契約結婚ですか?かけもちですけど、いいですか?

みねバイヤーン

文字の大きさ
13 / 24

13. 忘れられないサイラス②

しおりを挟む

 好きという感情を見せられない。家族の前だと特にそう。これ素敵と言ったものは、妹のものになるから。


「やっぱり、そっちがいいですわよね。姉さまが選んだものなら間違いありません」


 妹がそう言うので、妹に似合いそうなものを真っ先に手に取るようにしている。自分が好きなものは、こっそりと手に入れる。


 小さいときは大変だった。髪を飾るリボン、首飾り、ブローチ、指輪、絵本、人形、靴、ドレス、帽子。大切にすればするほど、妹に執着され、最終的には泣き落としで取られる。


「マーゴはお姉さんなのですから、ララにあげなさい」


 両親は、どうして妹のララを優先するのだろうか。ララが金髪でかわいらしいから? 青い目に涙が浮かぶとキレイだから? 髪と目が茶色だと、魅力がないの?


 両親も妹も、悪気があるわけではないのが悪質だ。悪いとちっとも思っていない。むしろ、選択眼の良さを褒めているつもりさえあるみたい。


 いつからだろうか。すっかり諦めてしまった。気力を無駄に使いたくないので、妹対応がどんどんうまくなる。ララが好きそうな色、素材、デザインのドレスをまず試着する。ララの顔が輝く。


「わたくしより、ララの方が似合うわ。こういう華やかでかわいらしいドレスは、わたくしの顔には合わないのね」


 しょんぼりしつつも、ちょっとおどけて見せる。その後、ララにねだる。


「ね、ララが着ているところを見たいわ。着てみせて」

「姉さまも似合ってたと思うけれど。そうね、そこまで姉さまがすすめてくれるなら、試してみるわ」


 新しいドレスを着て、花の妖精のように愛らしいララを褒めちぎる。ララが満足したところで、地味で目立たないドレスを自分用に選ぶ。世の中には、新しいドレスなんて買えない人がたくさんいるのだもの。地味だって、いいの。それで十分、幸せなの。



 これが普通じゃない、こんなのよくないって教えてくれた人がいたのは、幸運だった。


「マーゴお嬢様が不憫すぎます」


 マーゴつきの侍女はいつもそう言って、マーゴの代わりに怒ったり泣いたりしてくれる。


「旦那様も、奥様も、ララ様も。マーゴ様の気持ちをないがしろにして、踏みにじって、それに気づいていないのです。許せません」

 ふたりきりのとき、侍女のハンナがマーゴの内面を言葉にしてくれる。それで、マーゴは随分救われた。

「やっぱり、そうよね。おかしいわよね?」

「おかしいですよ。私、このお屋敷で働き始めてから、はらわたが煮えくり返る毎日ですもん。うちは大家族なんですけどね、うちの両親はあんなことしません。そりゃあ、下の子には多少譲ってやれって感じはありますよ。でもねえ、なにもかも、いつも、ではないですよ。それじゃあ、上の子がやってられませんもん」


 ハンナは平民なので、興奮すると言葉が乱れる。真心が伝わってくるので、マーゴは好きだ。ハンナがいてくれなかったら、マーゴはこれが普通なのだと思って育っただろう。



 家庭教師の先生もとても助けになった。先生は世慣れている人なので、それとなく両親に改善を求めてもくれたらしい。

「マーゴさん、あのね、あなたの置かれている環境。そのう、全てにおいてララさんが優先される家庭状況ですね。どのように思っていますか?」

「こんなの、おかしいなと思っています。でも言っても分かってもらえないので、諦めました」


 先生はため息を吐いて、メガネをはずしハンカチで磨く。


「ご両親にお話ししてみたのよ。これは普通ではありませんよと。姉妹は平等に扱われるべきですよと。ところがねえ、ご両親は公平にしていると信じていらっしゃるようなの。伝わらなさ過ぎて、徒労感に襲われました。また機会を見て話してみますが」


 マーゴは嬉しかった。ちゃんとした大人が、マーゴのために声を上げてくれたのだ。状況は変わらなかったけれど、強い味方ができてマーゴは嬉しかった。先生はその上、友だちまで紹介してくれた。


「マーゴさんと気の合いそうなご令嬢がいるのよ。マーゴさんには、ご家族以外の人間関係が必要だと思うの。どうかしら?」

「嬉しいです。でも、緊張します」

「歴史と法律の合同勉強会ということにしましょう。それなら、ララさんは参加したいと思わないでしょうから」


 ララはあまり勉強が好きではないのだ。先生がうまくララをまいてくれたおかげで、マーゴは友だちを作ることができた。初めて会ったときはぎこちなかったけれど、今では何でも話し合える仲だ。


