40 / 62
39 閑話 ウェイバー侯爵家次男リアム視点 2
しおりを挟む
※続きなので忘れないうちに連投、本日二回目です。
こちらを先に見た方は一つ前の「1」を先にお読み下さいませ。
何とも微妙な空気になった侯爵家に、空気を読まない人物が現れた。
「あーあ、ショボい『魅了』にかかってんなあ・・・」
艶やな黒髪に深紅の瞳の吸血鬼・・・その真祖であるアルカードだった。
「───っな、吸血鬼?! どうしてここにっ!! こんな昼日中に何故動ける?!」
王宮騎士団を始めリアム達も身構えたが、当の吸血鬼はなんてことないようにケラケラと笑った。
「あー、うん。ええと俺、吸血鬼の真祖だから。そしてあの子の友人だから。───うん? どっちかというと爺様枠? まあいいか、どっちでも。それよりもコッチ。面倒臭いから『魅了』解除しておくぞ」
そう言って指パッチンすると、邸中に魔法が広がっていき、侯爵家の者達が次々に意識をはっきりとさせていく。
「・・・これは一体・・・?」
「・・・・・・何が・・・・・・?」
リアム達が呆然としているうちにアルカードがルカに迫っていた。
「お前はやり過ぎた。人の身にこの『魅了』は毒だ。故に封じさせて貰う」
そう言うと、指先で何かを描いて額に押し付けた。
するとポワンと光ってから消えて、ルカが急に慌てだした。
「───え? うそ、ヤだ! 何で?! 使えない!!」
キャンキャン吠えているルカを尻目にアルカードはふわりと翔んで、騎士団に紛れていたロルファングの所へやって来ると囁いた。
「じゃあ俺はこれで。やることやったからな、ロルファング。後は頑張れよ」
「───助かった」
ボソッとお礼を言うと、にこっと笑って霧となり消えたアルカード。
───後は憑き物が落ちたような侯爵家の面々と、最後の悪足掻きとばかりに喚くルカが残された。
───結果、ルカが『魅了』で皆を操り、全く落ち度のないアシェルを貶め、事故に見せかけて殺し・・・・・・。
実際は生きていたらしいが、記憶喪失で冒険者として生きていたと。
それに気付いたルカが『悪魔の吐息』で秘密裏に、記憶の無いアシェル義兄上を殺そうとしていたなんて・・・・・・。
───逢いたい・・・・・・。
でも、今更どの面下げて逢えるんだ?
実の家族にぞんざいな扱いを受けて、更には命を狙われて・・・・・・。
───私は、項垂れるしか無かった。
結局、ウェイバー侯爵家は爵位剥奪、領地没収で平民落ちに。
王宮錬金術師への文書偽造だけでも大罪なのだが、『魅了』のせいなのとルカ以外はほとんど殺害計画に関わっていないからとの温情を受けた。
普通なら一族郎党、極刑だった。
義父達は田舎の片隅に小さな邸をあてがわれて質素に住まう事になり。
私・・・いや俺は、幼い頃に入るはずだった孤児院で子供達に勉強を教えたり手伝いをしつつ、冒険者登録をしてランクアップを目指している。
───いつか、アシェル義兄上だという冒険者に逢うために・・・。
当然、それが誰かなんてのは教えて貰えないので、情報収集をしつつ。
義父達にも育てて貰った恩があるので少ない稼ぎから少しでもと仕送りをする。
・・・・・・大丈夫。
俺にはまだ、ネックレスがある。
アシェル義兄上の魔力で仄かに光るそれを胸にしまうと、今日の依頼の魔物の討伐に向かう。
いつか、頑張ってもっとランクアップして、この街を出てアシェル義兄上を探すんだ。
そして謝りたい。
どんなに自分が世間知らずで愚かだったか。
それはきっと自己満足だけど。
あと一つ・・・・・・。
絶対叶わないと思うけれど。
「───好きだ」
コレだけは伝えたい。
「迷惑だろう。コレこそ自己満足だろう。・・・けど」
───けじめだから。
蒼く澄んだ空を見上げる。
遠く、険しい道のりだけど。
これはきっと、俺の贖い・・・・・・。
こちらを先に見た方は一つ前の「1」を先にお読み下さいませ。
何とも微妙な空気になった侯爵家に、空気を読まない人物が現れた。
「あーあ、ショボい『魅了』にかかってんなあ・・・」
艶やな黒髪に深紅の瞳の吸血鬼・・・その真祖であるアルカードだった。
「───っな、吸血鬼?! どうしてここにっ!! こんな昼日中に何故動ける?!」
王宮騎士団を始めリアム達も身構えたが、当の吸血鬼はなんてことないようにケラケラと笑った。
