(仮)攫われて異世界

エウラ

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90 ギルドの指名依頼

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食事を終えてラヴァのお店を出て、冒険者ギルドに向かう。

「それにしても、ラヴァってただの酒場の店主じゃなかったんだね」
「いや、ただの酒場の店主だ」
「……そういうことにしておく」

ナハトは興味ないのか、それとも単に黙秘なのか分からない声で言い切った。
実は裏社会のボスだとか言われても、まあ、限りなくグレーなだけで違うとは思うけど。僕だって似たようなものだし。というか、僕の方が裏社会の人間だしね。

ラヴァは僕にとっては、美味しい料理を作ってくれる頼れるお母さんだから、裏の顔がなんであろうと気にしない。

そうしてギルドに行くと、すぐにギルマスに呼ばれた。ナハトは元々用事があったのを抜けちゃったから分かるけど、なぜか僕まで呼ばれた。

「僕が聞いていいの?」
「ああ、初めは俺だけで聞くつもりだったが、さっきの襲撃で話が変わったんだろう」
「ふーん」

てことは、僕絡みの話か。
まあ守秘義務はちゃんと守るから、極秘の話だろうとなんだろうと、これからはナハトにくっ付いていこう。
また同じ轍は踏まないように。

ナハトやいろんな人に迷惑をかけるのは本意じゃないから。セリウム様の言うように、一人にならないように気を付けよう。

もう、一人で生きているわけじゃなくなったんだから。

「ギルマス、戻ったぞ」
「ああ、お帰りなさい。ユラも大変でしたね」
「ユラくん、無事でよかったぁ。まあ、ユラくんなら返り討ちだろうと思ったけどぉ」

エアリアルの執務室に入ると、午前中の件はすでに耳に入っていたようで、二人からそう声をかけられた。

「うん、生け捕り。一網打尽にしてやったよ」
「そうらしいですね。おかげでこちらも、色々と情報が得られて助かりました。とりあえず座ってください」

エアリアルに促されてナハトとソファに座る。ダオラがナハトに一枚の書類を見せた。チラリと目を通したナハトが、すぐに僕に見せてきたので、遠慮なく読む。

「……これ、さっきラヴァが言ってたヤツ?」

闇オークションの調査依頼って書いてある。

「ああ。あの魔石の出品先の闇オークションを探って出品主を洗い出し、ソイツが例の裏切り者ならビンゴ、違うなら遡って探すという依頼だ」

ナハトは何でもないように、サラッと言った。こういう指名依頼は慣れているんだろうな。

「本来ならば、ナハト殿一人に頼んでいたのですが、今回、流れ弾のような感じでユラくんにも被害が及んだでしょう?」
「辺境伯様も言ってたように、今、ユラくんを一人にさせるのは心配なのよねぇ。いくら実力があるといってもね」
「ユラくんに何かあったら──」

うん、ナハトがどうなるか分からないんだね?
確かに、この街一つくらい、簡単に消し去れそう。

エアリアルとダオラの言いたいことがよく分かったので、素直に頷く。

「僕も一緒に調査に行けばいいんだね。分かった。詳しいことはナハトが知ってるの?」
「ええ、最初に話しておいたので。急いではいなかったのですが、今回の襲撃で何か動きがあるかもしれません。なるべく早く動いた方がよさそうです」
「後ろめたく疚しいことがあるから、自分に繋がる証拠や関係者を消すかもしれないからね。貴方達も、十分気を付けるのよ」

ダオラも心配そうにそう付け加えた。僕は心配させないように笑って返事をする。

「うん」
「じゃあ、受理の手続きを。今日は準備をして、明日の朝、日の出前にその街に向けて出立する」
「ええ、お願いします」

こうしてギルドをあとにした僕らは、もう一度、ラヴァの店に行った。

「おん? また来たのか。飯、足りなかったか?」

そう言って笑うラヴァに、ギルドの依頼で少し街を離れることを告げる。
するとラヴァが、ちょっと考えてからこっそり教えてくれた。

「その街にある『アルティエ』という古書店の店主に、俺の名を出して『クラヴィス』と言ってみろ」
「え?」
「面白い話が聞けるかもしれないから」

そう言って、ニッと笑うラヴァに戸惑う。
だってそれって、さっきはぐらかしてた、ラヴァの大切な繋がりだよね?

「……いいの?」

思わずそう口に出していた。ラヴァは一瞬、キョトンとしたあとすぐにニカッと笑った。

「何だ、子供がそんな気ィ使うなよ。俺がいいって言ってるんだ。お前はただ俺に感謝して、笑っていればいい。何しろ俺は『オカン』だからな」
「──っぶ、イヤだって言ったくせに、自分で言ってる」
「おう、俺はユラのオカンでオトンでアニキだからな。とにかく気を付けて行けよ。ナハトもな」
「俺はついでか」

ついでのようにナハトの心配もするラヴァに、僕は言われたとおりにお礼を言った。

「ありがとう、ラヴァ。気を付けて行ってくるね」
「おう」

そうして笑って店を出て、必要そうなものを買い足しながら家に帰り、明日の出発に備えて早めに就寝した。








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