パライソ~楽園に迷い込んだ華~

エウラ

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43 生産品の売買について 1

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アルトと俺の正式な婚約が結ばれ、アルトとの寿命問題も無事に解決した。
でも、いかんせん俺が圧倒的にこの世界の常識や知識が足りていないこととアルトがまだまだ若いということで、すぐに婚姻とはならないようだ。

確かに俺の基本的な生活拠点は世界樹ユグドラシルのそばにあるロッジだし、アルトは今はただの騎士だけど公爵家の三男という身分だから、市井に家を借りるとか買うとか気軽にできないらしい。経済的なことを言えば楽勝だとは言っていたけど。
え、アルトってそんなにお給料いっぱいもらってるの!?

でもそれ以前に、俺という高位森人ハイエルフが世界樹の森の結界から出て、アルトと一緒に一般社会で普通に生活できる気がしない。
アルトにも危険だと散々脅かされたから、下手に外界に出て捕まって違法な奴隷にされたら目も当てられない。

俺は魔獣とかの戦闘時はそれなりに強いけど、実際にはマリアお母さんにぎゅうっと抱きしめられただけでその細腕を振りほどけないほどひ弱らしいし。

いや、細い女の人の腕力ですら勝てないってどういうこと? 戦闘時と非戦闘時のステータスって違うの!? その違いが未だによく分からん。

だから、そういうことも含めてこれから皆で相談しながら考えようってことになった。

そこで俺は、夕食後の団らんのときに一つの提案をした。

「あの、俺も自立できるように働きたいです!」
「えっ!? その細い身体で!?」
「無理無理、死んじゃうよ!」

いやお兄さん方、何その俺の認識。酷過ぎん!? 別に死なないよ。

「あんなに食も細くて体力もないし」
「すぐに倒れちゃうわよ」

お父さんもお母さんもお兄さん方と大差ないな! 俺にはアレが普通なの! そりゃあよく倒れてるらしいけど!

「大体、カムイは何ができるの?」

唯一、それほど酷くない言い方のアルトに俺は応える。

「別に肉体労働しようって言ってるんじゃないよ。ほら、俺、いろんなもの作れるから、需要のありそうな製品を作って売れるかなって」
「あー、ああ、そういう……。そっか、それなら倒れたりは……いやいや、カムイは作業を始めると時間を忘れて没頭して、結局倒れる」

俺が得意な生産で作った物を販売すれば収入が見込めるじゃん。俺はアルト達におんぶに抱っこなのは嫌なんだよ。
だからそう提案したのに、アルトが納得しかけてからふと思いだしたようにそう言うから──

「それじゃあやっぱり無理でしょ」

いやいやいや、それこそ無理でしょ! 俺、ニートになっちゃう。それかアルトのヒモ!?

「それなら俺が寝食忘れる前に誰か声をかけてよ。書庫のときみたいに。あっ、決まった時間に気づくようにタイマーセットするとか。目覚まし時計みたいな道具を」

このままだとニートに決定しそうだから、俺は慌ててそう言った。
今までは一人でロッジに住んでたから気にしなかったけど、これからは家族がいて、心配かけちゃうから。
それにアルトの婚約者になったからには、もうロッジに一人で住むことはないだろう。

俺を本当に心配してくれる人がたくさんいるこの現状で、俺はもう無理をしないと思う。

「まあ、それなら大丈夫か? じゃああとでどんな生産物があるのか確認して、売れそうな物を決めようか」
「そうだね、下手に高性能な物をバンバン売っちゃうとよからぬ輩に目をつけられるから」
「とりあえず公爵家ウチの経営する商会で少しずつ、様子見で販売をしようか」

お父さんやフレッド兄さん、シルヴィ兄さん達がそう言って、後日、製品の品質を見定めることが決まり、俺は脱ニートを目指せると張り切るのだった。







※ご無沙汰しております。たまーに思い出したように更新します。続きはお待ちください。
あとからちまちまと誤字脱字等を修正してますが、本文に大きな変更はありません。
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