「ねえねえ、そばかすがちょーっと薄くなったと思いません?」


 ターシャがグイッと顔を寄せてくる。マーゴはしっかり観察し、頷く。


「ちょーっと薄くなったと思いますわ。何かされまして?」

「昨日ね、寝る前に輪切りにしたキュウリをそばかすの上に載せておいたのよ」


 得意そうに鼻高々なターシャを見ると、マーゴは自然と笑顔が浮かぶ。


「ターシャのそばかす、好きですけれど。でも、気になってしまうのよね?」

「そうなの。つい、毎日数えてしまいます」


 さっと手鏡を出し、そばかすを確認するターシャ。寄り目のおもしろい顔になっている。


「秋祭り、行きますか? 行きますよね? 今年は行っていいと思います」


 ターシャが手鏡をずらして、マーゴをじっと見つめる。


「本音を言うと、まだ怖いのです」

「ララさん? でも、計画通りにララさんを婚約させることができましたもの。斬新な案、緻密な計画、大胆な実行。わたくし、感服いたしましたわよ。マーゴ、すごいって」


「先生が色々助けてくださったの。とにかく婚約させてしまえば、動きやすくなるからって」

「そうね、婚約って家同士の契約ですもの。やっぱりやーめた、は通用しません。暴れ馬には、きちんと手綱をつけなくては」


 妹を暴れ馬呼ばわりするターシャに、マーゴは思わず笑いだす。


「笑いごとではなくってよ。だって、思った通りだったじゃないの。マーゴが婚約者に選ぼうとした殿方に、食いつきましたわ、ララさん」


 そうなのだ。ララの、マーゴが選んだもの好き病は、人にも発揮された。条件と見た目から、とある令息がいいと漏らしてみたマーゴ。


「姉さま、わたくし、あの人を好きになってしまいました」

「そんな。ララ、人はドレスではないのよ。婚約者候補を譲ることはできないわ」

「でも、姉さま」


 欲しいものが手に入らなかったことのないララ。今回もそうなるとまったく疑っていない。


「分かりました。では、こういたしましょう。ララがあの方と婚約なさい。わたくしは、ララの婚約が整ってから、婚約者候補を探します」

「姉さま、ありがとう」


 呆気にとられるぐらい簡単に、ララは罠にかかった。猛獣は、つながれたのだ。


 サイラスを、ララのものにされてしまう未来は回避できたはずなのだ。


「サイラスだけは、絶対に奪われたくなかった。ララにさえ取られなければ、もういいの。サイラスは、もうとっくにわたくしのことを忘れていると思うの。わたくしは、あの秋祭りの思い出を胸に、残りの人生を生きていくわ」


「悲観的すぎるわ。もっと前向きにならなくては。わたくしの情報だと、サイラスさんにはまだ婚約者がいないわ。まだ、可能性はあるわ」


「一生のお願い。ターシャ、一緒について来てくださらない? あのときみたいに」

「もちろんよ。一緒に行くわ。ふたりがうまく行ったら、気配を消して家に帰るわね、あのときみたいに」




 待ちに待った秋祭りの日。マーゴとターシャは町娘さながらに変装した。


「今回は、ちゃんと歩きやすい靴で行くわ、ターシャ」

「そうね。学習したところを見せるべきだわ、マーゴ」


 ターシャの護衛にさりげなく守られながら、ふたりは街に向かった。


「思い出しますわね。懐かしいですわ」

「マーゴが靴ずれしてしまったのよね。わたくしが護衛に声をかけに行った一瞬で、サイラスさんと出会ったのよね。ああ、まさに運命。わたくし、すぐに、即座に気配を消しました。ええ。護衛と後ろからついて行って、ふたりが恋に落ちる全瞬間を目撃いたしました。わたくしの人生で、あれほど胸が高鳴ったことはありません」


 ターシャが顔を紅潮させる。


「あら、あそこでも、靴ずれした女性を男性が助けていますわ」


 ターシャの視線の先を見たマーゴの心臓がドキンと跳ねる。あれは、だって、もしかして?


