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48 一時帰国 2
ロルフの生国エーデルシュタインまでは大森林を大幅に迂回する街道を通って行くらしい。
「えー、突っ切れば早いのに」
面倒くさがりな俺がそう呟けばロルフとダート、スレッドはすぐさま反応した。
「お前なあ、冒険者でもない普通の一般人があんなトコ突っ切れるわけないだろう」
俺だって相当ヤバいのに──とはロルフ。まあ、そもそも突っ切れたところで関所は大通りの一カ所だけなんだし意味ないか。
「だいたい冒険者だって一歩入れば魔獣の餌食になるっての」
ダートも頷きながらそう言う。
「まあ何とかなりそうなロルフも大概だけど、セッカの強さはもう別枠だよね」
「それな! 本当に人族かよって思うわ!」
しまいにはスレッドの呆れた声での人外発言に同意するダート。そんなに?
「・・・・・・そういう自覚がないトコロも含めてもの凄く心配なんだよ、セッカは」
「ごめん?」
「分かってないのに謝らないで」
「ご、ごめんて!」
実際、言ってる意味が分かっていなかったのでそれもそうかと思い直す。
そんな会話をしながらのんびりと街道を歩いていく一行。
「でも、時間がかかってもこうしてのんびりと行くのもいいな」
俺がそう呟くとロルフ達も頷いた。
「だろう? 何かこう、今まで焦りながら忙しなく過ぎていく日々だったからさ。すげーのんびりとできていいよな」
「特に9年前のあの事件のあとはロルフだけでなく俺達や辺境伯家も慌ただしかったからね」
「・・・・・・あー、あの頃は荒れてたな。悪かったなと思うよ」
ロルフに至っては思うところがあったのか、もの凄く申し訳なさそうな顔だった。
それを見て俺も思う。
「俺もさ、記憶喪失で生き残るためにがむしゃらに冒険者ランク上げて何かから逃げる生活に疲弊してたから、そういう余裕のない心っていうのは凄く分かるよ」
だから今、すげー幸せ。
そう言ったらロルフが破顔して、ダート達も和やかに笑った。
『お前ら、何やら楽しそうだの?』
「あ、お帰りコハク。どうだった?」
『うむ! 上々だっ!』
そこにご機嫌な様子で戻ってきたコハク。今は小型の鳥型魔獣に擬態している。たぶん大森林では元のグリフォン姿で暴れてきたのだろう。
少し前にコハクが大森林に自分の食い扶持を狩りに行くと言うので、ついでに俺達の分も頼んでおいたのだ。これは今夜は期待できそうか!?
「何を狩ってきたんだ?」
『色々よ』
ダートが興味津々でコハクに聞くので、ひとまずこの先の休憩所に行ってからと足早に向かった。
夕方には少し早いが休憩所にはすでに一組の冒険者パーティーが野営の準備をし始めていた。よく見ると商人の荷馬車があり、その商人の護衛らしい。
「やあ、俺達も隅を使わせて貰うよ」
「あぁ、構わない。俺達はエーデルシュタインに帰る商人の護衛なんだ。あんたらも向こうに?」
「俺達も向かうところだ。今夜はよろしく」
人当たりのいいスレッドがそう声をかけると向こうも手を上げて応えてくれた。
彼らとは反対側の離れた場所に向かうと、俺は大きな防水加工された布をインベントリから取り出して地面に広げた。
ソコに獲物を出して貰う。
「コハク、ここに出していいよ」
『おう、じゃあまずそこそこデカいのをな』
「何が出るやら?」
「楽しみだっ!」
「・・・・・・ここに乗るよな?」
『たぶん?』
俺が広げた布は一応五メートル四方あるんだが、ちょっと心配になってきたな。直接俺のインベントリに収納した方がいいのでは?
そんな俺の心配を他所にデンっと自分のインベントリから今夜の食材の一部を出したコハク。
・・・・・・うん、一応乗った。でも尻尾がはみ出てるぞ、おい。
「・・・・・・セッカ」
「うん」
「サラマンダーに見えるんだが・・・・・・」
「そうだな」
どうした、ルゥルゥ? サラマンダーと言っても火を吐く大きなトカゲだ。翼竜ではないのでそんなに驚くモノじゃない・・・・・・はず。
「肉は脂身が少なくて淡白で美味いぞ」
キョトンとしてそう言う俺にロルフがギョッとした。
「まさか普通に食うのか!?」
「え? 食べないのか?」
「いやいや、そもそも滅多に流通しないからな! 見付けるのも大変だが討伐も大変だから!」
「・・・・・・マジ?」
「はー、コレだからセッカは・・・・・・」
そんな俺達のやり取りを呆然と見つめる護衛の冒険者パーティーと、目をキランと光らせるやり手っぽい商人の青年。
「───マジかよ」
「俺、まるっとほぼ無傷のサラマンダー、初めて見た・・・・・・」
「・・・・・・有り得ない」
「何なんだ、アイツら」
「───コレは是非お近づきにならねば!」
顔を引き攣らせる冒険者パーティーを他所に、千載一遇のチャンスとばかりにセッカ達に向かう商人の青年だった。
※基本ソロでコハクと行動するセッカは記憶喪失で常識知らずなので何が凄いのか分かってません。普段はそもそもインベントリにさっさと収納して、コハク曰くの便利な自動解体しちゃってるので(一話目参照)誰かに現物を見せることがほぼなかった。
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