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後日譚
アレックス・リリーフは驚愕する
しおりを挟む俺はエルフの里に行かなかった事をこれほど後悔したことは無かった。
辺境伯領での長い日々でかなり打ち解けたフェイが、ウィステリア様の里帰りでよもやあんなコトになろうとは・・・。
俺がその事を知ったのは、辺境伯の依頼が終わった後、イースのギルドから依頼されていた魔獣の討伐が完了した後だった。
アルカス達がエルフの里に行っている間に、臨時のパーティーを組んで魔獣被害を受けていた村付近の森に数日かけて移動し、また数日かけて討伐。
ついでに蔓延っていた盗賊共を根こそぎ退治してやっと安全を確保して。
ホッとひと息ついてからまた数日かけてギルドに戻って、ギルマスの部屋で依頼完了の手続きを終えて。
アイツらどうしてるかなあとぼんやり考えていたときに、ギルマスから何の気なしに告げられた。
「そういえば、フェイ、嫁さんになったよ」
「ふーん、へえ---・・・・・・え?!」
何だって?
フェイが?
---嫁えええ?!
「お相手はエルフだって」
「はあああああ---?!」
「基本的には旦那であるエルフの里に住んでるから、詳しくはクラビスかアルカス辺りに聞いてな」
「・・・・・・まじ?」
「うん、まじ。残念だったねえ、リリー、フェイの事気に入ってただろ?」
さらっと言われた言葉にドキッとした。
「---ギルマス・・・・・・あんた」
「心配しなくても誰にも言ってないよ。まあクラビスは気付いてたろうけどね。とりあえず一度フォレスター家に行ってアルカス達に話を聞いておいで」
「・・・・・・はい」
何となくしょぼんとした背中を見送って、ギルマスはクラビスに伝達魔導具で連絡を取った。
「あー、クラビス、リリーが帰ってきた。で、フェイの事を教えたんで、後はヨロシク」
《---あー、分かった》
それだけで察したクラビスに二つ返事で返されて安心したギルマスは、深い溜息を吐いた。
「二度目の失恋は唐突にきたねぇ」
意外と純情なんだよね。
誰かいい人いないかなあ・・・・・・。
リリーがあの後すぐにクラビスに連絡を取ると、待っていたようにフォレスター家に来るように言われた。
「・・・・・・クラビス、ギルマスから聞いたんだが、その・・・」
《ああ、その件な。これからこっちに来られるか? フェイの旦那を紹介するよ》
「あ、ああ、今から行く」
《この前、お前抜きでパーティーやったんで、リリーを呼んで俺達と併せて友人パーティーしようとアルカスが言ってたんでちょうど良い》
「・・・お前、ワザとか?」
若干イラッとしながら返事を返すとニヤリと笑われた。
《こういうのは傷が浅いうちが良いんだよ。すっぱり消して次に進め》
「---はあ・・・。分かった。俺の性分に合わねえよな、グズグズするのって。ヨロシク頼むよ、クラビス」
《お前の失恋は百合の花で経験済みだからな》
「---うるせえ!」
ムカついて伝達魔導具を一方的に切ってやった。
畜生、俺だって一応傷付くんだからな!
そうしてやって来たフォレスター家で再会したフェイは、いつもの飄々とした感じの中に色気が滲んでていて、それが旦那であるエルフのせいだと一発で分かった。
イヤよイヤよも好きのうちってくらい見せつけられる。
エルフの旦那はエルフにしてはガタイの良い男で、クラビス並みに執着を感じた。
出逢いからの即日婚姻って、どうなのよ?
---俺には無理だ。
そんでもって実はフェイがハーフエルフだったって聞いたときは納得した。
逆にコレがフェイをすっぱり諦める要因になった。
いくら強くても只人の俺とじゃ寿命が違う。
知らずに婚姻して、後から分かったらフェイが哀しむだけだ。
そういう点では相手がエルフで良かったよ。
エルバートと言ったか。
フェイを幸せにしてくれな。
最後は和気あいあいとして和やかに別れた。
「依頼で必要なときはフェイを借りるぜ、エルバート」
「イヤだが仕方ない。が、絶対に手は出すなよ!」
「人妻に手ぇ出すほど困っちゃいねえよ!」
「俺がリリーに手ぇ出すわけねぇだろ! アンタだけだよ!」
「ヒューヒュー! ごちそうさま!」
「コラ、アルカス駄目だよ、余所見しないでこっち向いてて」
「---畜生! 俺も早くリア充になりてぇ」
ぎゃんぎゃん騒いでお開きとなった。
変わらない日常だが、それが今は心地良かった。
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