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20 辛い記憶と魔傷 2
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「昨夜はちょっと、夢見が悪くてね」
食後のお茶を飲みながらポツリポツリと俺は話し出す。
「俺が小さいときに魔物に襲われたのは知ってるだろう? 冒険者になったばかりの頃に、その当時の……襲われたときのことをよく夢に見ててさ」
そう言うとシンやエヴァンス達が息を飲んだのが分かった。
「まあ、凄惨な状況だったし、俺も相当のトラウマだったと思うけど、孤児院にいた当時はとにかく生きるのに必死で夢なんか見た記憶なくて。でも冒険者になって幾度も魔物に遭遇するじゃん。たぶんそれがきっかけだったと思う」
「……そうか」
シンが気遣わしげに相づちを打つ。
「うん、まあそれでも数年で慣れて自然と夢を見ることもなくなったんだけど、その……」
これ、ちょっと言い辛いな。でもシン達が待ってくれてるから、もうぶっちゃけるか。またパニックになっても困るし。
「ずっと一人だったから、その、シンと過ごすようになって触れあいが……えーと」
「……うん? 触れあい?」
「あー、要するに、人肌に触れてぇ! 人恋しくなってぇ! 両親の温もりを思い出したっていうかぁ! それで記憶が刺激されたってことでぇ」
俺は恥ずかしくなって顔を真っ赤にして思わず叫んだ。
シンはキョトンとしたあと、意味が分かったのだろう、破顔した。
「そうか、ノヴァは俺に抱かれて肌恋しくなって、それでかつての温もりを思い出したが故のその悪夢だったってことか」
「なんてこと口にするんだ、ぼかした意味がねえだろ! そして笑って言うことじゃねえ! アホ!」
シンの言葉にまた叫んだあと、コホンと咳払いをして、そういう理由だから昔みたいに頻繁に見ることはないと思うけど、またパニックになったら遠慮なく叩くなり拘束するなりしてくれと頼むとしょっぱい顔をされた。
「そこまでしないとダメか?」
シンが深刻な顔でそう言うとエヴァンス達もうんうん頷いた。
うーん、さすがに一応他所の国の王子という立場の俺は殴れないか。
「でも正気に返らないとたぶん転移しちゃうよ。それに間違って誰かが俺に触れていたら一緒に転移しちゃうから困るじゃん」
「……あ、そういえば転移の件でそう言ってたな。じゃあむしろ誰かがくっ付いていれば転移しても安心じゃないか。イヤ俺が常にくっ付いていればいいんだな!」
「は? ……あー、それもそうか? え、それでいいのか。シンだってこの城でやることあるんだろう? いつも俺と一緒にって無理じゃねえ?」
妙案だとばかりのシンに俺は納得しかけて、ハッとする。
そうだよ、お前、王弟じゃん。忙しいんじゃねえの?
「ずっと一緒って、どこにでも連れて行くって言っただろう。そもそも冒険者してる時点で公務なんてやってないだろ」
「……それもそうか。うん、じゃあいいか。俺としてもその方が安心するし」
シンがいいなら気にしないことにしよう。
エヴァンス達もホッとしたようだった。心配かけてごめんな。
あ、念のため魔力回復ポーションを常時持ち歩くことだけは頼んでおいたけど。なにが起こるか分からないから。
「もっと魔力量があればよかったんだけどな」
「ああ、それ。今日はこのあとその魔力の件で王宮の魔導師に面会予定が入ってる」
「え」
俺の胸の傷を診て貰うって言ってたヤツ!?
「エヴァンス達がお茶を片付けたら行こう」
「うん」
ええ、こんなに早く診て貰えるの? てっきり王様と謁見してからだと思ってた。
「……でも、あんまり期待はしないでおこう」
「え、何で? これから会う魔導師は凄い人だよ。心配ないよ」
「うーん、でも期待したあとにダメだったら、俺、物凄く落ち込むと思うから」
自己防衛というか、やっぱりダメでしたって突き付けられたら、しばらく立ち直れないと思うから、最初から期待はしない。
「そのときは何も考えられないくらい抱き潰してあげるよ」
「……は!?」
シンが耳元に顔を寄せてそう囁くから、思わず耳を押さえて振り向いた。
「ななな何言ってんの、おまっお前!」
「冗談――じゃないけど。でもたぶんアイツは凄い腕だから心配ないんじゃないかな」
「アイツ?」
「うん、今から行く魔導師様。本当はあんまりノヴァを見せたくないんだけどね。でもノヴァの憂いが晴れるなら仕方ない」
「……」
シンが凄腕と言いつつも会わせたくない魔導師様って、一体どんな人なんだ?
