優しい庭師の見る夢は

エウラ

文字の大きさ
52 / 101

51 ノンノン無双(side騎士団長)

しおりを挟む

竜帝陛下の緊急事態宣言からわずか一時間弱。

皇城から次々と竜体となった騎士達が飛び立って行く。

ココから景緑国までは翔べば直線距離になるので一時間もかからないだろう。
皆、鍛え上げている上に竜体での本気の飛翔だ。

陛下も行きたがったが、宰相であるシュヴァルツ公爵閣下が言い負かしてお留守番になった。
最後までごねていたが、いや貴方、国のトップとしての自覚を持って下さいよ。
『つまんない』って、子供ガキか?!

そんなこんなで着いた先では、一応形だけの『宣戦布告』をして王城へと突撃していった。

国民の大半はビビって腰を抜かしている。
そりゃあそうだ。
閉鎖的なこの国に竜人はいない。
竜体も当然見たことがないだろう。

そんな竜が何体も・・・いや十数体も空から現れて宣戦布告をしたのだ。

今頃は王城も混乱を極めているだろうな。


思った通り、慌てて集まってきた兵士達を竜人に戻ってあっさりと無効化していく。

呆気ない。
弱い。

その言葉に尽きるが、何処から湧いてくるのか結構な人数だ。

「団長、兵に混じって奴隷がおりますが、如何致しますか?」
「・・・ココの奴隷達はおそらく大半が首枷で無理矢理命令されている違法奴隷だろう。出来るだけ無傷で無力化、保護を。後で確認作業を行う」
「はっ」

───本当にクズだな。
正規の奴隷以外は解放してアフターケアが必要だな。

そんなやり取りをしながら、ふと打撃音のする方へ目を向けると、宰相閣下曰くのウサギのぬいぐるみノンノンが敵兵を殴り飛ばしているところだった。

「───は?」

ぬいぐるみだよな?
ふわっふわの真っ白い毛並みで柔らかそうなもこもこに見えるんだが?

・・・・・・そういえば、高速で翔ぶ竜体の宰相閣下の首元にような・・・。

え?
見た目通りのぬいぐるみじゃ無いのか?!
そんでもってあの撲殺具合は間違いなく前騎士団総長ノイン様!!

───まさか、本当に、乗り移って・・・?!

ソレからはノンノンの独壇場だった。

後から後から湧いて出る兵士達を殴る蹴る。
一応手加減はしているようだが、軒並み吹き飛ばされて建物や塀、樹木、果ては地面にまでめり込んでいく。

我等騎士団や宰相閣下お抱えの影達は、ノンノンの進んだ後をもっぱら捕縛していくだけ・・・。

ちなみに、その影達にも一体ずつ動物型のぬいぐるみが付いていて、それぞれが取り逃がした敵兵達や王城の貴族達を倒して捕縛していた。

アレ等もウサギのぬいぐるみと同じような性能なのだろう。
一体、何を如何したらあんなぬいぐるみが出来上がるんだ?!


あちらこちら吹き飛ばした敵兵達で破壊しながら淡々と進むノンノン。

一足先に王の間に着いてすでに制圧済みの宰相閣下と宰相補佐・・・ゼクス殿とアハト殿がウサギのぬいぐるみを見てにっこり笑う。

「やあ、ノイン。ご苦労様」
「ご苦労様です、母上」
「───ぶっ?!」

アハト殿、今、って言った?!
それでもって、ノンノン。
しゅたっと左手を上げてドヤってした!!

思わず噴き出した騎士団長。

「騎士団長、何か問題が?」

ゼクス殿に威圧的な笑顔で問われて速攻で顔を横に振る。
何も問題御座いません!!


そろーっと視線を逸らした先には、影達に捕縛され、真っ青な顔でガタガタと震えている景緑国の国王がいた。

「───お待たせしました。イツキを救出して参りました」

ちょうどタイミング良くシュルツ殿が、攫われた【管理者】殿と思われる小柄な方を片腕に抱いてその場に現れた。

そのご尊顔はマントで隠され窺い知れなかったが、おそらく眠っておられるのだろう。
この混乱極まりない騒ぎの中でもピクリとも動かなかった。

「イツキは無事か?!」

ゼクス殿がシュルツ殿に真っ先に確認する。
アハト殿も心配そうだ。

「・・・最悪は免れましたが、魔力封じの首枷に鎖でベッドに繋がれ、衣服が裂かれておりました」
「!! 本当にクズだな!!」
「イツキは如何した?」

シュルツ殿の言葉にゼクス殿とアハト殿は怒りを露わにする。

「今は魔法で眠らせております。俺が他に預けるのも触らせるのも耐えられないので・・・」
「そうだね。それが良い」
「じゃあ、役者が揃ったところで、このクズ共の後始末だな」

シュルツ殿は愛おしそうにマントの上から番い殿に口付けを落とす。
ゼクス殿とアハト殿はホッとしてから今回の元凶に向かってニタリと黒い笑みを浮かべた。


・・・・・・あの顔の宰相閣下達は絶対に敵に回してはいけない。

騎士団長は本能で恐怖を感じた。






しおりを挟む
感想 232

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ
BL
 この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。 14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。  それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。  ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。  使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。  ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。  本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。  コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

処理中です...