた。慌てて駆け寄る。

「俺達は臨時でも調査団だからな。必要なら残る」
「…ほっといてよ。僕、君のこと嫌いなんだ」

 …スペッサには相当嫌われたみたいだ。

 代わりにライバンが2人に声をかける。

「ロード、スペッサ。お前達も避難しろ」
「しかし…!」
「ライバン兄様、何で? ライバン兄様もその子がいいの?何で僕じゃダメなの?」
「…スペッサは何を言ってるんだ?」

 ライバンが来て余計にこじれた。

 もうほっておこう、とオレはラナを誘って場所を移動する。こんなクソ忙しい時に構ってられるか!

 そろそろ完全に夜が明ける。その時に、正門側から声が聞こえてた。

「聖なる乙女が到着したぞ!」
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

悪役令息の僕とツレない従者の、愛しい世界の歩き方

ばつ森⚡️8/22新刊
BL
【だって、だって、ずぎだっだんだよおおおおおお】 公爵令息のエマニュエルは、異世界から現れた『神子』であるマシロと恋仲になった第一王子・アルフレッドから『婚約破棄』を言い渡されてしまった。冷酷に伝えられた沙汰は、まさかの『身ぐるみはがれて国外追放』!?「今の今まで貴族だった僕が、一人で生きて行かれるわけがない!」だけど、エマニュエルには、頼りになる従者・ケイトがいて、二人の国外追放生活がはじまる。二人の旅は楽しく、おだやかで、順調に見えたけど、背後には、再び、神子たちの手がせまっていた。 「してみてもいいですか、――『恋人の好き』」 世界を旅する二人の恋。そして驚愕の結末へ!!! 【謎多き従者×憎めない悪役】 4/16 続編『リスティアーナ女王国編』完結しました。 原題:転んだ悪役令息の僕と、走る従者の冒険のはなし

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)

ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。 僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。 隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。 僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。 でも、実はこれには訳がある。 知らないのは、アイルだけ………。 さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

処理中です...