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39 閑話 ウェイバー侯爵家次男リアム視点 2

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※続きなので忘れないうちに連投、本日二回目です。
こちらを先に見た方は一つ前の「1」を先にお読み下さいませ。






何とも微妙な空気になった侯爵家に、空気を読まない人物が現れた。

「あーあ、ショボい『魅了チャーム』にかかってんなあ・・・」

艶やな黒髪に深紅の瞳の吸血鬼ヴァンピール・・・その真祖であるアルカードだった。

「───っな、吸血鬼?! どうしてここにっ!! こんな昼日中に何故動ける?!」

王宮騎士団を始めリアム達も身構えたが、当の吸血鬼本人はなんてことないようにケラケラと笑った。

「あー、うん。ええと俺、吸血鬼の真祖だから。そしてあの子アシェルの友人だから。───うん? どっちかというと爺様枠? まあいいか、どっちでも。それよりもコッチ。面倒臭いから『魅了』解除しておくぞ」

そう言って指パッチンすると、邸中に魔法が広がっていき、侯爵家の者達が次々に意識をはっきりとさせていく。

「・・・これは一体・・・?」
「・・・・・・何が・・・・・・?」

リアム達が呆然としているうちにアルカードがルカに迫っていた。

「お前は。人の身にこの『魅了』は毒だ。故に封じさせて貰う」

そう言うと、指先で何かを描いて額に押し付けた。
するとポワンと光ってから消えて、ルカが急に慌てだした。

「───え? うそ、ヤだ! 何で?! 使えない!!」

キャンキャン吠えているルカを尻目にアルカードはふわりと翔んで、騎士団に紛れていたロルファングの所へやって来ると囁いた。

「じゃあ俺はこれで。やることやったからな、ロルファング。後は頑張れよ」
「───助かった」

ボソッとお礼を言うと、にこっと笑って霧となり消えたアルカード。


───後は憑き物が落ちたような侯爵家の面々と、最後の悪足掻きとばかりに喚くルカが残された。



───結果、ルカが『魅了』で皆を操り、全く落ち度のないアシェルを貶め、事故に見せかけて殺し・・・・・・。
実際は生きていたらしいが、記憶喪失で冒険者として生きていたと。

それに気付いたルカが『悪魔の吐息』で秘密裏に、記憶の無いアシェル義兄上を殺そうとしていたなんて・・・・・・。

───逢いたい・・・・・・。

でも、今更どの面下げて逢えるんだ?
実の家族にぞんざいな扱いを受けて、更には命を狙われて・・・・・・。

───私は、項垂れるしか無かった。

結局、ウェイバー侯爵家は爵位剥奪、領地没収で平民落ちに。

王宮錬金術師への文書偽造だけでも大罪なのだが、『魅了』のせいなのとルカ以外はほとんど殺害計画に関わっていないからとの温情を受けた。
普通なら一族郎党、極刑だった。

義父達は田舎の片隅に小さな邸をあてがわれて質素に住まう事になり。
私・・・いや俺は、幼い頃に入るはずだった孤児院で子供達に勉強を教えたり手伝いをしつつ、冒険者登録をしてランクアップを目指している。

───いつか、アシェル義兄上だという冒険者に逢うために・・・。

当然、それが誰かなんてのは教えて貰えないので、情報収集をしつつ。
義父達にも育てて貰った恩があるので少ない稼ぎから少しでもと仕送りをする。

・・・・・・大丈夫。

俺にはまだ、ネックレスがある。

アシェル義兄上の魔力で仄かに光るそれを胸にしまうと、今日の依頼の魔物の討伐に向かう。

いつか、頑張ってもっとランクアップして、この街を出てアシェル義兄上を探すんだ。

そして謝りたい。
どんなに自分が世間知らずで愚かだったか。
それはきっと自己満足だけど。

あと一つ・・・・・・。

絶対叶わないと思うけれど。

「───好きだ」

コレだけは伝えたい。

「迷惑だろう。コレこそ自己満足だろう。・・・けど」


───けじめだから。




蒼く澄んだ空を見上げる。


遠く、険しい道のりだけど。


これはきっと、俺の贖い・・・・・・。






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