11 / 45
11 王立騎士団長(sideフルクベルト)
しおりを挟む半年前、世界樹を定期巡回中の団員から齎された報告に一瞬耳を疑った。
世界樹の傍に高濃度の魔力を感知したと。
どうやら人らしいと。
それを受け、調査をする事数回。
危険はなさそうだが状況把握は必要と、我が団所属のアイントラハトを向かわせることになった。
アイントラハトは私、騎士団長の三番目の息子でもある。
何故か小さい頃から世界樹の結界にすんなりと入れる体質で、その為今回も満場一致で選ばれた。
「世界樹の結界に受け入れられている者だ。危険はないだろうが十分注意するように」
「は、任務遂行に尽力致します!」
格式ばった挨拶をしたあと、頭を撫ぜて、気を付けるように言う。
父親として無事を祈る。
ワイバーンで去って行ったアイントラハトを見送ってから執務室に戻った。
「───お疲れさん、フルクベルト団長」
「・・・ああ、書類整理すまなかった。助かった」
執務室では留守にした私のかわりに書類整理を手伝ってくれていた副団長のエンドルフィンが出迎えてくれた。
私とは幼馴染みの腐れ縁である。
気心が知れて気安い間柄だ。
「・・・今回の調査は、初めての案件だな」
「ああ、アルトなら問題なく遂行出来るだろうが・・・何か、予感めいたモノがあるんだよな」
お互い、手を動かしながら雑談をする。
「お前の予感って良くあたるよな。大丈夫なのか?」
「・・・悪い感じでは無いんだ。どちらかというと、アルトに対してプラスに働くような・・・?」
「ふーん。なら良いんじゃないか?」
「そう、だな」
歯切れ悪く言う私にエンドルフィンはニヤリと笑って言った。
「お前もいい加減子離れしろよ?」
「───良い度胸だ。午後の訓練を覚えておけよ」
「うわ、藪蛇だった!」
賑やかな声が執務室の外にまで響いていた。
「またやってるよ、団長達」
居合わせた団員達は聞こえた声に苦笑していたとか。
宣言通り午後の訓練でエンドルフィンを叩きのめした後、シャワーを浴びて着替え直した私はピンピンしているエンドルフィンと共に執務室に戻った。
休憩でお茶を飲んでいるときに腕輪がアルトからの通信を受信した。
エンドルフィンに目配せをして人払いをし、執務室の防音結界の魔導具を作動させると同時に、自分達の周りにも魔法で防音結界を張る。
「・・・はい、ああアルトか。守備はどうだ、接触出来たか?」
〔はい。すでに接触済みです。彼の家にいます〕
「・・・彼? 家に?」
エンドルフィンと顔を見合わせる。
アルトはすでに対象と接触していた。
その上、家にいる?
世界樹の傍に家を持っているのか?
〔名をジェイド・カムイと。見た目は俺より年下の森人でした〕
エルフ?!
詳しく話を聞くと、どうやら記憶喪失らしいことが分かった。
そのカムイと言う彼に乞われて、泊まる約束をしたと・・・。
「・・・分かった。数日間滞在していい。だが最低でも一日一度は連絡を入れろ。何か危険があれば・・・お前だけでも帰ってくること。良いな?」
〔・・・・・・了解しました〕
そう言って通信を切ったが。
「アレは、放って一人で帰ってくる感じじゃないね」
「だろうな」
───しかし森人か・・・・・・。
世界樹に滞在を許されているなら危険人物ではない。
そこに住んでいる方が逆に安全だ。
・・・・・・過去の森人達の悲惨な末路を思い出し、頭を抱える。
その彼も何か辛いことに巻き込まれて記憶を失ったのか・・・・・・?
「とにかく、アルトの報告を待つしか無いな」
魔法を解除し、残りの書類を捌いていると、フルクベルトの腕輪が再びアルトの通信を受信した。
慌てて人払いと防音結界を張って応答する。
立て続けに連絡など、何かあったのか?!
〔・・・高位森人だった〕
「───は?!」
〔彼、ハイエルフだった。希少種どころの話じゃ無かった〕
本当に希少種も希少種。
エルフの中でもほんの一握りしかいないというハイエルフ。
〔俺、エルフは性奴隷になりやすいから気を付けろって、脅かしちゃって・・・・・・彼、真っ青に・・・・・・〕
「・・・・・・それは、当然だろう。危険を減らすために私だって教える」
〔・・・・・・俺、どうしよ・・・・・・父さん、どうしたら良い?〕
任務中にも拘わらず、私を父さん呼びするときは家族として助言を求めている時だ。
無意識なのだろうが・・・。
「───アルト、きちんと向き合って気持ちを通わせなさい。信頼を得るんだ。・・・頑張れ」
〔・・・・・・はい〕
「次は良い報告を待ってる。ではな」
通信を切って深い溜息を吐く。
───問題が一段と上がってしまった。
「ハイエルフ、だって?」
「・・・・・・王族になんて言えば・・・」
「まだ調査中なんだから、聞かれたら『まだ詳しいことは分かりません』でいいんだよ」
「・・・お前な・・・まあ、それでいいか。まだまだ情報不足だし」
「それよか、アルトは大丈夫なのか? ずいぶん肩入れしてる感じだったが」
先ほどの通信での落ち込みよう・・・。
思うところはあるが。
「まあ、大丈夫・・・・・・たぶん・・・・・・きっと・・・」
「───そこは言い切って欲しかったかな!」
わはははと賑やかな声が再び響いて、今日も平和だなと団員達は思った。
247
あなたにおすすめの小説
植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています
水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。
「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」
王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。
そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。
絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。
「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」
冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。
連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。
俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。
彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。
これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。
【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません
ミミナガ
BL
この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。
14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。
それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。
ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。
使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。
ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。
本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。
コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる