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84 最後のチェックポイント
しおりを挟む「もう一つ? でもチェックシートのどこにもそんなところないよ?」
僕はチェックシートをペラペラとかざして見た。
・・・・・・アレ?
「・・・・・・さっきまでなかった間取りがある? 何で!?」
「それは全部チェックされると浮き出るように魔法で細工したんだ。サプライズってヤツだな」
「───マジ!? うわー、凄い! 嬉しい! 驚いたけど嬉しいよ、シュルツ!」
僕は飛び上がるほど喜んだ。シュルツもサプライズ成功で喜んでいるようだ。
「それで? ここは一体どこなの?」
「コレは三階にある秘密の扉だ」
「秘密の扉! うわあ、なんて夢のある魔法の言葉なんだろう。隠れ家的な匂いがぷんぷんするよー」
僕はわくわくが止まらず、シュルツにしがみ付いた。
「早く行こう! シュルツ、レッツゴー!」
「はいはい。仰せのままに、我が君」
ノリノリで、でも他力本願でシュルツに運ばれる気満々の僕にシュルツはクスッと笑い、おちゃらけた様子でそう言うと僕を軽々と抱っこしてくれた。
シュルツの歩幅が大きいので、あっという間に目的の場所に辿り着いた・・・・・・らしい。
「・・・・・・シュルツ、本当にココ?」
僕の目の前には、廊下を突き当たった先に掛けられた大きな姿見の鏡があるだけで特に変わったところはない・・・・・・と思う。
「ああ、ココであってる」
僕の疑問に当たり前のように応えるシュルツは、至極真面目な顔だ。
それなら本当にそうなんだろうけど・・・・・・。
どう見ても扉じゃない形状だよね? これじゃまるで・・・・・・。
「忍者屋敷のからくり扉・・・・・・!?」
「・・・・・・ニンジャ? カラクリ? って、何だ?」
「ああ、忍者は影警護の人達みたいな仕事の人を指してて、からくりはその人達が屋敷の中で隠れたりこっそり移動出来る仕掛けかな?」
「・・・・・・ほう、魔法じゃなくて物理的な仕掛けということか」
「何もない壁がくるりと回ってその先に滑り台みたいなのが付いててシューッと滑って外に出たり?」
僕が知ってる限りの説明をすると『それは使えるな』とかブツブツと言うシュルツ。
「・・・・・・シュルツ。そろそろ帰ってきてー!」
一人自分の世界に入ってしまったシュルツを慌てて呼び戻す。
そんなことよりもココですよ!
「僕の思った通りなら、この鏡がからくりでくるりと・・・・・・ほあっ!?」
「あっ、イツキ!?」
忍者屋敷の壁みたいにくるりと回るのを想像して手を伸ばしたら、予想に反してすり抜けた。
僕は壁を押すイメージで体重をかけていたから、その勢いのまま突っ伏しそうになった。
受け身の取れない体勢だったから、そのまま来るであろう衝撃に目を瞑ったのに、いつまで経っても痛くない。
───代わりに逞しくて力強い、安定のシュルツの腕がお腹に回っていた。
「セーフ!」
「・・・・・・イツキ、頼むからヒヤヒヤさせないでくれ」
「・・・・・・ごめんね?」
えへ、と誤魔化すように笑った。
うん、もうシュルツに大人しく抱っこされてよう。
「それにしても、すり抜けるんだ?」
そういえばココは魔法のある世界だった。それならこういうのも当たり前かぁ。
そう思って入った場所を振り向くと、マジックミラーみたいになっていた。
「こっちからはよく見えるのに向こうからはただの鏡なんだね」
「ああ、ココはこの邸の秘密の通路だからな」
「秘密の通路。何かあれば逃げられるように、とか?」
「まあ、ソレもあるが、主に俺が子供の頃によく隠れて遊んだ秘密基地みたいなモノだよ。俺達竜人は逃げたり隠れたりする必要がないほど強いからね」
確かに強いもんね。
でも小さな子竜、妊婦やお年寄りはその限りじゃないから、どこの邸でも必要なモノだって。
納得。
「今はどちらの意味でもほとんど使われていないけど、定期的にメンテナンスはやってるから心配ないよ」
そうシュルツが言って歩き出した先に魔導具らしいランプがポッポッと灯りだして、コワいような神秘的なような雰囲気の中、僕を縦抱っこしたシュルツは静かに歩き出した。
※補足ですが、イツキはノンノンに貰ったリュックを背負ったままです。
実はデフォルメされた竜の口から紐が伸びる仕組みでして、ようは子供の迷子防止用のリュックでした(笑)。
そして万が一前に転けたらその紐がストッパーになってつんのめらず、後ろに転けたらクッションになって頭や背中を守る、という仕様。
イツキは気付いていません。
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