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52 精霊の森の眠れる森人
しおりを挟む景緑国から樹希を救出して精霊の森のロッジに戻ってきてから、はや三日。
安心しきって寝落ちしたあと、シュルツが念の為にと眠りの魔法をかけて深く眠らせたら、何故か断罪劇が終わっても眠ったまま。
すでに三日目という事態にシュルツを始め、精霊王達や何時も樹希に纏わり付いている精霊達も若干焦りを見せた。
「・・・・・・何故、目を覚まさないんだ? 俺の魔法が効き過ぎたのか・・・?」
『いや、そんな感じじゃ無さそうだ。おそらく心が休息を求めておるのだろう。いきなり攫われて、襲われて、心が急激に疲弊しただろうからな』
『落ち着けばたぶん自然と目が覚めるだろう』
「・・・・・・だと良いのですが・・・」
シュルツが責任を感じて落ち込む姿に精霊王達も慰めるように言葉をかける。
眠ったままで食物はさすがに無理なのでシュルツが口移しで水や果実水を少しずつ飲ませてはいるが、幸いなことにエルフは空気中の魔素を吸収する体質のおかげで死にはしない。
それでも、シュルツと出逢ってシュルツが甲斐甲斐しく料理を作っては餌付けしていたおかげでややふっくらしてきていた頬も、以前のように細くなってきてしまった。
「早く目を覚まして。その綺麗な新緑色の瞳に、俺を映して、微笑んでくれ」
切ない顔と声でそう言って、シュルツの手が樹希の頬を優しく撫ぜた。
『景緑国の王は、アレからすぐにトップがすげ替えられたよ。上層部の中でもまともな人族がいてねえ、表立って動きは出来なかったそうだが、違法奴隷を上手いこと理由を付けて解放して逃がしたりしていたそうだ』
ゼクスから通信魔導具でそう連絡が入った。
王の間で景緑国王・・・今は元が付くが、あの男の顔をしっかりと刻み込んで威圧を叩き込んでから、ゼクス達に後を任せて樹希の為に速攻でロッジに戻ったのだ。
この手で罰をくだしてやりたかったが、それよりも樹希を休ませてやりたかった。
アイツらは放って置いても勝手に自滅しただろうが、ゼクスを始めとした竜人達が色々と考えてやってくれるだろうと丸投げしたのだ。
もっとも、ゼクス達もソレを分かっているからシュルツを止めはしなかったし、逆に暴走したら止めるのが大変だったのでちょうど良かった。
今回の騎士団の選出は、どちらかというと、シュルツを止められそうな戦力を一番に選んでいたので。
故に、必然的にノンノンが着いてきたわけで・・・。
さすがのシュルツでも母親には勝てなかったから。
───すっかり母親認識のウサギのぬいぐるみだった。
「・・・その代わりのトップがコレから大変ですね。竜帝国からも補佐と称した監視要員が付くのでしょうが・・・」
『そうだね。一応自治は認めてるけど属国扱いだからね。面倒臭いから統治は人族に任せるけど、人族は寿命が短いからねえ。まともに機能するのに数世代はかかるんじゃないかな? 我等には瞬きの時間だが』
面倒臭い・・・うん。
言葉は悪いが、確かに統治は面倒臭い。
俺もやれと言われたら断るな。
イツキとの時間が減る。
───そういうところが竜人なんだろうな。
『ところで、イツキは目を覚ましたかい?』
不意に話が変わって、ゼクスにそう聞かれた。
ウッと思いながら、応える。
「・・・まだ目を覚ましてません。心に負荷がかかったせいでは、と精霊王様達が・・・」
『───そうか。心配ではあるが、お前が付いているんだ、大丈夫だろう。気の済むまで側に付いていなさい。こちらは心配要らないから。何かあったとか目が覚めたら連絡してくれ』
「ありがとうございます」
『お前もね、イツキが目覚めたときに隈の出来た窶れた顔を見せないようにね。イツキが悲しむよ』
「・・・・・・はい」
そんな通信をして切った。
「そうだな。俺が情けない姿じゃ、イツキが心配してしまうな」
苦笑して、シュルツは樹希のベッドに潜り込んで樹希を抱き寄せた。
「俺も暫く、眠ろう。・・・・・・お休み。次は一緒に目覚めると良いな・・・」
暫し夢の世界へ・・・。
※お気に入り数、2000越えてた・・・?!
ありがとうございます😆
所用で明日、明後日も滞るかも知れません。
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