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第三章 空を舞う赤、狂いて
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4人は太い蔦でグルグル巻きにされた長の前に並んだ。
今だに他の魔鳥達はポヨンポヨンと辺りをとび跳ねていたが、長が元に戻れば同じく元に戻るからと放置された。
「悪男大丈夫か?」
「あぁ、背中を刺されたけど死ぬ程じゃない」
悪男は背中を刺されたらしく、空に横抱きにされたままだ。顔色はあまり良くないが受け答えは問題なさそうだった。
「セーヤがキスすれば良くなるぞ」
「はぁ!?」
「はあ!?」
「チュー?」
空の言葉に、太陽、悪男、ショーキが声を上げる。
「何だ今さら。セーヤの体液は治癒の力があるだろう」
「いや、知らないし!初めて聞いたし!」
浄化だけじゃないの?治癒って何!
俺の身体はどうなってるわけ!?
「そ、そ、それにキスなんて、友達同士で俺無理だし!…ルースさん?」
いつの間かルースが太陽の手を取っていた。その手を、大きめの木のコップに入れられた。中は水だった様で、チャプチャプとコップ内で手を洗われた。
お陰で手の土埃と、かすり傷の血跡が綺麗になった。
「そのコップ…」
どうするの?、と聞く前にルースがスタスタと拘束された長の元に歩いて行く。
いきなり嘴をガバァと開けると、コップの水を流し込んだ。
ゴクゴクゴクゴク
大人しく飲ませる事に成功した様だ。
ルースが戻ってきて、全員が隠れる程度にあの透明な壁を作る。
グルグル グルグル
何だか変な音が辺りに響いた。その後、ゴフッゴフッと長が咳き込み、その嘴から黒い液体を勢い良く吐き出した。
「気持ぢ悪い…」
「セーヤ見ていて気持ちの良いものじゃないだろ?コッチにおいで」
「オェー」
「ショーキ吐くな!」
「まぁルースのした事は間違ってない。セーヤの血を飲んだんだ。強制的に瘴気が排出されるだろう」
リバースしそうな太陽はルースの胸に顔を埋めた。ルースが優しく抱きしめてくれる。
その向こうで、オェー!我慢しろ!とショーキと悪男の声が聞こえたが無視した。
空は楽しそうに、まだ吐くのか!大量だな!と笑っていた。
時間にして10分程度だろうか。
暫くすると、辺りが静かになり、赤と紫の光が見えた。恐る恐る長を見ると、そこには1人の若い女性が倒れていた。
「姉ちゃん!」
悪男が空の腕から抜け出そうともがく。それを見て空が悪男を抱いたまま女性の元へ向かった。
太陽もそれを見て、ルースと共に歩み寄る。
「姉ちゃん!起きて!大丈夫か?」
「ん~ワルオリ…?」
女性が頭を抑えながら身を起こした。
赤く長い髪に、悪男同様に美しい翼を持った女性だった。
悪男に向けて開かれた眼は、悪男の左目と同じ澄んだ綺麗な赤だった。顔立ちも良く似ていた。
「ワルオリ…あんた…ソイツは誰だい?」
警戒した様に空を睨む。女性は少し後ずさった。
「姉ちゃん!コイツらは敵じゃない!コイツらが闇堕ちした姉ちゃんを助けてくれたんだ!」
「何だって?」
女性が眉を顰める。
「そのいでたちは、東の者だね。西を嫌っていた筈なのに、どうして…」
「オレの主が望んだからだ」
「主?」
空の視線を辿って、女性が太陽とルースに視線を向けた。2人を見てハッとする。
「その緑の髪と目。南の者だね。それに黒い髪と目…北の者?いや違う…」
女性がゴニョゴニョ何か呟く。
悪男が、あーまた姉ちゃんの病気が始まった~とため息を吐いた。
病気?それを尋ねる前に、女性がバッと顔を上げて勢い良く言い放った。
「まぁ、そんな事はどうでもいい!あんたら良い男だね!アタイの婿になりな!」
…………。
え?婿!?
