パライソ~楽園に迷い込んだ華~

エウラ

文字の大きさ
10 / 45

10 記憶喪失の森人(sideアイントラハト)

しおりを挟む

立ち話も何だから、と俺を自宅に招待するというカムイに、無警戒過ぎると内心で思いながら付いていくと、突然目の前にロッジが現れた。

隠蔽魔法で隠していたらしいが、驚いた。
全く気付かなかった。

それにしても外観だけでも素晴らしい物なのに、中はもっと凄くて驚いた。

だがそれよりも苦言を呈せねばと声をかければ。

「え? 家に入れるのはアルトが初めてだよ。ここに来たのも動物たち以外はアルトが初めて」
「えっ・・・初めてっ・・・いやそれでもだ・・・!」

俺が初めてなんて・・・うっかり顔を赤くしてしまったじゃないか。

「・・・ありがとう。自分以外の人に会ったの初めてで、心配して貰うのも初めて」
「・・・・・・ここには独りで?」
「うん、まあね。気付いたら独りでここよりずっと北の森の中にいたんだ。ここに辿り着けて良かったよ」

なんて事ないように言っていたが、かなり不安だったろう。

「どうしてこの森にいたのか分からないのか?」

そう問いかけたら、お菓子を食べる手を止めてうーんうーんと考え込んでしまったので、無理しなくて良いと言ったら、どうして森にいたのか分からないのだという。

そして名前ぐらいしか分からないから、と俺にどんどん詰め寄って質問して来た。
・・・・・・が、ふっと思い出したように俺を気遣ってきた。
俺は外部の人だから用事が済めば帰る家があると思い至ったのだろう。

段々尻すぼみになっていく声に堪らなくなり、気付けば宿泊を約束していた。

ぱあっと顔を綻ばせて部屋を用意してくると二階へ上がったカムイを見送ってから、通信用の魔導具でもある腕輪で騎士団の団長・・・俺の父に連絡を取った。

〔・・・はい、ああアルトか。守備はどうだ、接触出来たか?〕
「はい。すでに接触済みです。彼の家にいます」
〔・・・彼? 家に?〕
「名をジェイド・カムイと。見た目は俺より年下の森人でした」

向こうで息を呑むのが分かった。
さすがの騎士団長も驚くだろう。

〔───森人? 滅多にお目にかかれない種族だぞ。何故世界樹に?〕
「それが・・・記憶がないそうです。名前以外は覚えていません。この世界の名も知らず、半年ほど前に目覚めてから会ったのは動物以外では俺が初めてだそうです」

それを思い出してちょっと顔が赤らむ。

〔それはまた・・・。裏は取れそうか?〕
「嘘を吐いている感じはありません。そもそも悪意を持って嘘を吐いた時点で結界から弾かれるでしょう。・・・後、俺の話を聞きたいから泊まってくれと言われて」
〔泊まるのか?〕
「俺に気を遣って、帰っても良いからまた来てくれるかって、泣きそうに言われたら断れませんよ。彼、本当にずっと独りで住んでいたようなので・・・」

団長は少し考えたようだが・・・。

〔・・・分かった。数日間滞在していい。だが最低でも一日一度は連絡を入れろ。危険があれば・・・お前だけでも帰ってくること。良いな?〕
「・・・・・・了解しました」

そう言って通信を切ったが。

俺だけ逃げ帰る、なんて、出来るかな・・・。

すでに絆され始めている自分に苦笑して、他の設備を覗くのだった。

それからすぐに下に降りてきたカムイに、少々コワイだろうが知らない方が危険だろうと奴隷の話をしたら、顔を真っ青にして震えてしまった。

性奴隷や慰み者の意味を正しく理解したのかは分からないが、カムイが高位森人ハイエルフの事を口にしたのでそれに応えていたが・・・まさか・・・・・・。

「───カムイ、ハイエルフ・・・・・・なのか?」

無言で肯定され、唖然とする。


重苦しい空気に耐えられなかったのか、急に台所で料理を始めたカムイ。
それを目の端に捉えながら、再度通信を繋げた。

〔・・・どうした? さっきの今だぞ、何かあったのか?!〕

やや焦ったような声だが気にしている余裕はない。

「・・・高位森人だった」
〔───は?!〕
「彼、だった。希少種どころの話じゃ無かった」

向こうも唖然としたようだった。
俺も公での言葉遣いを忘れて普通に話していた。

〔───それは・・・その彼は今は・・・〕
「・・・台所で御飯を作ってる。俺、エルフは性奴隷にされやすいから気をつけろって、脅かしちゃって・・・真っ青に・・・・・・」

怖がらせすぎた。
嫌われたかな?

〔・・・・・・それは、当然だろう。危険を減らすために私だって教える〕
「・・・・・・俺、どうしよ・・・・・・、どうしたら良い?」
〔───アルト、きちんと向き合って気持ちを通わせなさい。信頼を得るんだ。・・・頑張れ〕
「・・・・・・はい」
〔次は良い報告を待ってる。ではな〕

そう言って切れた。

料理をして落ち着いたのか、カムイが晩御飯だと用意してくれた食事を食べて、食休みがてらこの大陸の貨幣価値を教えていると、ふと思い出したようにカムイがバッグから貨幣を一枚取り出して、使えるか聞いてきた。

───お前、それ、白金貨・・・・・・。

なんてモンをしれっと出してるんだよ!
まさかもっとあるなんて言わないよな?
・・・・・・あるんだな?

顔は笑いながらも俺の目が笑ってない事に気付いたカムイは誤魔化すように俺に風呂を勧めてきた。

はああ───。





しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています

水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。 「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」 王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。 そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。 絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。 「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」 冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。 連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。 俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。 彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。 これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。

【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ
BL
 この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。 14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。  それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。  ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。  使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。  ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。  本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。  コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

処理中です...