36 / 62
35 ツテやらコネやら権力やら(sideロルフ達)
しおりを挟むセッカとコハクが辺境伯邸から忽然と消え騒然としたものの、アルカードの情報提供を受けてからのロルフ達の行動は早かった。
オーウェンはフォルセオの冒険者ギルドのギルドマスター・・・フィストに連絡を取る。
そこから冒険者ギルドの規約違反をした者を炙りだし、その冒険者ギルドのギルマスの首をすげ替えた。
実はフィストは王都の冒険者ギルド本部から辺境地のフォルセオに派遣された、ギルド内部調査の為の諜報員だった。
他の冒険者ギルドにも定期的に密かに送り出されている諜報員は、冒険者ギルドに不干渉のはずの貴族階級の不正や内部での賄賂や情報改ざん、機密漏洩などを調査して本部に報告する役目を持つ。
そのツテであっと言う間に情報漏洩した犯人を特定したのだ。
もちろん内部調査諜報員ということは辺境伯にも内緒で。
そしてやはりアルカードの情報通り、セッカの情報を得るために動いていた大元がウェイバー侯爵家である事を確認。
ただ、犯人は上手く誤魔化しているようで、ウェイバー家の誰が主犯なのかはまだ確認が取れていない。
『一人なのか複数なのか、それとも邸中の者がグルなのかの特定にはまだ・・・・・・』
「───ふむ。仕方があるまい。短期間でコレだけ分かれば凄いことだ。スマンが引き続き頼む」
『畏まりました』
そう言って通信を切るオーウェン。
───ちなみに貴族は不干渉なんじゃ?と思っているだろうが、ギルド内部の調査という名目で動いているので規約には触れていない。
情報提供先がたまたま辺境伯で、その調査結果の単なる報告なのだから。
───そこ、屁理屈と言うな。
そして行商人に扮した侯爵家の影もロルフとダートが突き止めて捕らえて尋問した結果、影でも末端の捨て駒だったらしく有用な情報は得られなかった。
ただ、やはり主犯は侯爵家の家族の中の誰かであることは間違いなく。
『悪魔の吐息』の入手は侯爵家で行ったものらしいとの情報は得られた。
コレだけでも上々。
元々、この毒はえげつない威力の劇薬だから、調合出来る許可を持った錬金術師は片手で数えられるほど。
そして出来た薬を取り扱える薬師も限られる。
この国では王宮専属の錬金術師と薬師だけ。
そこに申請があると、内容を吟味し精査して通ったモノにだけ必要数販売をする。
だから書類は管理されて魔法で保持された書庫に保存されている。
通常ならば見ることも敵わないソレを、ロルフは己が持つコネと権力を最大限に使った。
つまり、辺境伯からの紹介状とエーデルシュタイン国第三王子の肩書きを使ったのだ。
付き従う護衛はもちろん、本国からロルフに付いているロンダート・ウルヴァル・エーデルガルドと辺境伯家四男のアルスレッド・シルヴァン・ノゥザンフォレットである。
ちなみにロンダートとはダートの本名である。
彼は本国では現王の王弟が臣籍降下した大公家の三男でロルフの従兄にあたる。
ロルフはここぞと言うときに自分の持ち得る権力を総動員したのである。
「───ロルフ、えげつな・・・」
「何を言う。こんな大層な権力、今使わずして何時使うんだ」
「だよなあ・・・」
「使いどころに困るよな」
「お前が常識ある王族で良かったわ」
周りに人気が無いことを確認してからの気の置けないやり取りに苦笑する。
「・・・セッカがこの場にいたら『お前ら何やってんだよ!』ってツッコまれそうだな」
「全くだ」
「───早く解決して迎えに行きたい・・・」
独りごちたロルフに二人は苦笑いしたのだった。
───そんな三人は閲覧許可が下りると書庫に籠もりきりになり、お茶休憩もなく一心不乱に資料を漁って欲しい情報が得られると、若干疲れてはいたが晴々しい表情で書庫をあとにした。
「───やはり記録に残ってるな」
「さすがに『悪魔の吐息』は王家管理のモノだからな。如何ともしがたいだろうよ」
「おかげで良い証拠になった」
出て来た記録は半年ほど前のモノ。
『ウェイバー侯爵領地内に発生したマンティコアの討伐のため』となっていた。
確かに申請許可は下りるだろう。
失敗したときのために若干多めに渡されるその毒薬は、残ったら破棄する決まりだ。
だが『悪魔の吐息』は使い切ったとされている。
『上手くマンティコアに致命傷を与えられず、使い切った』
故に手元には残っていない───。
そう追記で記載されていた。
だがソレを確認することは出来ない。
余ったかもしれない毒の行方は闇の中。
───ソレが今回セッカ殺害未遂に使われたモノと同じだったら?
今回の毒薬は鑑定でしっかり製作者の情報も見る事が出来た。
鑑定結果には王宮専属の錬金術師の名前が出た。
そしてこの後、本人にも確認を取った。
「・・・間違いなく、半年ほど前に申請されて自分が調合、錬成したモノです」
そう証言が取れた。
コレだけでも虚偽報告で立件出来る。
「───真犯人は絶対に捕まえてやるからな、セッカ。待っていろよ」
不敵に笑うロルフだった。
※書けたので連投します。
明日はたぶん無理そうなので。
265
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません
ミミナガ
BL
この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。
14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。
それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。
ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。
使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。
ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。
本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。
コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる