やり直し人生は異世界から

ローザ

文字の大きさ
13 / 29

護衛視点

しおりを挟む

 17人もの盗賊に襲われ依頼者と仲間の治療師だけでも逃がせないかと思いつつ戦っていると、有ろう事に最後の守りとして付けていたハンターのガストをあの女は突き飛ばしやがった!
 ガストは弓の他短剣も使えるからお前を守らせていたのに何て事をしやがる!戦えないんだから荷物の陰でジッとしていれば良いのに自分の存在をアピールするな!盗賊をあおるな!サーシャまで引っ張り出しやがって💢

 チッ!何とか為らねーかな……ダンカルも3人相手にしていて動けないし……

「ガッ!! ちくしょう!誰だ!」

 盗賊の怒鳴り声に一時場が静まりかえった。

 気が付けばボーガンを構えた少女が、サーシャの腕を掴んだ盗賊の肩当てに矢を放ったようだ。生憎と深く刺さることは無く地面に落ちているが盗賊の気を反らすのには十分だ。俺は側にいた盗賊2人を切り捨て、ダンカルも盾を横薙ぎに払い3人を瞬殺する。サーシャは素早くガストにヒールを掛け俺たちに物理無効魔法を掛け直してくれた。
 ホッとする反面今度は少女が危ない。3人の賊に囲まれジリジリと後退している。仲間を救って貰い無視するなんて出来ない「何としても助けないと」と思っていたら、少女の頭上から男が飛び降りてきて、あっという間に切り捨てていた。少女は囮だったのか、男は一気に他の盗賊をも蹴散らし、形勢逆転となった。




 倒した盗賊を生死問わず一カ所に纏めたが人数が合わない。何人かに逃げられたのか?だとしたらこの場を一刻も早く移動しなければならないな。途中までは確認していた頭目らしい男をいつの間にか見失ってしまって、新たな仲間を連れて戻ってきたら厄介だからな。
 速やかに移動しなければ。
 その前に危険を顧みず助太刀してくれた2人にも礼を言おう。苦戦を強いられ絶体絶命のタイミングによくぞ来てくれた。
 2人を遣わせてくれた神に感謝を。町に着いたら1番に教会に行くと誓います。

「助っ人ありがとう。俺は【銀の翼】のリーダーでローリーと言いう」
「リュシウォンだ …通り道で邪魔だっただけだ。其れよりこれで全部か?人数が少ないようなんだが、逃げたのか?」
「確かに少ないな17人居るはずなんだが。頭目も見失ってしまって」
「離れた方が良いな。生きている奴らはどうするやるか、頭が居なければ連れて行くのも危険だろう」

 やっぱり危険だよな。ここまで大きな盗賊団だと何人かは手配書が有ると思うが確認出来ないし。連れて行くにしても途中で暴れたりされてもな。

「あのーぉ、ちょっと良いですか?」

 少女が遠慮しながら近づいてきた。凄い美少女だ。綺麗な瞳だな、なんか見たことがある色なんだけど……

「あの中に盗賊を閉じ込めてあるんですけど…」
「あの中?」

 少女が指さすのは、地面に出来たこんもりとした山。

「「はぁッ!」」

 道の端に大小の小山が4つ適当な距離で盛られている。其れは反対側の端にも2つ有り、作った女の子曰く【アース・ホーム】一瞬のうちに胸までを地面に落としドームでフタをするという物だそうだ。

「土魔法か? 面白い使い方をするな。それと仲間を助けてくれてありがとう俺はローリーだよ」
「へっ!? あっあの…ロッカです。いやっ!全然役に立たなくって、結局お兄さんが頑張ってくれた訳でして。すみません」

 謙虚だなぁ。役にたた無いなんてとんでもない。逃げたと思っていた盗賊の頭は道の真ん中にある一番大きな山の中、他の子分共全ても穴に閉じ込めたんだから。
 凄いと褒めると、モジモジと嬉しそうにして本当に可愛い。このまま素直に育ってくれ、本当に。

 良い子良い子と頭を撫でていたら

「じゃあ、この穴の中のは俺たち2人で縛って置くから、あんたは仲間の方を観てきて良いぞ」
「良いのか? 何から何まですまん頼む」




「ドジャースさん、大丈夫ですか」
「くっ… ああ、済まない。助かったんだね。よかった……ヨかっ…ぅぅぅ」

 よかった。怪我は…… シャツを捲ったら広範囲で紅くなっている。その内アザに成るだろう。腕や足に骨折も無さそうだし、頭にはタンコブだな。暫く冷やして貰おう。娘の方は盛大に喚いていたから元気なのは知っているが一応声かけておくか。ガストが気になるからとっとと済ませよう。

「あー、アンジェラさ」

 形式上でも声を掛けておこうと歩き出したとき、仲間の焦った声が聞こえた。

「ガスト!」

 サーシャの膝に蒼白い顔のガスト。まさか……

「!サーシャ落ち着いて……ああ、深くないが出血が酷い貧血気味だな。無事なポーションは有るか?」
「ごめんなさい……」
「いい、見てた。庇ってやれなくてごめんな。魔力はどのくらい残ってる」
「ヒールを2回しか出来ないと思うの」
「済まないがガストに使ってくれないか。血を止めるだけでも良い。頼む」
「もちろんよ、ダンカルもそれで良い?」
「おう、かまわん。俺もローリーもかすり傷だ」
「幸いドジャースさんも瘤と打ち身だけだから大丈夫だ」
「なにが大丈夫なのよ! 危うく死ぬところだったのよ!雇い主を危険にさらすなんて、護衛失格じゃない!」

 やっぱり吠えるのか💢
 この道は危ない事が分かっていて、引き返しを提案した俺に「進め!」と言ったのはお前だろう。



 2時間ほど前。

「ローリーこの先、半刻程行くと道が曲がった所があるんだが、その手前に怪しいのが2人。多分盗賊の斥候だと思う」

 距離の有る街道は町から離れて1日・2日の場所が盗賊の稼ぎ場と成っている事が多い。
 旅人は頭で分かっていても町が近付くと、故郷であったり家族や友を思い心が浮き足立ってつい気が緩んでしまうのだ。
 そこを突いてくる盗賊の何と意地の悪いことか。

「ドジャースさん、一度野営地に戻る事をお勧めします。盗賊の規模が分からないまま進むのは得策ではない」
「何を言っているの。貴方たちは護衛でしょう?そのために雇っているんじゃない、仕事をしなさい!」

 この女は💢……

「そうですよ。だから言っているんです。斥候を出すと言うことは統制の取れた一団だということです、人数だって分からないんです。野営地に戻り他の旅人と協力した方が安全です」
「戻ったとしてすぐ来るとは限らないでしょ」
「そうですね。しかし食料は残ってますから今日明日くらいは」
「冗談じゃないわ!貴方の言う食料って、堅い粉の塊と塩辛い乾燥した肉でしょう!あんなの食料じゃないわ!」
「アンジェラ落ち着きなさい。安全を考えたら」
「いいえダメよ!このまま進みなさい。戻るのなら契約違反だとギルドに報告するわ」



 ああ~思い出して腹が立ってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

処理中です...