【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

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第一章 フォレスター編

嫁に出すってこういう気持ち(sideイグニス)

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今日、アルカスが嫁に行った。いや、家にいるけども。

他所の男に嫁いだ。いや昔から知っている野郎だけども!

生まれて間もない三男を20年弱捜し続けてつい先月、やっとこの手に戻ってきた。

どれ程の歓喜だったか。今日この日までに見つからなければ諦めよう、亡くなった事にしよう、と泣く泣く決断したあの日が懐かしく感じられる。

それ程喜ばしかったのに、私の今の肩書きがアルカスを可愛がることの邪魔をする。
役職のために王都住まい。滅多に領地には帰れぬ。
やっと再会した我が子の元にほんの数日しか居られないとは!
その上、魔力枯渇で倒れ、ほとんどを眠って過ごし。
私と過ごした時間はほんのわずか。クレインとマールも同様だ。

本当は嫁になどやりたくない!
だが色々な柵とアルカスの幸せを思えばと断腸の思いで婚姻を認めたのだ。

王や王太子がアルカスを利用することはないと信じたいが、臣下の貴族達にせっつかれればどう転ぶか分からん。
そうなったらたとえ王家を裏切ってでもアルカスを護る所存だが。

外堀を埋めて護りを強固なモノに。

フォレスター家の総意だ。



自分の誕生日を知らなかったアルカスは、驚きと感激でぽろぽろ涙を零してお礼を言っていた。

邸中の者が今一度決意した。

絶対にアルカスを護ると。

ところでアルカス、初めて飲むというお酒は大丈夫だろうか?
顔が赤いぞ。ふらふらしてるぞ。
お前は酔うと陽気になるタイプか?

父さん、心配だよ。



そしてお開きになり、アルカスはクラビスに抱っこされて部屋へと帰って行った。

ーーー今夜は初夜か!!

ハッとした俺に気付いたグラキスがジト目で見てきた。
「分かっていると思うが、邪魔をするんでないよ?」
「・・・ハハ、しないよ。ソンナコト」
思わず片言になる。

「そうだよなあ? 馬に蹴られたくないよな? 前に言ってたもんなあ。若気の至りってヤツ。クラビスはそれすら耐えていたんだから、やっと嫁になったのに我慢させらんないよな」
グラキスの言葉遣いが崩れてる。これは怒って苛ついてる証拠だ。

ヤバい。死ぬ。(物理的に)

「分かったらとっとと俺らも部屋へ戻るぞ!」

引きずられるように連れて行かれて、もう無理ってほどグラキスに絞り採られた。

・・・ナニって聞かないで。



翌日(いやもう今日になってた)起きて食堂に来た。
使用人達はスッキリツヤツヤのグラキスとげっそりした俺を見て察したようだ。さり気なく目を逸らす。

アルカスとクラビスはさすがに降りて来ない。クラビスはともかくアルカスはあの細さだ。体力が保たんだろう。
アルカスが心配だが、今日は王都に戻らねば。

クレインとマールも2人に当てられたのか、昨夜はお盛んだったようだな。2人とも肌つやがいい。
仲がいいのはいいことだ。

ともかく、我らは王都に戻った。

一応今日までは休暇扱いだが、王には報告せねばなるまい。



身支度を整え、王へ謁見を申し込むと直ぐさま許可が下りた。
おい、早いな。
さては予定を空けておいたな?

・・・仕方ない。前々からアルカスとの謁見を打診していたからな。
今回、誕生日祝いでの休暇申請だったから、そろそろ回復してきて王都に来られるだろうと言われたしな・・・。

一度連れて来るしかあるまい。

はー、頭が痛いな。



王宮へ入ると、謁見の間でなく王の私室へ通された。
他の輩に配慮したな。
こちらとしては助かるが、無理難題を言われそうだな。

「この度は拝謁の栄誉を賜り」
「よいよい。私室だ。堅苦しい挨拶はなしだ」
「・・・は」

・・・最後まで言わせろや。ぶった切ってんじゃねえぞ。
顔には出さないがむかつく、と不敬な事を考えていると、王太子殿下までやって来た。

「王太子殿下におかれましては」
「口上はいらん。楽にせよ」

・・・・・・親子揃ってなんなん?!
腹立つわ。
と思っても、微塵も面に出さないが。

「では、お言葉に甘えまして」
陛下達が座ったのを確認して自分も座る。
「うむ。して、其方の三男、アルカスはどうであった?」
直球きたな。もう少し遠回りにくると思ったが。
なんかワクワクしてる感じだな。
王太子殿下も・・・。

・・・なんか嫌な感じだな。

「恙無く20歳の祝いをして参りました」
「そうか、それでは祝いを受けられるほど回復したと言うことだな?」
「先日、ようやっと回復してきたばかりです。これから少しずつ体力をつけようかと」
「回復したなら取りあえず一度連れて来い。其方の話ではよう分からん」

だ か ら、話を被せるな!

「しかし、慣れない馬車旅を3日はする事になり、体調を崩す恐れが」
「転移魔法陣の使用を許可する」

だから(以下略)!

こめかみに薄ら青筋が立つのに気付いたが、無視をして問う。

「・・・・・・そんなに会いたいので?」

何も気付かないのか、のほほんとして応える陛下。
「会いたいのう。其方の話を聞く限り、小柄で可愛らしい顔立ちというではないか。時空の歪みで異世界に行っておったのだろう? 戻ってこられたことが奇跡じゃ」
「私も興味がある。将軍達を見ているので、可愛らしいというのが想像出来ないのだ」
「そうそう。だから明日連れて参れ。時間は午後でよい。これは王命である。よいな? イグニスよ」
「・・・・・・御意に」

この狸親父め。
まあ、一度連れて来れば文句は言うまい。
帰ったらすぐに作戦会議だな。

「ではな。楽しみにしておるぞ」
ホッホッホと言いながら王太子殿下と私室を去るのを見送り、自分も素早く辞する。



「お帰りなさいませ、旦那様」
タウンハウスに戻ってすぐにクレインとマールを呼ぶ。
「皆をサロンへ。大至急、作戦会議をする!」
「お帰り、親父。どうしたんだ?」
「作戦会議とは物騒ですが、アルカス絡みですか?」
「そうだ。王命で、明日の午後にアルカスを連れて来るように言われたのだ」

それを聞いた邸の使用人達もザワついたが仕方あるまい。
皆、アルカスを可愛がっており、しかしタウンハウスから遠く離れた領地にいるため、直接会うことも出来ずに時折伝達魔導具で元気そうな顔を見るだけだ。

「旦那様、恐れながら、転移魔法陣をお使いになるので?」
家令が聞いてきた。
「そうだ。陛下が許可をくださった。だが時間がない。早々に予定を組んで準備をせねばならん。皆も頼むぞ」
「は!」

使用人達がバタバタと慌ただしく動き出す中、我ら3人は領地の本邸へ連絡を入れる。

さあ、我らが参謀(グラキス)よ。腕の見せ所だ!








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