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53 眠りを覚ます口付け
しおりを挟むゼクスからの忠言に、シュルツが樹希の為にもと自身の健康にも気を付けつつ樹希の目覚めを待ちながら、更に3日。
何時ものように一緒に添い寝をして、朝、目覚めたシュルツ。
穏やかに眠っている樹希を愛おしそうに見つめると、「おはよう」と声をかけて既にルーティンと化した樹希の唇への口付けをする。
チュッとリップ音を立てて離れる。
眠りについたここ数日は反応が無かったが、今朝は目蓋がピクリと動いた。
ソレを目聡く見つけたシュルツは、再び口付けをした。
今度は唇を割り入って舌を侵入させ、樹希の口腔をゆっくりと嬲る。
すると反応が返ってきた。
少しずつ樹希の舌がシュルツの舌に応えるように動き出して、時折、吐息が漏れてくるようになり・・・。
「───ン・・・」
微かに喘ぐ声が聞こえて漸くシュルツが唇を離すと、その濡れた唇にそっと親指を沿わせて樹希を覗き込んだ。
「───しゅるつ・・・・・・?」
「・・・・・・イツキ・・・目が覚めたか? おはよう。お寝坊さんだな・・・」
薄らと目蓋をあげた樹希の瞳には嬉しそうな、でもちょっと泣きそうな表情のシュルツが映って、ぼーっとしながらも樹希はへにゃりと困ったように笑った。
「・・・おはょう? おそよう・・・? ごめんねぇ、シュルツ、泣かないで?」
そう言ってシュルツの頬に手を添えようとして、持ち上がらなくて、樹希は首を傾げた。
「・・・・・・あれ? 身体が重い? ん───? もしかして、僕、けっこう寝てた?」
「ふっ、そうだな・・・。かれこれ6日は寝てたな。───心配した」
「───ふーん、むいか・・・6日・・・ぇ?」
思わずぱっちり目が覚めた樹希。
気持ちはガバッとだったが、実際はシュルツの支えで上半身を起こしただけだった。
「助けて貰ってから、ずっと寝てたの?! ごめんね? 通りで身体が重い訳だ」
「果実水くらいしか摂れて無いから、無理せず、少しずつ体力を戻していこうな」
「うん。ありがとう、シュルツ」
少し痩せてしまったが、元気そうな笑顔にホッとしたシュルツだった。
それからは、樹希が目覚めた事をシュヴァルツ公爵家に連絡したり、精霊王達に連絡したり。
あちこちから無事を喜ぶ声が届いて、もの凄く心配をかけたことを知って申し訳無くなったが、樹希の笑顔が見られる方が嬉しいと言われて、思わず泣き笑いになった。
「皆、助けてくれて、ありがとう」
お菓子を食べさせて貰いながらお茶を飲ませて貰い、合間にシュルツに聞いたところによると、シュルツの番いで【管理者】である樹希の誘拐に上は竜帝陛下から下はその国民までが憤り、国をあげての奪還作戦を決行したのだそうだ。
え、番いってそんなに凄いモノなの?!
ええと?
遥か昔から番いに関して暴走しがちな竜人の為に、国同士で色々と取り決めをしているの?
ふむふむ、無理矢理攫って番いにしないとか、ちゃんと番っている二人を引き離さないとか。
今回は僕があの国の王様に攫われたので、宣戦布告をして救出に行ったんだって。
この辺も取り決めでオッケーらしい。
うーん、難しい事は知らなくて良いって?
じゃあいいや。
「元々、あの国は王族から腐っていてな、何もなくても近いうちに粛清されていた」
「・・・そっか。まあ、僕もあんなのが王様だったら住みたくないよ」
僕を攫ったあの子も違法に奴隷にされていたそうで・・・。
「その子は今、どうしてるの?」
死んだような目で、もの凄く気になっていた。
シュルツはちょっと迷って、躊躇いつつ応えた。
「・・・・・・あの子供は、アハト兄上の番いだった」
「───は?」
「アハト兄上の番いだと分かったので、今はシュヴァルツ公爵家で保護し、兄上が甲斐甲斐しく世話を焼いている」
「───はぁ・・・え、なんて偶然? ええ? 必然?!」
そんなに番いって見つかるもんなの?!
「・・・・・・言っておくが、番いに出逢えるのは長命な竜人でもそんなに確率は高くないぞ?」
樹希の心を読んだように告げるシュルツ。
───ですよねー?
※お待たせいたしました。
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