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89.ヤナさん
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「ねぇ、聞いた? 白百合のパフィリア様が、平民の女の子をキレイに変身させてくれるんだって!」
「えー、うそ~、すっごいね、ホントなの? ……でもぉ、お高いんでしょう……?」
「それがね、タダなんだって! 信じらんないでしょう。でもこの間、サラが受けたらしいのよ。あの子しばらくボーッとしてずーっと、いい匂いがした、はうーん、って言ってたのよ」
「ええ、それって、なんか……大丈夫? なんかおかしな薬でも盛られてない? 騙されてるんじゃないの?」
「パフィリア様が平民騙していったい何の得があるっていうのよ。とにかく、アタシは絶対受けたい。毎週あるんだって。抽選で一回につき五人が受けれるらしいよ。ね、ね、ヤナも気になるでしょう? 今から抽選があるんだって、お願い、一緒に行こうよ~」
どうしてこうなった……。まさかわたしだけ受かるなんて。マリーが怒ってないといいけど……。他の四人は……あ、あの子知ってる、確かパン屋で働いてたっけ。ホントに平民の女の子たちなんだ。これからどうなるのかしら、緊張して吐きそう……。
うわ~、素敵なお部屋~。ひゃー、絨毯がふわふわ、ここでゴロゴロしたい。わー、高そうな椅子……え、ここに座れって? え、待って待って、わたしの汚い服でこんなキレイな椅子に座れないよ。汚しても弁償できない……ええ、ホントに? ええー……座っちゃった。ふっかふかでもう立てない。何この椅子、なんなの、わたしを捕まえてどうする気なの。もう、今日は帰らないんだから。
あ、女性が入ってきたわ。……女神、女神がいる。ここは天国? そうか、これは死ぬ前に見る走馬灯ってやつね。こんな美しい人がこの世にいるわけないわ。
はら、いつのまにか紅茶が。なんていい香りなのかしら。もう一生飲めないんだから、いっぱい飲んで……はうっ、手が震えて器がカチカチ言うわ……はえー、パフィリア様が緊張しないでって、美しい人は声まで素敵なのね……。
まあ、これは何かしら? 誓約書? ゲオルグ様のお話を外で漏らさない? なんだかよく分からないけど、みんな書いてるからまあいっか。自分の名前だけは書けるように練習しててよかったー。
ええ、パフィリア様、本気で言ってらっしゃるのかしら? 最愛の旦那さまについて語りたいから、ちょうどよかった? エリザベート様から、平民の女の子に自信をつけてあげてほしいって頼まれて? 女の子たちに助言する代わりに、旦那さまの素敵なところを伝えたい?
え、え、だって、ゲオルグ様が押しまくって、お願いして、パフィリア様が仕方なく結婚してあげたって……。パフィリア様は他にいくらでも選びたい放題だったのに、ゲオルグ様が泣いてすがるから、ほだされたって……。ええー、あの噂、うそだったのー?
ま、まあ、聞くぐらいでいいなら、いくらでも。あら、あの素敵な小物をお使いになるのね。ははあ、あの砂が落ちるまでの間だけですか。
あら、語り出すと興奮するから、先にわたしたちをキレイにしてくださるの? まあ。ひゃっ、そんなに近づいてこられたら……はわわー、いい匂い~……。まつ毛が長~い。下まつ毛までバッサバッサだわ。唇がプルップルのツヤッツヤだわ。柔らかそうなほっぺ……。触ってみたい……。
は、しまった、なにひとつ聞いていなかった。どうしよう。まあ、侍女の方がもう一度説明してくださるのね。ありがたいわ。ふむふむ。なるほど。わたしは骨太でがっちりしてるから、首とつく場所をチラ見せすればいいのね。まあ、袖をやや短めに? ええ、スカートの裾をもう少し短く? はしたなくないかしら? 母さんに怒られちゃうかも……。なるほど、パフィリア様の助言と言えばいいと。
あら、髪を引っ詰めでぐるぐる巻きにするのはよくないの? でも仕事中は邪魔だから……まあ、ふんわりさせてまとめても、ピンをうまく使えば髪が落ちてこないのね。すごい技術だわ。マリーに後で教えてあげなきゃ。
あら、あららら、なんだか、わたし、ちょっとかわいくなってない? いつも、強そうって言われるのに、今はふんわりした雰囲気だわ。やだー、モテちゃうー。
まあ、いよいよですのね、あの小物をひっくり返すのね。あらー砂が落ちていくわ。ああ、ちゃんと聞かなければ……。えーっと、早すぎてついていけない。パフィリア様、息継ぎしてるのかしら、矢継ぎ早とはこのことね。立板に水ってこういうときに使うのね。
終わった。ちっとも頭に入ってこなかった。誓約書に名前書く必要もなかった。