「あー、うん。ええと俺、吸血鬼の真祖だから。そしてあの子の友人だから。───うん? どっちかというと爺様枠? まあいいか、どっちでも。それよりもコッチ。面倒臭いから『魅了』解除しておくぞ」
そう言って指パッチンすると、邸中に魔法が広がっていき、侯爵家の者達が次々に意識をはっきりとさせていく。
「・・・これは一体・・・?」
「・・・・・・何が・・・・・・?」
リアム達が呆然としているうちにアルカードがルカに迫っていた。
「お前はやり過ぎた。人の身にこの『魅了』は毒だ。故に封じさせて貰う」
そう言うと、指先で何かを描いて額に押し付けた。
するとポワンと光ってから消えて、ルカが急に慌てだした。
「───え? うそ、ヤだ! 何で?! 使えない!!」
キャンキャン吠えているルカを尻目にアルカードはふわりと翔んで、騎士団に紛れていたロルファングの所へやって来ると囁いた。
「じゃあ俺はこれで。やることやったからな、ロルファング。後は頑張れよ」
「───助かった」
ボソッとお礼を言うと、にこっと笑って霧となり消えたアルカード。
───後は憑き物が落ちたような侯爵家の面々と、最後の悪足掻きとばかりに喚くルカが残された。
───結果、ルカが『魅了』で皆を操り、全く落ち度のないアシェルを貶め、事故に見せかけて殺し・・・・・・。
実際は生きていたらしいが、記憶喪失で冒険者として生きていたと。
それに気付いたルカが『悪魔の吐息』で秘密裏に、記憶の無いアシェル義兄上を殺そうとしていたなんて・・・・・・。
───逢いたい・・・・・・。
でも、今更どの面下げて逢えるんだ?
実の家族にぞんざいな扱いを受けて、更には命を狙われて・・・・・・。
───私は、項垂れるしか無かった。
結局、ウェイバー侯爵家は爵位剥奪、領地没収で平民落ちに。
王宮錬金術師への文書偽造だけでも大罪なのだが、『魅了』のせいなのとルカ以外はほとんど殺害計画に関わっていないからとの温情を受けた。
普通なら一族郎党、極刑だった。
義父達は田舎の片隅に小さな邸をあてがわれて質素に住まう事になり。
私・・・いや俺は、幼い頃に入るはずだった孤児院で子供達に勉強を教えたり手伝いをしつつ、冒険者登録をしてランクアップを目指している。
───いつか、アシェル義兄上だという冒険者に逢うために・・・。
当然、それが誰かなんてのは教えて貰えないので、情報収集をしつつ。
義父達にも育てて貰った恩があるので少ない稼ぎから少しでもと仕送りをする。
・・・・・・大丈夫。
俺にはまだ、ネックレスがある。
アシェル義兄上の魔力で仄かに光るそれを胸にしまうと、今日の依頼の魔物の討伐に向かう。
いつか、頑張ってもっとランクアップして、この街を出てアシェル義兄上を探すんだ。
そして謝りたい。
どんなに自分が世間知らずで愚かだったか。
それはきっと自己満足だけど。
あと一つ・・・・・・。
絶対叶わないと思うけれど。
「───好きだ」
コレだけは伝えたい。
「迷惑だろう。コレこそ自己満足だろう。・・・けど」
───けじめだから。
蒼く澄んだ空を見上げる。
遠く、険しい道のりだけど。
これはきっと、俺の贖い・・・・・・。
258
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません
ミミナガ
BL
この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。
14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。
それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。
ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。
使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。
ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。
本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。
コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる