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35 初めまして?
しおりを挟む着替えてアルトと食堂に向かうと、アルトが言っていた『お客様』が食事をしていた。
初めて見る人だ・・・・・・初めて、だよな?
ちょっと頭がモヤッとしたが、頭を振って払った。
---うん、初めて。初めましてだ、きっと。
「---ジェイド、目が覚めたのか。大丈夫か?」
フルクベルトが中座して心配そうにやって来た。
額に手をあててからぎゅっと抱き締めてきた。
その間にアルトとフルクベルト達はカムイに気付かれないようにアイコンタクトをして首を振っていた。
「あの、お父さん、ごめんなさい。俺、倒れたことよく覚えて無くて・・・」
「---良いんだ。何も無くて良かった。御飯は食べられそうかい?」
「お腹、空きました。そうだ、あの、お客様が来てるって・・・」
「ああ、紹介するよ。私達騎士団をとりまとめている騎士団総長のイクシード殿と、その側近のルイーズ殿だ」
そういって席まで案内されて、紹介された。
「初めまして。ジェイド・カムイです。・・・えっと・・・高位森人です。公爵家にお世話になってます。よろしくお願いします」
言っちゃって良いのかな、と思ってお父さんの顔を窺ったら頷かれたので、大丈夫なんだろう。
「・・・初めまして。イクシードだ。高位森人は初めてお目にかかるよ。私は金獅子の獣人だ。よろしく頼む」
「側近で護衛のルイーズです。私も金獅子の獣人です。よろしくお願いします」
そういって握手を交わして、改めて晩餐を再開した。
他の皆は相変わらずの量を平らげるが、カムイには減らして貰っても余るほどなので、何時ものように最初にサッサとアルトの皿に盛っていく。
それを見ていたイクシードが驚いていた。
「何時もそんなに少ない量なのかい?」
「え? 普通ですよ。皆さんがたくさん食べるだけですって。これ以上食べたら横に伸びるだけです」
「育ち盛りなんだからもっと食べないと・・・」
「俺、26歳ですよ。もう育ちませんって」
「---え?! 26歳?!」
「・・・嘘でしょう?」
「---そう言うお二人はお幾つですか?」
ぷくっと膨れながらイクシード達に聞いたら。
「私達は、25歳だ」
二人とも年下だった!!
「じゃあ、同年代の中では俺とフレッドが一番年上だ!!」
何故かドヤって叫んだカムイに、アルトが一言。
「でもこの中で一番(背が)小さいし、子供っぽいよ?」
「あー! 酷い、人が気にしてることを!」
再びぷくっと膨れたカムイに皆は吹き出す。
「それ、たぶんそういうところだよ、子供っぽいの」
「そうそう、ほっぺた膨らましても可愛いだけだって」
「可愛い言うな!」
「ほら、ジュース飲んで落ち着いて」
「何でジュースなの?! 俺、お子様じゃないよ!!!」
「だって二日酔い酷かったじゃないか。またアレ飲むの?」
文句を言うカムイにアルトが言えば、皆がアレ?という顔になった。
「コレです」
カムイが例の解毒薬を出した。
・・・・・・相変わらずの土留色である。
なお、改良前なので味は言わずもがな。
イクシードが顔を引き攣らせた。
アルト以外の全員が引いた。
「・・・・・・凄い色だね」
「逆に具合悪くなりそう・・・」
「うわあ・・・不味そう」
シルヴィが思わず言ったらカムイが真顔で即座に言った。
「不味いです!」
「キリッと言う事か?!」
「味はアレですが効果は保証します!」
「・・・確かに。カムイ、飲んだら吐きそうだったけどケロッと直ってたな・・・」
「ウッス、後で改良します! 何味がいいですか?」
参考までに、と皆の意見を求めるカムイ。
「出来るんだ?」
アルトが思わず聞いてきた。
もちろん、自作のレシピがあるので!
「自作品なので、やれば出来る!」
時間はかかると思うけどね。
コツコツ生産作業、好きだから気にならない。
「俺はサッパリ味が良いなあ」
「俺はワイン味! 見た目からと、単にワインが好きだから」
「甘いのが良いわね」
「酸味が欲しいかな?」
などなど・・・。
---コレ、晩餐そっちのけで盛り上がる話題か?
料理人は『せめて食事してから盛り上がって』と心の中で嘆いていた・・・。
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