癒しが欲しい魔導師さん

エウラ

文字の大きさ
64 / 101

64 魔導師と隣国の魔剣士 1

しおりを挟む

セイリュウが魔導師団長となって仕事が落ち着いた頃、ロザリンドの母の母国であるリヴァージュ王国から招待状が届いた。

リヴァージュ王国にはセイリュウの住むフォルレイク国のような魔導師団の他に魔剣士団がある。
フォルレイクの騎士団よりも戦闘魔法に特化した騎士が所属していると、以前レグルス父様に教わった。

その魔剣士団の団長がセイリュウとの面会を希望しているという。

「・・・知り合いだったか?」

ロザリンドに怪訝そうに聞かれて首を傾げるセイリュウ。

「いいや? 全っ然知らない人。名前も顔も面識無し。大体、僕、生まれてこのかた、辺境の神殿付近と王都の魔導師団と仕事で結界魔導具の点検に行ったくらいのもんだよ? あっ、ロズんちも行ってるけど、向こうの魔剣士団と関わりないもんね?」
「---行動範囲、狭っ・・・て、あ、そういえばルラック公爵が向こうの騎士団全般の総長を任されていたな。そうか・・・そこからセイリュウの事が伝わった可能性もあるな」

一人納得しているロザリンドの横で、驚いているセイリュウ。

「え? ルラック公爵ってそんなに凄い人だったの? そりゃあ、前にあったときに年齢の割に凄い筋肉だなーとは思ったけども・・・」

がっちりムキムキの歴戦の老騎士って感じだったよね。

「そういえば言ってなかったな。・・・で、どうする? 断ってくれても全然構わないが・・・」
「うーん、ロザリンドが一緒に行ってくれるなら良いよ。僕もリヴァージュに興味あるし。外国に行ったことないからさー」
「なら、旅行がてら行ってみるか。特に日時の指定は無いから、連絡してから調整しよう。おそらくルラック公爵家に滞在になると思うが」
「全然問題ないです! やった! ロズとお出かけ!!」

魔剣士と会うということよりもロザリンドと出かけられることにルンルンなセイリュウを見て嬉しくてニヤけるロザリンドだった。


それから間もなく、セイリュウの知らぬ間に向こうとやり取りをしていたらしいロザリンドから、来週リヴァージュに行くことを教えられた。

「向こうとの調整が済んだ。こちらの仕事の方もすでに調整済みだから、セイリュウは出発前の荷造りくらいで大丈夫だよ」
「早っ、え、良いの?」

いつの間にそんなことやってたの?!
全然気が付かなかったんだけど!

「全部手配済みだから安心して」
「さすがスパダリ。凄いね」

思わず前世言葉が出ちゃった。
ロズは聞き慣れない言葉にキョトンとしたが、気を取り直した。

「すぱ・・・? まあ良いか。あと、さすがに国を跨いだ転移は禁止されてるから、馬車で行くことになる」
「馬車!! 二回目! でも初の長旅、ちょっと楽しみ」

前世での中世とかの馬車だと乗り心地は悪いってイメージあったけど、コッチの馬車は魔法とか魔導具とかあるからそこまで悪く無かった。

「そんなに楽しみにするほどのモノじゃ無いと思うが・・・乗り心地は、セイリュウがどう思っているか知らないが、以前よりも改良しているらしくてそんなに悪くは無いと思うぞ」
「そうなんだ、ソレも楽しみ!」

そんな風にわくわくしながら、あっと言う間に出立の日になった。

「そういえば、馬車だと向こうにどれくらいで着くの?」
「・・・・・・今更だな。セイリュウらしいが・・・公爵家からだと二泊する事になるな。それもちゃんと宿を確保してあるから心配ないぞ」
「えー、野宿とかじゃ無いんだ?」
「・・・騎士の訓練じゃあるまいし、お前を野宿させるわけ無いだろう。一応、魔導師団長で元王弟殿下の御子息で現陛下の従弟なんだから」
「・・・一応って・・・。まあ、言われればそうなんだけど・・・」

ちょっと野宿してみたかったな。

そんな事を話しながら馬車に乗り込む。
・・・ウン、以前のよりめちゃくちゃ豪奢。
シンプルだけど品が良い。
でも如何にもお金持ちですよって感じの、素材が高級感満載・・・。

そんでもって、改良されたという乗り心地は最高に良い。

想像の斜め上を行く素晴らしさ。

「ナニコレ、全く揺れないんだけど?!」
「そこは魔導具で揺れなくしているからな」
「みんな、こんななの?」
「いや、さすがにそれなりに高いモノだから乗合馬車や庶民の荷馬車なんかは普通に揺れるよ」

ロザリンドの応えに、それもそうかと思う。
やっぱりお金持ちは違うね。

ロザリンドに窓の外の景色や見慣れないモノの説明を聞いているうちに、いつの間にかロザリンドに凭れて夢の中のセイリュウだった。




※めっちゃ久しぶりです。ぼちぼち書き進めていきたいと思います。不定期になると思いますが、お付き合い下さいませ。
セイリュウの国の名前って出してなかったと思うのですが、万が一出してて違ってたら教えて下さいませ。

※馬車に乗るのが今回二回目ではとのご指摘で、確認したら以前、一度乗ってましたので修正致しました。
ありがとうございます。
しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

婚約者の前で奪われる!?王太子が僕の番だった夜

BL
僕は辺境伯家の嫡男レオン・グレイスフィールド。 婚約者・隣国カリスト王国の辺境伯家、リリアナの社交界デビューに付き添うため、隣国の王都に足を踏み入れた。 しかし、王家の祝賀の列に並んだその瞬間、僕の運命は思わぬ方向へ。 王族として番に敏感な王太子が、僕を一目で見抜き、容赦なく迫ってくる。 転生者で、元女子大生の僕にはまだ理解できない感覚。 リリアナの隣にいるはずなのに、僕は気づけば王太子殿下に手を握られて…… 婚約者の目の前で、運命の番に奪われる夜。 仕事の関係上、あまり創作活動ができず、1話1話が短くなっています。 2日に1話ぐらいのペースで更新できたらいいなと思っています。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

処理中です...