癒しが欲しい魔導師さん

エウラ

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7 騎士は過去に思いを馳せる 2

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意識が戻った騎士や魔導師達が呆然とする中、彼・・・セイリュウは更に無詠唱で森の奥に魔法を放つ。

轟音が響き渡り、暫くして森は静けさを取り戻した。
その場にいた皆が彼を凝視していた。
有り得ないモノを・・・バケモノを見るような、畏怖の目で・・・。

その時、隣にいたセイリュウの体がぐらりと傾いだ。
慌てて支えて顔を窺うと、真っ青な顔をしていた。

---魔力枯渇だ!

辺りが喧騒に包まれるのも構わずに、彼を抱えて神殿へと向かう。

魔力枯渇状態が長く続くと死んでしまう。
一刻も早く魔力補給をしなくては・・・。

魔力補給に一番良いのは体液を粘膜から吸収する濃厚接触だが、血縁者や相性の良い魔力だと、皮膚接触でも譲渡出来る。

さすがに未成年者に濃厚接触は駄目だろう・・・。
そうなると確実に父子であるだろう神官長様に頼むしかない。


大急ぎで神殿に駆けていくと、予想通り神官長が待っていた。

「早く中へ! セイリュウ!」
「魔力枯渇です! 意識がありません」
「私が抱き上げて運ぶから、そのまま奥の部屋に入りなさい。抱き上げている間、魔力譲渡します」
「分かりました!」

そうして神官長に彼を預けると奥へ走り、扉を開く。

その後を神官長が走ってきて、奥のベッドにそっと寝かせる。

「・・・私の接触での魔力だけでは全然足りない。・・・・・・セイリュウの為に、不本意だが! オーディン、お前にセイリュウのファーストキスの相手になることを許す!」
「---え?!」
「ディープキスでの濃厚接触で魔力譲渡をしろと言っているんだ! 早くしろ! セイリュウが死んでも良いのか?!」
「---!! やります! やらせて下さい!!」

神官長の言わんとした事を理解し、焦りながらも返事を返すと、どきどきしながらセイリュウの唇にキスを落とす。

---冷たい・・・氷のようだ。

魔力枯渇状態で体温が低下しているのだ。
そうと気付いたら、どきどきが別の感情に変わった。

どきどきなんて言ってる場合か?!

即座に救命措置としての行為に取って代わった。
ただひたすら、必死に唾液と共に魔力を送り込む。

彼は異常なほど魔力の総量が多いようで今まで枯渇したことは無いそうだが、今回は殲滅魔法を立て続けに放ち、なおかつ完全治癒魔法パーフェクトヒールを使った事で魔力枯渇になったんだろう、とのことで・・・。

上限が高いせいで、最低安全圏ラインも高くなっており、その量に達するのにもの凄く時間がかかった。

ただ、一応ぎりぎりのラインを越えたようで、幾分か顔に赤みが差して、呼吸も穏やかになった。
回復までおそらく数日は眠るだろうと神官長に言われ、俺は一旦、野営地に戻った。

そして何か言いたそうな皆の視線を無視しながら後処理をしていた。

ちなみに副師団長が持っていた魔物寄せの香は、その香を調合する職人の弟子が見よう見まねで作り、金に困って売った紛い物だった。

偶然にも手に入れた副師団長が、何かの時の切り札として所持していたのだという。

紛い物とはいえ、ある程度は本物を使った代物だったのと、凄い量を焚いたせいであのような事態に陥ったらしい。

---全く、迷惑な話だ。
副師団長もその弟子とやらも極刑は免れまい。


憤慨しながらも魔力譲渡の事もあり、疲れ果てて泥のように眠っていた俺は知らなかった。

ほぼ昏睡状態の意識の無いセイリュウを、神殿に忍び込んだ魔導師達が数人がかりで、騎士達に手伝って貰いながら王都の魔導師団の転移魔法陣を敷いた部屋に転移させていたことを。

アイツらはそれが彼の為になると信じて疑わなかった為に、悪意を感じさせなかったのだろう・・・。

・・・盲点であった。

神官長に断りも無く攫うように(実際攫われた)王都に連れ去り、更には勝手に書類を提出して宮廷魔導師団に入団させられていた事など、俺は朝になるまで何一つ気づけなかったのだ。


「---セイリュウが攫われた」
「---は?」

朝イチでセイリュウの様子を見に行った俺を憮然として待ち構えていた神官長。
開口一番に言われた言葉がコレだ。

暫し呆然とし、意味を理解すると猛烈な怒りが沸き起こった。

「---アイツら・・・!!」

こう言うときだけは悪知恵が働くな!
早速、囲い込みに入りやがった!

俺はよほどムカついた顔をしていたのだろう。
神官長は何故かホッとしながらこう言った。

「オーディン、お前がそう言う人間で良かった・・・これならセイリュウを任せられる。私はコレから。お前、セイリュウを護ると言った言葉に偽りは無いな?」
「---はい、ございません!」
「では、頑張って出世してくれ。あの子を護れる地位を得てくれ」

そしてゆくゆくは第三騎士団長の座を・・・。

神官長はその美しい顔をスンッとさせて呟いた。
美人の無表情、怖え。

俺は『是』以外に答える言葉が無かった。
元より答えは『是』だが。


こうして俺は最年少、21歳で第三騎士団の副団長になった。
あの事件からはや一年が経とうとしていた。

当時の騎士団長は素晴らし方だったが諸々の責任を取って団長の任を解かれ、辺境地の神殿に身を寄せたとか・・・どうやら神官長様が手を回したようだ。

代わりにぱっとしない、当時副団長だった侯爵家の次男が団長になった。

その間もセイリュウの様子を遠くから窺い情報を得る日々。
騎士団でも魔導師団でも聞こえてくるのは『孤児のくせにちょっと手柄を立てただけで鳴り物入りした餓鬼』『他より少し魔法が得意なだけの役立たず』等と酷い噂ばかり。

擁護する声も当然ある。
当時命を救われた一部の騎士と魔導師達だ。

しかし多勢に無勢。
気を抜くとあっという間に悪意に掻き消されてしまう。

自分達の命の恩人ということを都合良く忘れている選民意識の強い貴族バカ共の多いこと!

裏では自分達の仕事を押し付け、やれ書類だ結界の修復だ魔物の討伐だ等と馬車馬のように働かせている。

それでいて手柄は自分達のモノにする。
見栄っ張りで役に立たない貴族どもめ!!


第三騎士団の副団長になったらなったで、平の魔導師一人に俺がちょくちょく関わっていると知れると更にセイリュウの立場が悪くなるので、無闇矢鱈に構えなくなった。

そうしてあまり現状に改善が見られないまま事件から4年・・・。

18歳になったセイリュウが副師団長に任命された。

あの事件以来、ずっと空いていた役職だったが、師団長がお年を召した方なので、どうやら若い優秀な者をとセイリュウを推したらしい。

---副師団長になれば堂々と護衛騎士を配属させられる。
仕事は今よりも増えるだろうが、これはこれ、それはそれだ。

そう思っていた一月前の自分を殴ってやりたい。


セイリュウあの子を更に追い込んでしまっていたのだから---。





※HOT女性向け小説ランキングにいつの間にかランクインしてたようです!(気付いたときは50位でした)
ありがとうございます!







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