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第二章 王都編
冒険者ギルドは王都観光に含まれますか?
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「ご馳走様でした!」
ぷはー。満足満足。
食事の後片付けをしていたら、知らない男の人が声をかけてきた。
「よう、クラビスじゃねえか! いつこっちに来てたんだ?」
「・・・昨日だ。何か用か、リリー」
はあーっと嫌そうに返事をするクラビス。
冒険者っぽいな。そんで強そう。いや、クラビスの方が断然強いけど。
クラビスの陰からコソッと観察する。
赤茶のショートカットに同じく赤茶の瞳。やや無精髭。クラビスより10歳近く上に見えるけど、こっちの人の年齢は分かりづらい。
クラビスよりも厚みのある体躯はそれに見合った身長で、クラビスも高いのにこの人は2メートル超えてんじゃないかな?
前衛タイプなのか、背中にこれ見よがしに大剣を背負ってる。
クラビスが無碍にしないって事は、Aランクかクラビスと同じSランクって事かな?
なんかこれぞ冒険者って感じの人だ。
そんなことを考えてジッと見てたから視線を感じたんだろう。ふっとこっちに向いた視線とバッチリ合って、ビクッとした。
リリーさん?も目を瞠ってしばし無言。
それをクラビスがぶった切った。
「俺の嫁をジロジロ見るな。減る」
「・・・はあ?! 嫁ぇ?!」
・・・そうなるよね?
「クラビスの嫁のアルカスです。初めまして。えーと、リリーさん?」
仕方がないので自己紹介。
俺、大人!
「こんな奴に挨拶しなくていい。行くぞ。どうせたいした用事じゃないんだろう? 見かけたから声をかけただけだろう」
そう言ってぐいっと抱えられた。
うん、俺は別にいいんだけど、リリーさんは大丈夫なのかな?
チラッと見ると、硬直から解けたところで、はっとして動き出した。
「ちょちょ、待て待てい!! 用があんだよ! 探してたんだよ!」
「チッ」
クラビス、舌打ち格好いいけど、行儀悪いよ。
「クラビス、俺はいいから、話聞いてあげなよ? この後は特に決めてないし。面白そう」
「・・・・・・はあ。そう言うなら。で、ここでもいいのか?」
「助かる! ここじゃあアレだから、ギルドに来てくれ。アルカスもいいかな?」
「おお! 王都の冒険者ギルド! 見てみたい!」
すっかり観光気分なアルカスさんです。
苦笑して、クラビスが歩き出したのでリリーさんも隣に駆け寄ってくる。
「・・・それにしても、いつ婚姻したんだ? そんな素振りは全くなかったろう?」
「先日、アルカスの20歳の誕生日に入籍したんだ。新婚ホヤホヤだ。デート中だったんだ。邪魔しやがって」
立て続けに情報公開するクラビス。
ポカンとするリリーさん。
慣れた手つきでギルドカードを提示する俺。
「・・・何処からツッコめば・・・。アルカスがショーグン様の行方不明の三男坊で、無事見つかってクラビスと婚姻したって事か? え、20歳?!」
もうこの反応、慣れたわ。
冒険者ギルドは中央広場からさほど離れていなかったようで、10分もしないで着いた。
いや、俺のリーチだと15分くらいはかかるかも。
王都だけあって、建物はデカかった。
「おお! 凄え!」
「楽しそうだな、アルカス」
リリーさんがニカッと笑う。
「うん! 俺、まともに起きられたのついこの間だったから。ほとんど寝てたから、まともに街並み歩くのって3度目くらい? 何もかも珍しくって」
「・・・そうなのか? そんなに寝てたのか。体弱いのか? そういや確かに小っさい」
「小っさい言うな!」
「ずっと魔力枯渇状態だったんだ。少ししたら魔力欠乏状態まで回復したけど、最近までしょっちゅう倒れてた」
クラビスはサラッと言ったけど、実際はかなりヤバい状態らしいよ。
リリーさん、それを聞いて愕然としてるし。
「・・・辛かったなあ?」
ちょっと涙ぐんでる。あれ、結構いい人?
そんな事を言いながら中に入ると、時間的には少ない筈の冒険者達の視線が一斉に向いた。
「ひえ」
ビクッとしてクラビスにしがみついたら、クラビスはしっかりと威圧してくれた。
「ごめんなさい」
半分くらいの人が青ざめてる。
中には意識なさそうな人も。
クラビス、やり過ぎ。
「最初が肝心だ」
「何が?!」
「お前ってそんなヤツだったか?」
リリーさんが呆れてる。
うん。俺も後から知ったけど、普段からは想像つかないみたい。
「それで、用件を聞かせろ」
「へいへい。ギルマスの部屋で話す。こっちだ」
「ねえ、それって俺が聞いてもいいやつ?」
心配になって聞いてみた。
いや、ダメってここに独りで置いてかれても困るけど。クラビスなら置いてかないと信じてるけど。
「一応ギルマスに確認取るが、ダメって言われたらクラビスは話すら聞かなそうだし、たぶん大丈夫」
「よく分かってるじゃないか」
クラビス、その顔、めっちゃ悪い顔。
結局、そのままギルマスの部屋で詳しい話を聞く事になった。
ぷはー。満足満足。
食事の後片付けをしていたら、知らない男の人が声をかけてきた。
「よう、クラビスじゃねえか! いつこっちに来てたんだ?」
「・・・昨日だ。何か用か、リリー」
はあーっと嫌そうに返事をするクラビス。
冒険者っぽいな。そんで強そう。いや、クラビスの方が断然強いけど。
クラビスの陰からコソッと観察する。
赤茶のショートカットに同じく赤茶の瞳。やや無精髭。クラビスより10歳近く上に見えるけど、こっちの人の年齢は分かりづらい。
クラビスよりも厚みのある体躯はそれに見合った身長で、クラビスも高いのにこの人は2メートル超えてんじゃないかな?