俺、ちょっと不安なんだけど。
食後のお茶を飲みながらポツリポツリと俺は話し出す。
「俺が小さいときに魔物に襲われたのは知ってるだろう? 冒険者になったばかりの頃に、その当時の……襲われたときのことをよく夢に見ててさ」
そう言うとシンやエヴァンス達が息を飲んだのが分かった。
「まあ、凄惨な状況だったし、俺も相当のトラウマだったと思うけど、孤児院にいた当時はとにかく生きるのに必死で夢なんか見た記憶なくて。でも冒険者になって幾度も魔物に遭遇するじゃん。たぶんそれがきっかけだったと思う」
「……そうか」
シンが気遣わしげに相づちを打つ。
「うん、まあそれでも数年で慣れて自然と夢を見ることもなくなったんだけど、その……」
これ、ちょっと言い辛いな。でもシン達が待ってくれてるから、もうぶっちゃけるか。またパニックになっても困るし。
「ずっと一人だったから、その、シンと過ごすようになって触れあいが……えーと」
「……うん? 触れあい?」
「あー、要するに、人肌に触れてぇ! 人恋しくなってぇ! 両親の温もりを思い出したっていうかぁ! それで記憶が刺激されたってことでぇ」
俺は恥ずかしくなって顔を真っ赤にして思わず叫んだ。
シンはキョトンとしたあと、意味が分かったのだろう、破顔した。
「そうか、ノヴァは俺に抱かれて肌恋しくなって、それでかつての温もりを思い出したが故のその悪夢だったってことか」
「なんてこと口にするんだ、ぼかした意味がねえだろ! そして笑って言うことじゃねえ! アホ!」
シンの言葉にまた叫んだあと、コホンと咳払いをして、そういう理由だから昔みたいに頻繁に見ることはないと思うけど、またパニックになったら遠慮なく叩くなり拘束するなりしてくれと頼むとしょっぱい顔をされた。
「そこまでしないとダメか?」
シンが深刻な顔でそう言うとエヴァンス達もうんうん頷いた。
うーん、さすがに一応他所の国の王子という立場の俺は殴れないか。
「でも正気に返らないとたぶん転移しちゃうよ。それに間違って誰かが俺に触れていたら一緒に転移しちゃうから困るじゃん」
「……あ、そういえば転移の件でそう言ってたな。じゃあむしろ誰かがくっ付いていれば転移しても安心じゃないか。イヤ俺が常にくっ付いていればいいんだな!」
「は? ……あー、それもそうか? え、それでいいのか。シンだってこの城でやることあるんだろう? いつも俺と一緒にって無理じゃねえ?」
妙案だとばかりのシンに俺は納得しかけて、ハッとする。
そうだよ、お前、王弟じゃん。忙しいんじゃねえの?
「ずっと一緒って、どこにでも連れて行くって言っただろう。そもそも冒険者してる時点で公務なんてやってないだろ」
「……それもそうか。うん、じゃあいいか。俺としてもその方が安心するし」
シンがいいなら気にしないことにしよう。
エヴァンス達もホッとしたようだった。心配かけてごめんな。
あ、念のため魔力回復ポーションを常時持ち歩くことだけは頼んでおいたけど。なにが起こるか分からないから。
「もっと魔力量があればよかったんだけどな」
「ああ、それ。今日はこのあとその魔力の件で王宮の魔導師に面会予定が入ってる」
「え」
俺の胸の傷を診て貰うって言ってたヤツ!?
「エヴァンス達がお茶を片付けたら行こう」
「うん」
ええ、こんなに早く診て貰えるの? てっきり王様と謁見してからだと思ってた。
「……でも、あんまり期待はしないでおこう」
「え、何で? これから会う魔導師は凄い人だよ。心配ないよ」
「うーん、でも期待したあとにダメだったら、俺、物凄く落ち込むと思うから」
自己防衛というか、やっぱりダメでしたって突き付けられたら、しばらく立ち直れないと思うから、最初から期待はしない。
「そのときは何も考えられないくらい抱き潰してあげるよ」
「……は!?」
シンが耳元に顔を寄せてそう囁くから、思わず耳を押さえて振り向いた。
「ななな何言ってんの、おまっお前!」
「冗談――じゃないけど。でもたぶんアイツは凄い腕だから心配ないんじゃないかな」
「アイツ?」
「うん、今から行く魔導師様。本当はあんまりノヴァを見せたくないんだけどね。でもノヴァの憂いが晴れるなら仕方ない」
「……」
シンが凄腕と言いつつも会わせたくない魔導師様って、一体どんな人なんだ?
俺、ちょっと不安なんだけど。
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