今だに他の魔鳥達はポヨンポヨンと辺りをとび跳ねていたが、長が元に戻れば同じく元に戻るからと放置された。
「悪男大丈夫か?」
「あぁ、背中を刺されたけど死ぬ程じゃない」
悪男は背中を刺されたらしく、空に横抱きにされたままだ。顔色はあまり良くないが受け答えは問題なさそうだった。
「セーヤがキスすれば良くなるぞ」
「はぁ!?」
「はあ!?」
「チュー?」
空の言葉に、太陽、悪男、ショーキが声を上げる。
「何だ今さら。セーヤの体液は治癒の力があるだろう」
「いや、知らないし!初めて聞いたし!」
浄化だけじゃないの?治癒って何!
俺の身体はどうなってるわけ!?
「そ、そ、それにキスなんて、友達同士で俺無理だし!…ルースさん?」
いつの間かルースが太陽の手を取っていた。その手を、大きめの木のコップに入れられた。中は水だった様で、チャプチャプとコップ内で手を洗われた。
お陰で手の土埃と、かすり傷の血跡が綺麗になった。
「そのコップ…」
どうするの?、と聞く前にルースがスタスタと拘束された長の元に歩いて行く。
いきなり嘴をガバァと開けると、コップの水を流し込んだ。
ゴクゴクゴクゴク
大人しく飲ませる事に成功した様だ。
ルースが戻ってきて、全員が隠れる程度にあの透明な壁を作る。
グルグル グルグル
何だか変な音が辺りに響いた。その後、ゴフッゴフッと長が咳き込み、その嘴から黒い液体を勢い良く吐き出した。
「気持ぢ悪い…」
「セーヤ見ていて気持ちの良いものじゃないだろ?コッチにおいで」
「オェー」
「ショーキ吐くな!」
「まぁルースのした事は間違ってない。セーヤの血を飲んだんだ。強制的に瘴気が排出されるだろう」
リバースしそうな太陽はルースの胸に顔を埋めた。ルースが優しく抱きしめてくれる。
その向こうで、オェー!我慢しろ!とショーキと悪男の声が聞こえたが無視した。
空は楽しそうに、まだ吐くのか!大量だな!と笑っていた。
時間にして10分程度だろうか。
暫くすると、辺りが静かになり、赤と紫の光が見えた。恐る恐る長を見ると、そこには1人の若い女性が倒れていた。
「姉ちゃん!」
悪男が空の腕から抜け出そうともがく。それを見て空が悪男を抱いたまま女性の元へ向かった。
太陽もそれを見て、ルースと共に歩み寄る。
「姉ちゃん!起きて!大丈夫か?」
「ん~ワルオリ…?」
女性が頭を抑えながら身を起こした。
赤く長い髪に、悪男同様に美しい翼を持った女性だった。
悪男に向けて開かれた眼は、悪男の左目と同じ澄んだ綺麗な赤だった。顔立ちも良く似ていた。
「ワルオリ…あんた…ソイツは誰だい?」
警戒した様に空を睨む。女性は少し後ずさった。
「姉ちゃん!コイツらは敵じゃない!コイツらが闇堕ちした姉ちゃんを助けてくれたんだ!」
「何だって?」
女性が眉を顰める。
「そのいでたちは、東の者だね。西を嫌っていた筈なのに、どうして…」
「オレの主が望んだからだ」
「主?」
空の視線を辿って、女性が太陽とルースに視線を向けた。2人を見てハッとする。
「その緑の髪と目。南の者だね。それに黒い髪と目…北の者?いや違う…」
女性がゴニョゴニョ何か呟く。
悪男が、あーまた姉ちゃんの病気が始まった~とため息を吐いた。
病気?それを尋ねる前に、女性がバッと顔を上げて勢い良く言い放った。
「まぁ、そんな事はどうでもいい!あんたら良い男だね!アタイの婿になりな!」
…………。
え?婿!?
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