前衛タイプなのか、背中にこれ見よがしに大剣を背負ってる。
クラビスが無碍にしないって事は、Aランクかクラビスと同じSランクって事かな?
なんかこれぞ冒険者って感じの人だ。
そんなことを考えてジッと見てたから視線を感じたんだろう。ふっとこっちに向いた視線とバッチリ合って、ビクッとした。
リリーさん?も目を瞠ってしばし無言。
それをクラビスがぶった切った。
「俺の嫁をジロジロ見るな。減る」
「・・・はあ?! 嫁ぇ?!」
・・・そうなるよね?
「クラビスの嫁のアルカスです。初めまして。えーと、リリーさん?」
仕方がないので自己紹介。
俺、大人!
「こんな奴に挨拶しなくていい。行くぞ。どうせたいした用事じゃないんだろう? 見かけたから声をかけただけだろう」
そう言ってぐいっと抱えられた。
うん、俺は別にいいんだけど、リリーさんは大丈夫なのかな?
チラッと見ると、硬直から解けたところで、はっとして動き出した。
「ちょちょ、待て待てい!! 用があんだよ! 探してたんだよ!」
「チッ」
クラビス、舌打ち格好いいけど、行儀悪いよ。
「クラビス、俺はいいから、話聞いてあげなよ? この後は特に決めてないし。面白そう」
「・・・・・・はあ。そう言うなら。で、ここでもいいのか?」
「助かる! ここじゃあアレだから、ギルドに来てくれ。アルカスもいいかな?」
「おお! 王都の冒険者ギルド! 見てみたい!」
すっかり観光気分なアルカスさんです。
苦笑して、クラビスが歩き出したのでリリーさんも隣に駆け寄ってくる。
「・・・それにしても、いつ婚姻したんだ? そんな素振りは全くなかったろう?」
「先日、アルカスの20歳の誕生日に入籍したんだ。新婚ホヤホヤだ。デート中だったんだ。邪魔しやがって」
立て続けに情報公開するクラビス。
ポカンとするリリーさん。
慣れた手つきでギルドカードを提示する俺。
「・・・何処からツッコめば・・・。アルカスがショーグン様の行方不明の三男坊で、無事見つかってクラビスと婚姻したって事か? え、20歳?!」
もうこの反応、慣れたわ。
冒険者ギルドは中央広場からさほど離れていなかったようで、10分もしないで着いた。
いや、俺のリーチだと15分くらいはかかるかも。
王都だけあって、建物はデカかった。
「おお! 凄え!」
「楽しそうだな、アルカス」
リリーさんがニカッと笑う。
「うん! 俺、まともに起きられたのついこの間だったから。ほとんど寝てたから、まともに街並み歩くのって3度目くらい? 何もかも珍しくって」
「・・・そうなのか? そんなに寝てたのか。体弱いのか? そういや確かに小っさい」
「小っさい言うな!」
「ずっと魔力枯渇状態だったんだ。少ししたら魔力欠乏状態まで回復したけど、最近までしょっちゅう倒れてた」
クラビスはサラッと言ったけど、実際はかなりヤバい状態らしいよ。
リリーさん、それを聞いて愕然としてるし。
「・・・辛かったなあ?」
ちょっと涙ぐんでる。あれ、結構いい人?
そんな事を言いながら中に入ると、時間的には少ない筈の冒険者達の視線が一斉に向いた。
「ひえ」
ビクッとしてクラビスにしがみついたら、クラビスはしっかりと威圧してくれた。
「ごめんなさい」
半分くらいの人が青ざめてる。
中には意識なさそうな人も。
クラビス、やり過ぎ。
「最初が肝心だ」
「何が?!」
「お前ってそんなヤツだったか?」
リリーさんが呆れてる。
うん。俺も後から知ったけど、普段からは想像つかないみたい。
「それで、用件を聞かせろ」
「へいへい。ギルマスの部屋で話す。こっちだ」
「ねえ、それって俺が聞いてもいいやつ?」
心配になって聞いてみた。
いや、ダメってここに独りで置いてかれても困るけど。クラビスなら置いてかないと信じてるけど。
「一応ギルマスに確認取るが、ダメって言われたらクラビスは話すら聞かなそうだし、たぶん大丈夫」
「よく分かってるじゃないか」
クラビス、その顔、めっちゃ悪い顔。
結局、そのままギルマスの部屋で詳しい話を聞く事になった。
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