ええ、そんな、パフィリア様が手を……? ぎゃー、どうしよう、わたしの手汗ばんでるのに。え、え、そんな……。
はわわ~いい匂い~
「えー、うそ~、すっごいね、ホントなの? ……でもぉ、お高いんでしょう……?」
「それがね、タダなんだって! 信じらんないでしょう。でもこの間、サラが受けたらしいのよ。あの子しばらくボーッとしてずーっと、いい匂いがした、はうーん、って言ってたのよ」
「ええ、それって、なんか……大丈夫? なんかおかしな薬でも盛られてない? 騙されてるんじゃないの?」
「パフィリア様が平民騙していったい何の得があるっていうのよ。とにかく、アタシは絶対受けたい。毎週あるんだって。抽選で一回につき五人が受けれるらしいよ。ね、ね、ヤナも気になるでしょう? 今から抽選があるんだって、お願い、一緒に行こうよ~」
どうしてこうなった……。まさかわたしだけ受かるなんて。マリーが怒ってないといいけど……。他の四人は……あ、あの子知ってる、確かパン屋で働いてたっけ。ホントに平民の女の子たちなんだ。これからどうなるのかしら、緊張して吐きそう……。
うわ~、素敵なお部屋~。ひゃー、絨毯がふわふわ、ここでゴロゴロしたい。わー、高そうな椅子……え、ここに座れって? え、待って待って、わたしの汚い服でこんなキレイな椅子に座れないよ。汚しても弁償できない……ええ、ホントに? ええー……座っちゃった。ふっかふかでもう立てない。何この椅子、なんなの、わたしを捕まえてどうする気なの。もう、今日は帰らないんだから。
あ、女性が入ってきたわ。……女神、女神がいる。ここは天国? そうか、これは死ぬ前に見る走馬灯ってやつね。こんな美しい人がこの世にいるわけないわ。
はら、いつのまにか紅茶が。なんていい香りなのかしら。もう一生飲めないんだから、いっぱい飲んで……はうっ、手が震えて器がカチカチ言うわ……はえー、パフィリア様が緊張しないでって、美しい人は声まで素敵なのね……。
まあ、これは何かしら? 誓約書? ゲオルグ様のお話を外で漏らさない? なんだかよく分からないけど、みんな書いてるからまあいっか。自分の名前だけは書けるように練習しててよかったー。
ええ、パフィリア様、本気で言ってらっしゃるのかしら? 最愛の旦那さまについて語りたいから、ちょうどよかった? エリザベート様から、平民の女の子に自信をつけてあげてほしいって頼まれて? 女の子たちに助言する代わりに、旦那さまの素敵なところを伝えたい?
え、え、だって、ゲオルグ様が押しまくって、お願いして、パフィリア様が仕方なく結婚してあげたって……。パフィリア様は他にいくらでも選びたい放題だったのに、ゲオルグ様が泣いてすがるから、ほだされたって……。ええー、あの噂、うそだったのー?
ま、まあ、聞くぐらいでいいなら、いくらでも。あら、あの素敵な小物をお使いになるのね。ははあ、あの砂が落ちるまでの間だけですか。
あら、語り出すと興奮するから、先にわたしたちをキレイにしてくださるの? まあ。ひゃっ、そんなに近づいてこられたら……はわわー、いい匂い~……。まつ毛が長~い。下まつ毛までバッサバッサだわ。唇がプルップルのツヤッツヤだわ。柔らかそうなほっぺ……。触ってみたい……。
は、しまった、なにひとつ聞いていなかった。どうしよう。まあ、侍女の方がもう一度説明してくださるのね。ありがたいわ。ふむふむ。なるほど。わたしは骨太でがっちりしてるから、首とつく場所をチラ見せすればいいのね。まあ、袖をやや短めに? ええ、スカートの裾をもう少し短く? はしたなくないかしら? 母さんに怒られちゃうかも……。なるほど、パフィリア様の助言と言えばいいと。
あら、髪を引っ詰めでぐるぐる巻きにするのはよくないの? でも仕事中は邪魔だから……まあ、ふんわりさせてまとめても、ピンをうまく使えば髪が落ちてこないのね。すごい技術だわ。マリーに後で教えてあげなきゃ。
あら、あららら、なんだか、わたし、ちょっとかわいくなってない? いつも、強そうって言われるのに、今はふんわりした雰囲気だわ。やだー、モテちゃうー。
まあ、いよいよですのね、あの小物をひっくり返すのね。あらー砂が落ちていくわ。ああ、ちゃんと聞かなければ……。えーっと、早すぎてついていけない。パフィリア様、息継ぎしてるのかしら、矢継ぎ早とはこのことね。立板に水ってこういうときに使うのね。
終わった。ちっとも頭に入ってこなかった。誓約書に名前書く必要もなかった。
ええ、そんな、パフィリア様が手を……? ぎゃー、どうしよう、わたしの手汗ばんでるのに。え、え、そんな……。
はわわ~いい匂い~
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