「あら、あれって、ええ? ひょっとして、ひょっとしてではありませんか?」


 ターシャがささやき、マーゴは目を凝らす。


「サイラスだわ」

「サイラスさん、また女の子を助けていらっしゃる。ひょっとして、女の子を助けるのが趣味なのかしら」


 マーゴとサーシャは首に結んでいたスカーフを外し、頭から深くかぶった。こんなときに、絶対に気づかれたくない。存在感を限りなく薄くし、サイラスと少女の動向を注視する。サイラスが少女を助け起こし、ふたりは並んで歩き始める。どうして? 本当に助けるのが趣味なの? 誰でもよかったの? わたくしのことはもう忘れたの? ううん、だって会いに行かなかったのはわたくし。サイラスを責める資格なんてない。


 サイラスと少女を見ているうちに、マーゴの気持ちはどこまでも深く沈んでいく。ララに色んなものを取られたときよりも、両親がそれをよしとしたときよりも、今が一番しんどい。サイラスが、他の誰かと心を通わせていく過程なんて、見たくない。


 目の前の少女は、生き生きとしていて、とても魅力的だ。愛嬌があって、驚きの連続。こんな子、誰だって好きになるに違いない。


 踊りが始まり、音楽が鳴り響く。サイラスが踊りを熱心に見つめている。イヤ、イヤ。ふたりで踊らないで。わたくしの目の前で、彼女の手を取らないで。もう、見ていられない。もう、消えたい。マーゴがターシャの手を取って、「もう帰りましょう」と言おうとしたとき、音楽が止まった。そのとき、驚くほどはっきりと、少女の声がマーゴの耳に届いた。


「いいの。誰か探してる人がいるんだよね? 好きな人だよね、きっと。恋しい人を思い出す目をしてた、ずっと」


 ターシャが痛いほど強く、マーゴを握る手に力をこめる。マーゴは地面が揺れている気がして、近くの木に体を預けた。かつてないほどに、耳に集中する。全てを聞きたい。


 少女が、マーゴが聞きたい言葉を、的確にサイラスから引き出す。


「彼女を忘れたときは、一瞬たりとてなかった」


 ああ、わたくしもよ。わたくしもです、サイラス。


「探さないでと言われた約束を守るのは苦しかった。秋祭りのときだけ、来れたら来る。その言葉だけを励みに、一年生きてきた」


 行きたかった。行きたかったの。でも、去年は行けなかった。ララを振り切ることができなかったから。


「もう、今年で最後にしようと決めてきた。でも、どうしても諦めきれない。最終日までに会えなかったら、新聞にでも尋ね人の広告を出そうとも思っていた。彼女との約束を破ることになるけど」


 サイラス、おお、サイラス。わたくしは、わたくしは、あなたと幸せになってもいいのでしょうか? そんな夢を見てもいいのでしょうか。でも、怖い。あなたがララを見て、心変わりをしたら?


 歓喜と恐怖でむちゃくちゃになったマーゴの方を、少女が見た気がした。


「ね、分かったでしょ? 伝わったでしょ? サイラスさんがどれほどあなたに恋焦がれているか。さあ、もう大丈夫。自信を持って。出てきてくださいな。そこに隠れているおふたりさん」


 マーゴとターシャは飛び上がった。顔を見合わせると、ターシャの顔は涙でぐちゃぐちゃになっている。


 少女の視線をたどって、サイラスがこちらの方を見る。マーゴの息が止まる。サイラスが一歩こちらに足を踏み出す。つられるように、マーゴが木の陰から半身を出す。


「マーゴ?」

「サイラス」


 ずっと呼びたくて。ずっと叫びたくて。その名を口にしたくて。できなくて。


「さあ、行って」


 ターシャが手を放し、マーゴの背中をトンと押してくれる。マーゴはよろけるように歩き出した。足なんて痛くないのに。今日は靴ずれなんてできてないのに。マーゴの足は生まれたての小鹿みたいに、言うことを聞かない。


「マーゴ」

「サイラス」


 サイラスが一気に距離を詰めてくる。見つめ合う。一瞬が永遠みたいに続く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さくら
恋愛
 私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。  そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。  王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。  私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。  ――でも、それは間違いだった。  辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。  やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。  王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。  無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。  裏切りから始まる癒しの恋。  厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。

契約結婚のはずが、無骨な公爵様に甘やかされすぎています 

さくら
恋愛
――契約結婚のはずが、無骨な公爵様に甘やかされすぎています。 侯爵家から追放され、居場所をなくした令嬢エリナに突きつけられたのは「契約結婚」という逃げ場だった。 お相手は国境を守る無骨な英雄、公爵レオンハルト。 形式だけの結婚のはずが、彼は不器用なほど誠実で、どこまでもエリナを大切にしてくれる。 やがて二人は戦場へ赴き、国を揺るがす陰謀と政争に巻き込まれていく。 剣と血の中で、そして言葉の刃が飛び交う王宮で―― 互いに背を預け合い、守り、支え、愛を育んでいく二人。 「俺はお前を愛している」 「私もです、閣下。死が二人を分かつその時まで」 契約から始まった関係は、やがて国を救う真実の愛へ。 ――公爵に甘やかされすぎて、幸せすぎる新婚生活の物語。

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

処理中です...